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2021/11/27(土) 14:27

画期的 世界初の生物多様性定量化システム公開 積水ハウス&琉球大学

投稿者:  牧田司

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左から司会者の方か、佐々木氏、久保田氏、河口氏、仲井氏、道家氏、原口氏、オンライン参加の東北大学大学院生命科学研究所教授・藤田香氏

 積水ハウスは11月26日、同社の「5本の樹」計画の成果と琉球大学が研究・開発したビッグデータシステムを共同検証し、世界初の都市の生物多様性の定量評価の仕組みとして構築した「ネイチャー・ポジティブ方法論」を誰もが取り組めるよう公開したと発表した。

 「5本の樹」計画は、〝3本は鳥のために、2本は蝶のために、地域の在来樹種を〟という思いを込め、その地域の気候風土・鳥や蝶などと相性の良い在来樹種を中心とした植栽にこだわった庭づくり・まちづくりの提案で、2001年に開始して以来累計で100万世帯、樹木数にして東京都の街路樹100万本の17倍に該当する1,700万本超に達している。

 「ネイチャー・ポジティブ方法論」は、同社と琉球大学理学部久保田研究室・シンクネイチャーとの共同検証によって実現したもの。同大・久保田康裕教授が立ち上げ、シンクネイチャーが管理運営する「日本の生物多様性地図化プロジェクト:J-BMP」を基に、同社が20年間に植栽した樹木本数・樹種・位置情報の蓄積データを分析し、定量的な実効性評価を可能にした。この種の成果は世界初という。

 共同検証の結果、生物多様性の劣化が著しい三大都市圏の在来種は約10倍に、鳥の種類は約2倍に、蝶の種類は約5倍に増加したことが確認できたという。

 また、1977年の三大都市圏の樹木・鳥・蝶の種数、多様度指数、個体数を100%とし、2070年までの変動をシミュレーションした結果、「5本の樹」の効果は41.9%まで回復し、今後日本で新築される物件の30%について「5本の樹」計画が採用された場合、その回復効果は84.6%まで上昇する予測データを発表した。

 同日行われた「都市の生物多様性フォーラム~『5本の樹』で実現する豊かな暮らし~」で基調講演を行った同社代表取締役社長執行役員兼CEO・仲井嘉浩氏は、「私事だが、家の庭に枝垂れウメを植えたらウグイスではなくメジロが飛んできた。梅に鶯は嘘であることが分かった」などと紹介しながら、「(ネイチャー・ポジティブ方法論を実現できたのは)久保田先生との出会いが転機になった。その検証効果に大変驚かされた。ここまで成果を生むとは思っていなかった。コツコツやってきたことが実を結んだ。生物多様性を定量化、数値化できた世界初のイノベーション。大変意義深い。これを公開し、みなさんと一緒に共有したい」と語った。

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仲井氏

 その後行われたパネルディスカッションには、出席者が次のエンドースメントコメントを寄せた。(順不同)

立教大学特任教授/不二製油グループ本社CEO補佐・河口眞理子氏 生物多様性の定量化・数値化は、生物多様性の保全にむけて社会を動かすためのカギを握っています。「5本の樹の実効性評価」は、個人レベルの庭木植栽を国レベルの生物多様性の定量評価は待ち望まれてきた生物多様性の定量化に成功した画期的な取り組みです

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河口氏

国際自然保護連合日本委員会事務局長・道家哲平氏 「5本の樹」というアプローチは、都市開発から、個人住宅という多くの人々に生物多様性 のための行動の選択肢を提供する手段であるということも、注目すべき点と考えています

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道家氏

MS&ADインターリスク総研フェロー/MS&ADインシュアランスグループホールディングスサステナビリティ推進室TNFD専任SVP・原口真氏 住宅の省エネルギー基準の適合義務化、市民が生活実感を持って消費も含む生活様式を変えていければ、日本の都市はレジリエントでサステナブルな社会への移行に大きく貢献することになります。また、ESG投資家に対して情報開示義務を負う、都市開発、建設の事業セク ターにとっても希望をもたらすツールとなることでしょう

