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2022/06/03(金) 16:31

三井不「UN/BUILT(アンビルト)」展/示唆に富むWEB「未来特区プロジェクト」

投稿者:  牧田司

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UN/BUILT(アンビルト)GALLERY」

 三井不動産が6月19日まで開催中のアーティスト13名の作品をリアル・デジタル・デジタルオンリアル(AR)の3つのギャラリーで展示するイベント「UN/BUILT(アンビルト)GALLERY」を見学した。

 「リアル」展示は、中央区日本橋室町1-5-3の福島ビル1階((11時~18時、火曜日定休)で開催されており、未だ建てられていない実現以前の想像建築を広く指す“UN/BUILT”のコンセプトに基づき製作されたデジタルアートが展示されている。作品はリアル/オンライン双方からアクセス可能。

 「デジタル」展示は、“UN/BUILT”ギャラリー空間を撮影したデータを基に、デジタルによって表現された空想の世界、“UN/BUILT”バーチャルギャラリーをオンライン上に開設する。アクセス方法はhttps://3d.discoverfeed.net/scene.php?sid=4fdYd

 「デジタルオンリアル(AR)」展示は、日本橋の仲通りおよび福徳の森を舞台に、川田十夢氏が率いる開発ユニット、AR三兄弟が制作するARアート作品を展示するもので、「AR三兄弟の社会実験」アプリ(無料)をDLし、アプリ上でリアル空間上に浮かび上がるアートを鑑賞できる。

 同社は、創立80周年事業の一環として既存の枠組みや既成概念を越えて、新しい未来を実装する「生存特区」「コミュニケーション特区」「クリエイター特区」の3つの「未来特区プロジェクト」を推進しており、今回のイベントは「クリエイター特区」の取り組みを発信するもの。

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「UN/BUILT(アンビルト)GALLERY」内観

◇        ◆     ◇

 記者は「アプリ」やらQRコードなるものをダウンロードしたことなどなく、リアル展示しか見学することができなかったが、自ら油絵を趣味にしてきたので多少の審美眼はあると思っている。国内外の画家の作品展などもよく見学してきた。

 今回展示されているのはイラスト作品ばかりなのでよく分からないのだが、画家のコメントがそれぞれ面白い。全部紹介できないが、「ロバート・A・ハインラインのSF小説『宇宙の戦士』に提供したパワードスーツのイラストは、日本のアニメ史上に大きな影響を与えた」SFイラストレーター画家・加藤直之氏の作品「槍試合ウィトルウィウス的強化服」には次のようなコメントが紹介されている。

 「ギャラリーに展示するための作品である。前もって決められたテーマは存在しない。決められた大きさもなく、決められた縦横比もない。いつも描いている書籍のカバーイラストと異なり、すべてが自由なのだ。コンピュータのハードディスクに、仕事の合間に好きに自由に描いている絵があった。それを今回の絵の中心に据え、上下左右、手前や地平線に向かって世界を広げていった」

 記者はSF小説をほとんど読まない(筒井康隆氏は大好きだが)のだが、加藤氏ファンにはたまらないはずだ。写真撮影はOKだったが、さすがに著作権を考えると撮るのはためらわれた。興味のある方はぜひ見学を。

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福徳神社

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福徳神社の緑陰

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 同社の「未来特区プロジェクト」や「Collaboration Magazine Bridgine(ブリジン)」ホームページには興味深い情報や記事がたくさん掲載されている。これもお勧めだ。

 記者がファンの、4月1日付で東京ドーム会長CEOに就任した同社取締役・北原義一氏は、日本橋の街づくりについて、2年前の社内インタビューで「400年を超える歴史を持つ日本橋の矜持として、互助の精神、大人の色気というものは失ってほしくないですね」「江戸の下町で培われてきた粋の文化、互助の精神に未来へのヒントを見出せるような気がします」と語っている。

 もう二つ、これからの街づくりや生き方に参考になる示唆に富んだ記事を紹介する。

 一つは、東京工業大学・柳瀬博一教授が同社の光村圭一郎氏との対談で語った次の言葉だ。

 「都市開発においては『1階の設計』がいちばん大切です。1階が街になっているかどうか。街は1階が全てです。あとはおまけに過ぎません。1階部分、ストリートに街がなかったら、どんなに立派なビルが並んでいようとも、そこは街としてはゴーストタウンです。ところが、多くのデベロッパーも、行政担当者も、この当たり前が常識になっていなかったりします。立派なビルが立ち並んでいて、平日はたくさんの人が出入りしているけれど、休日になるとだれもいない。そんな『平日は勤め人の街、休日はゴーストタウン』という街が、東京にもたくさんありますよね。あれ、1階部分という公共空間の設計としては、全部失格、大失敗だと思います。現在の『休日ゴーストタウン』の高層ビル群は、これからの時代、1階を街にしていかない限り、不動産価値の下がってしまうのではないでしょうか」

 記者も同感だ。法規制などやむを得ない部分はあるが、公開空地や緑地を確保したビルは少なくはないが、そこにとどまり、飲食したり語り合ったりするような空間にはなっていない。日本橋のビルも日本橋川に背を向けて建っている。耳が痛いデベロッパーは多いはずだ。

 もう一つは、デザイン・イノベーション・ファームのTakramの緒方壽人氏がやはり光村氏の対談で次のように語った言葉だ。ロシアのウクライナ侵攻も、こうした視点があれば起きなかったはずだ。

 「人間は『わかり合えるWe』と『わかり合えないWe』の両方が必要なんですね」「どのように『足りない』と『行き過ぎ』を測る物差しを持てるかが大事だと思います。『イノベーションをいかに起こせるか』という物差しだけだと、起こすことだけがゴールになってしまう。あるいは『利益が出る』をゴールに設定しても、現代は最低限のルールだけを守れば何をしてもいい、といった環境ではなくなってきているでしょう」

これでいいのか 川に背を向ける日本橋の街(2008/5/19)

 


 

 

 

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