多摩市は7月23日、市制50周年イベントの一環として多摩ニュータウンのコンセプトムービー「らしさがうまれる。多摩ニュータウン」を公開した。
入居開始から50年が経過し、長く住み続けたいと考える人が多い街でありながら、高齢者が多い街というイメージが先行する課題に対応するもので、多様な価値観をもった若い世代が活動する街でもある多摩ニュータウンをアピールするのが狙い。
今後はUR都市機構をはじめ、多摩ニュータウンと関わりのある民間企業の協力を得て発信していくという。動画はYouTube(https://youtu.be/IcfdtyKzSBM)で閲覧できる。
市は、2020年10月に行ったアンケート調査(サンプル数1,300ss)によると、多摩ニュータウンへの関心がある、訪れたいと考える人は20代、30代がほかの世代に比べ高く、「豊富な自然や美しい公園がある」というイメージが全世代に共通して高い結果が出ているとしている。
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遅きに失した感はあるが、結構な取り組みだと多摩市民の記者も思う。バブル崩壊後に〝オールドニュータウン〟などと揶揄されたのに対して、事実に基づく反論を怠ったのが今日の事態を招いたと思う。
ここでいくつか問題提起。アンケートの結果では、若い世代ほど多摩ニュータウンへの関心は高いというが、そもそも多摩ニュータウンを知らない若年層がどれくらいいるのか、これを調査しないといけない。かなりいるはずだ。
似たような街、例えば港北ニュータウン、千葉ニュータウン、つくば学園都市、流山おおたかの森、柏の葉キャンパスなどと比べてどうか。港北や千葉、つくばとは互角かもしれないが、流山や柏の葉には圧倒的に負けるのではないか。
流山市は、井崎義治氏が平成元年に市長に就任し、それまでの長老政治を劇的に変えた。平成22年度から発信した「母になるなら、流山市。」のキャッチコピーが話題になったように、子育て世代向けの政策を充実させた。今では人口増加率、地価上昇率などは全国トップクラスだ。
柏の葉も、三井不動産は東大や千葉大、市との官学連携に積極的に取り組み、が次々と新機軸を打ち出している。
多摩市はどうか。阿部裕行市政は、5年前から「健幸都市(スマートウェルネスシティ)」を前面に打ち出した。「健康」と「幸福」を掛け合わせたものだが、〝母になるなら、父になるなら〟のような具体性に欠ける。(この前の第4回目のワクチン接種で帰りのタクシーチケット1,000円を希望者に配るのには驚いたが)
都市間競争、街のポテンシャル低下について。この前、東急の「ドレッセタワー南町田グランベリーパーク」の記事でも書いたが、仮に多摩センター駅前でマンションが分譲されたら坪単価は300万円になるかどうか。聖蹟桜ヶ丘駅近でも坪270万円だから難しい。他の沿線と比べ京王線の地盤沈下は否めない。典型的な例が令和5年1月をもって営業停止する京王プラザホテル多摩だ。誕生してから約30年だ。企業寿命30年説に符合する。これは「健幸都市」にとって大きな打撃だ。今のところ存続を願う動きはないようだ。立派なホテルが撤退するような街に果たして若い人は移住したくなるか。
もう一つ。これは小生の個人的な考えだが、多摩センター駅前のパルテノン大通りには「あなたから受動喫煙から守ります」という大きな横断幕が掲げられている。厚労省の調査では、成人喫煙率は16.7%で、男女別では男性の27.1%、女性の7.6%が喫煙者だ。小生を含めこれらの喫煙者の神経を逆なでする、犯罪者扱いする市政はいかがなものか。タバコを吸う人も吸わない人も健康・幸福追求権は平等ではないか。
官民学連携もまったくといっていいほど行っていない。多摩ニュータウン周辺には5つも6つもの大学が集積しているのにその知的資源を活用していない。各企業の市民企業としての活動も寡聞にして知らない。
これはあまり書きたくないのだが、関連することだから書く。長谷工コーポレーションは今年6月末までに、2018年10月に開設した多摩センター駅近くの「長谷工マンションミュージアム」の来館者が1万人に達したと発表した。
開館当時、記者もこの施設を取材しているが、4年間で1万人ということは1か月間で約208人、1日当たり約7人だ。これはいかにも少ない。先に官学民連携について触れたが、駅周辺には大学のほか、東京海上日動システムズ、ベネッセ、サンリオピューロランド、JUKI、ミツミ電機などの企業・施設が集積する。
ところが、ミツミは2018年以降、CSR活動の報告を行っていない。東京海上日動も目立った活動は周辺のごみ拾い、ベネッセも夏祭りの協賛くらいで、地元でなにか活動した記憶など全くない。
大学もしかり。桜美林大学の多摩アカデミーヒルズ(多摩キャンパス)は、以前は宿泊、温泉、その他各種の市民講座・サークルなどなど市民に開放していたが、現在は市民との交流を完全に断った。
また、多摩センターには素晴らしい多摩市立グリーンライブセンターもあるのだが、ここでの喫煙・飲酒は禁止だ。宴会などする人はいないはずで、ゆっくり緑を鑑賞しながらタバコを吸いワインを飲むことのどこがいけないのか。緑・植物に関する書物はただで読めるのに、閲覧する人はどれだけいるか。
この施設運営には恵泉女学園も関わっているのだが、同学園は駅周辺の多摩市アダプト制度で大変な活躍をさている。いつも感謝している。端っこでいいから、グリーンライブセンターでたばこを吸わせて、ワインも飲ませて。砂糖漬けのジュースなどとどこが違うのか。
これまで何度も多摩市の緑環境や多摩ニュータウンの魅力について書いてきた(ざっと数えたら2013年以降で66件がヒットした)。その豊富な緑や人的資源を市は生かしていない。ここに根本的な問題がある。