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原口氏

琉球大学理学部教授/シンクネイチャー代表取締役・久保田康裕氏 生き物の分布、生き物の遺伝子、生き物の機能、生き物の食う食われる関係を網羅した生物多様性ビッグデータは、積水ハウスの事例のように、ビジネス活動がダイレクトに自然資本の保全再生に貢献することを科学的に証明します。相反するように見える経済収益活動と生物多様性の保全再生活動は、お互い科学的に調和され、ビジネスを通じたネイチャー・ポジティブ、すなわち社会変革を推進します

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久保田氏

◇       ◆     ◇

 同社の「5本の樹」計画をずっと応援してきた記者もとても嬉しい。何が嬉しいかといえば、「ネイチャー・ポジティブ方法論」を独り占めしないで一般に公開したことだ。「5本の樹」計画は商標登録されているはずだが、その思想・取り組みは全てのハウスメーカー・デベロッパーに通用することだから、なんとか一緒に実践できないものかとずっと考えてきた。

 それが今回実現した。佐々木氏は、「これは知的財産でもあるので『それ公開していいのか』という論議が社内であり、社長にその話をしたら、『何せこいことを言っているんだ。これはうちだけがやってもイノベーティブに日本を変えることはできないではないか。であれば、これを広く公開してうちがやってきたことを一緒に取り組んでいくことが大事なんだ』としかられました」と舞台裏を明かした。仲井社長の英断にも拍手喝采だ。

 そして忘れてはならないのは、〝安かろう悪かろう〟のぺんぺん草も生えない住宅が蔓延している中で、高いものは1本数万円(もっと高いのもあるか)する在来種の樹木をお客さんに勧めてきた同社営業マンの苦労だ。

 その苦労を報いるため、20年間、1本1本、植えた樹木を緯度、経度に落とし込んでデータ化する作業を同社はずっと続けてきた。これまた凄い。

 今回の「ネイチャー・ポジティブ方法論」を編み出すのに久保田教授は10年かかったそうだが、それを実効あるものにしたのは同社の地道な取り組みだ。

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◇       ◆     ◇

 どことは言わないが、心当たりのあるシンポジウム・フォーラム関係者は多いはずなので余談だが書く。スピーチ・プレゼンの話すスビートは1分間に300字が適切とされている。早口でまくし立てるとその瞬間は理解できても、心に残らない。右から左へ左から右へと頭の中を素通りしていく。

 先日、あまりにもひどい講演を経験した。ある講演者は20分間に70~80枚の文章・画像をプロジェクターに映しながら話した。1分間に3.5~4.0枚だ。記者は必至でメモを取り、読もうと思ったがあきらめた。そんな芸当誰ができるというのだ。前に座っていたメディア関係者2人は講演中ずっと眠っていた。

 これは例外ではない。1分間に300字のスピードで話す講演者・プレゼンテーターは10人に一人か二人くらいではないか。

 今回の仲井社長、久保田教授&積水ハウスESG経営推進本部環境推進部部長・佐々木正顕氏の講演は、計ったわけではないが、メモを取れるほどのスピードだった(NHKの講座なみ)。一語一語が理解できた。重要と思われるフレーズを何度も繰り返したので理解度はより高まった。「5本の樹」だけでなく、各社広報担当は今回の同社を見習ってほしい。(パネルディスカッションの各氏の話は省略した。1時間の話し言葉を書き言葉に変換するのは大変)

 もう一つ。佐々木部長は、同社には40人もの樹木医がいることを紹介した。記者は、同社の社外取締役を務めていた涌井史郎氏が語った「木の名前、虫の名前、鳥の名前を覚えると、一歩歩くごとに人生3倍楽しくなる」という言葉を思い出した。樹木医とはそんな人ではないか。機会があったら同社の樹木医にインタビューしてみたい。資格を取得すると医者や弁護士のような高収入を得られるのか、高額な手当はつくのか。記者は樹木や草花の図鑑を眺めるのだが、すぐ名前を忘れる。どうしたら覚えられるかも教わりたい。

 フォーラムで紹介された、239ページ、発行部数40万冊という同社の隠れたベストセラ―「庭木セレクトブック」はいい。木の名前と鳥の名前が一緒に覚えられるかもしれない。こんな本は他にないはずだ。注文を付けるなら実寸の葉っぱや実を載せてほしい。

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佐々木氏

 

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