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2022/08/17(水) 18:36

1人当たり街路樹 最多は江戸川区の8.9本 1本当たり維持管理費は1.5万円

投稿者:  牧田司

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街路樹本数.png 維持管理 グラフ.png 

市部の街路樹グラフ.png 各市の維持管理費グラフ.png

 一般社団法人・東京都造園緑化業協会の「平成30年度東京都緑化白書」を基に東京都区市の街路樹の本数・維持管理費などを調べた。

 「白書」は、「緑行政に携わる多くの関係者および都民の皆さんとともに東京都の緑行政の取り組みについて情報を共有化し、ともに東京の緑環境づくりを考えていく一助」(白書)とするため、東京都都市緑化基金の助成を得て各自治体に対するアンケート結果をまとめて発行されているものだ。

 これによると、平成29年度末現在の都道、区道、市町道(島しょ部は除く)の街路樹総本数は1,115,885本で、内訳は都道等が59%、特別区が30%、市町が11%となっている。街路樹の維持管理費用は、総額で約111億円で、内訳は都道等が約5割、区道が約3割、市町道が約2割となっている。

 街路樹本数を区市ごとに見ると、もっとも多いのは江戸川区の約61,000本で、八王子市の約38,000本、世田谷区の約25,000本、足立区の約23,000本、江東区の約18,000本、府中市と町田市の約16,000本、大田区の約11,000本、葛飾区の約11,000本がベスト10。

 人口1人当たりの街路樹本数は、トップが約8.9本の江戸川区で、以下、千代田区の約8.1本、八王子市と稲城市の約6.7本、府中市約6.2本、多摩市の約5.3本などが続く。1人あたり最も少ないのは約0.7本の西東京市で、品川区、杉並区、豊島区、練馬区、小金井市、清瀬市が1本以下となっている。

 維持管理費がもっとも多いのは江戸川区の約6.7億円で、約3.1億円の江東区、約3.0億円の葛飾区、約2.8億円の大田区、約2.6億円の足立区、約2.5億円の町田市などが続く。

 街路樹1本当たりの維持管理費がもっとも多いのは日野市の約4.7万円で、以下、約3.7万円の北区、約3.5万円の武蔵野市、約3.4万円の小金井市、約3.4万円の台東区が続く。もっとも少ないのは1,498円の清瀬市で、3,442円の品川区、4,144円の武蔵村山市、4,085円の港区、5,619円の八王子市、5,185円の東村山市など10区市で1万円を下回っている。

 人口1人当たり最多は千代田区の1,884円で、中央区の1,199円、多摩市の1,157円の3区市が1,000円以上。もっとも少ないのは清瀬市の12円で、品川区の32円、東村山市の61円、港区の86円、武蔵村山市の87円の5区市が100円以下。

◇        ◆     ◇

 このデータからよく分かるのは、江戸川区の街路樹の多いのが突出しており、八王子市、世田谷区、足立区、江東区、府中市、町田市、大田区、葛飾区などが多いのは区。市域面積が大きいのもその要因の一つと思われる。1人当たり本数がもっとも多い江戸川区の約8.9本のほかでは、千代田区が8.1本と2位になっているのが注目される。

 江戸川区の街路樹が多いのは、同区が長年にわたって緑化に力を入れてきた成果だ。同区は昭和46年に「環境をよくする10年計画」を策定し、平成16年には新たに「江戸川区みどりの基本計画」を策定。樹木数と公園面積の目標「区民一人あたり10本10㎡」を掲げ、取り組んでいる。

 なぜ、江戸川区は緑化事業に力を入れているのか。その理由について、同区に37年間勤務していた千葉大園芸学部卒の海老澤清也氏が共著「街路樹は問いかける」(岩波書店)で、下水整備と一体的に道路整備を進めてきたこと、当時の中里喜一区長の街づくりに対する「決意」とそれを支えた土木技術職の「使命感」が大きいと記している。

 そして、街路樹の管理に必要なのは、①行政目標②人員数③予算④技術力⑤使命感⑥発注だとしている。

 区内の新小岩駅南口、平井駅、船堀駅、東大島駅、葛西駅などを歩くと公園・緑の多さがよく分かる。千代田区の街路樹の多いのは、区道もさることながら都道などが計画的に整備されてきたからではないか。美しい街並みのエリアが多い。

 わが多摩市は平成30年4月1日時点で街路樹7,873本と遊歩道8,612本に区別しているためで、合計では16,485本となっており、実質的には1人当たり本数は約8.9本に達しており、江戸川区(同区が遊歩道を街路樹に含めているかどうかは不明)と肩を並べる。最近は、維持管理費を抑制するため、公園や団地の樹木と競合する街路樹を間引きしているとも聞く。

 不思議なのは、区市によって1本当たり維持管理費の差が大きいことだ。最小の清瀬市の4,198円と最多の日野市の約4.7万円とでは10倍以上の開きがある。これほどの差が出るのは、各区市とも計画的に予算を計上しているはずで、単年度ではなく前後1~2年間の推移をみないと実態はつかめないのかもしれない。

 例えば港区。港区の平成30年度の維持管理費は約2.2千万円だが、平成24~26年度の決算数字から計算すると1年度当たり約1.0億円となっている。

 参考までに平成30年度の全区市の維持管理費約55億円を全街路樹約36万本で割ったら、1本当たり維持管理費は15,355円となった。関係者から街路樹1本の剪定費はおおよそ1万円と聞いている。これに植栽桝や低木などの整備費用を加えると約1.5万円くらいになるはずた。

 街路樹にはこれだけの維持管理費がかかっていることをわれわれは知っておいたほうがいい。そして、その街路樹の価値を定量化、見える化する取り組みを関係者には行っていただきたい。

 最後に、「これからの樹木の安全管理を考える」をテーマに令和3年3月1日に行われた同協会主催の座談会で語った同協会の山下得男氏の声を紹介する。

 「我々造園業が培ってきた技術は世界に誇るもので、それは世界も認めていることですが、それが発揮できなくなっています。これを活用できるようにすることが社会にとっても有用であると考えています。それと、いくら健全育成していても、近接施工で根が切られてしまうことで、不健全になってしまう樹木が本当に多いです。欧米ではそうならないようルール化されています。日本にはそのルールすらないことを皆さんに知っていただき、これからに向けての仕組みづくりをしていかなければならないと思っています」

 街路樹に関する記事は、「牧田記者のこだわり記事」(https://www.rbayakyu.jp/rbay-menu-kodawari)にアクセスし、「街路樹」で検索していただくと100本以上はヒットするはずなので、参照していただきたい。

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江戸川区 小松川境川親水公園

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船堀駅前

 

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