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2013/06/13(木) 00:00

長期優良住宅が「CASBEE」で評価されないのはなぜ

投稿者:  牧田 司記者

長期優良マンションが「CASBEE」では評価されないのはなぜ

 

 昨日の記事で三井不動産レジデンシャルの「パークホームズ LaLa 新三郷」は免震構造・長期優良住宅認定マンションでありながら、環境性能を評価する「CASBEE 埼玉」では満点の星5つ(素晴らしい)に1つ欠ける4つ(大変良い)しか獲得できておらず、同じように埼玉県で初の免震・長期優良住宅認定マンションで、168戸が即日完売した野村不動産「プラウド大宮」も「CASBEE さいたま」では星3つ(良い)の評価しかされていないと書いた。100点満点で言えば「新三郷」は80点、「大宮」は60点ということになる。

 いうまでもなく「長期優良住宅」は、平成21年4月に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」によって構造躯体の劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、可変性、バリアフリー性、省エネルギー性の性能を有し、かつ、良好な景観の形成に配慮した居住環境や一定の住戸面積を有する住宅が認定されるものだ。認定を受けた住宅は、住宅ローンや不動産取得税、固定資産税などの税制面で優遇措置を受けられるようになっている。

 一方の、「CASBEE」(建築環境総合性能評価システム)は、国交省の支援のもと財団法人建築環境・省エネルギー機構が中心となって10年ぐらい前から推進しているもので、建築物の環境品質と建築物の環境負荷の両面から評価し、評価結果を「Sランク(素晴らしい)」から「Aランク(大変良い)」「B+ランク(良い)」「B-ランク(やや劣る)」「Cランク(劣る)」という5段階のランキングによって示されるものだ。自治体によっては条例で環境性能評価の届出を義務づけ、数値を広告などに表示するよう義務づけているところもある。

 首都圏では東京都は「CASBEE」ではないが、同様の「マンション環境性能評価」制度を平成17年に設け、一定規模以上のマンションの広告に環境性能を示すラベルの表示を義務付けている。当初は「建物の断熱性」「設備の省エネ性」「建物の長寿命化」「みどり」という4つの評価項目につきそれぞれ星3つで評価(満点は星12個)し、平成22年度からは「太陽光発電・太陽熱」の項目を追加し、5項目全てで満点の場合は星15個となっている。このほか埼玉、神奈川県の各県と主要な都市が実施している。千葉市と柏市を除く千葉県には評価制度がない。千葉県のマンションの価格が相対的に低いのはこのためかどうかは書かない。

 では、どれぐらいのマンションがSランク(都の場合は満点の星3つ)を獲得しているか。

 都の満点は結構ある。22年度以降の新制度では三井不動産レジデンシャル「パークコート六本木ヒルトップ」(270戸)、野村不動産「プラウド東雲キャナルコート」(600戸)、三井不動産レジデンシャル「パークタワー東雲」(585戸)、三井不動産レジデンシャル「パークコート千代田富士見」(505戸)、大手デベロッパー6社共同「SKYZ TOWER & GARDEN (東京ワンダフルプロジェクト)」(1,110戸)の5物件が星3つ(15個)だし、旧制度の星3つ(満点で12個)では10物件ぐらいある。

 他の県は極端に少ない。埼玉県下ではSランクのマンションはこれまで1件もないし、神奈川県は長谷工コーポレーション他「ブリージアテラス淵野辺」(220戸)の1件のみだ。横浜市は三菱地所レジデンス他「M.M.TOWERS FORESIS」(1,226戸)、野村不動産「プラウド綱島」(99戸)、東京建物他「Brillia City 横浜磯子」(1,230戸)の3件、川崎市は東京建物「Brillia e-SQUARE」(129戸)と川崎市住宅供給公社「川崎ゲートタワー」(110戸)しかない。

 

◇     ◆     ◇

 

 記者は長期優良住宅はもちろんだが、「CASBEE」についてもマンションを見学した際や住宅情報誌を見るとき必ずチェックする。もちろんデベロッパーがSランク(都の場合は星3つ=15個)を取得して欲しいからだし、ユーザーもマンションの選択に役立つと思うからだ。

 ところが、冒頭のようなことが起きた。どうしてこのような結果が出るのか。それは長期優良住宅と「CASBEE」の評価のモノサシが異なるからだ。長期優良住宅は基本性能や「居住」環境を評価するし、「CASBEE」は居住環境よりも「自然」環境性能を評価している。この差だ。

 例えば、長期優良は居住面積や建物の維持・管理、可変性も重要な評価ポイントになるが、「CASBEE」は居住面積、居住性などはあまり重視していない。強いてあげれば「サービス・性能」という評価項目だが、これはマンションの機能のすべてを包含する項目ともいえるが、逆に極めてあいまいな評価項目だ。お叱りを受けるかもしれないが、「CASBEE」は環境には優しいが、人に優しいという哲学が欠落しているように思う。

 もう一つは、デベロッパーの姿勢、インセンティブの有無だ。長期優良は住宅ローンなどの優遇措置があり、ユーザーにアピールしやすいので各社は取得に積極的になっている。一方の「CASBEE」は、住宅ローン金利を引き下げたり容積率の割増を行っているところもあるが、全体としては優遇策は少ない。

 これまで長期優良認定を取得した首都圏マンションは記者が把握している範囲内で20件近くあるが、このうち「CASBEE」でSランクを取得しているのは「東雲」「六本木」「千代田富士見」「川崎」の4物件しかない。

 何度も言うが、免震で長期優良マンションが「CASBEE」の評価では満点の100点が取れず、せいぜい60~80点しか取れないのであれば、だれも満点を目指さないのではないか。ハードルを低くしろとは言わない。関係者がよく話し合って双方の整合性を図るべきだ。このままではユーザーから見放されることになる。

 ある大手デベロッパーの関係者は「われわれは独自の基準を持っておりプライドもある。長期優良など挑戦しがいのあるものはもちろん取得を目指すが、様々な認定制度で評価されることが最大目標ではない」と語った。

 

三井不レジ・大栄不 新三郷で免震&長期優良(6/12)

 

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