RBA OFFICIAL
 
2022/09/17(土) 12:28

シニア層もターゲット いわき駅前の免震再開発 フージャースコーポ・日本エスコン

投稿者:  牧田司

main.jpg
「ミッドタワーいわき」

フージャースコーポレーション(事業比率51%)と日本エスコン(同49%)は915日、常磐線いわき駅前の商業・住宅一体の「ミッドタワーいわき」のマンションパビリオンが完成したのに伴うメディア向け見学会を開催した。免震の21階建て全216戸で、うち3スパン55戸はシニア層をターゲットにした「シニアバリアフリー」住戸としているのが特徴だ。フージャースコーポにとっては市内で4棟目の分譲で、両社のJVは今回が初。

物件は、JR常磐線・磐越東線いわき駅から徒歩3分、いわき市平並木の杜1番の商業地域に位置する敷地面積約5,609㎡、免震21階建て全216戸(権利者住戸10戸含む)。専有面積は62.89131.57㎡、価格は未定。駐車場は自走式222台。竣工予定は20242月下旬。設計・監理は熊谷組、UG都市建築、施工は熊谷組・加地和組・堀江工業特定建設工事共同企業体。販売開始は10下旬~11月上旬の予定。

プロジェクトは、平成263月に「いわき市並木通り地区復興市街地再開発ビル協議会」が設立されてから、平成303月の都市計画決定、フージャースコーポの事業協力者選定などを経て、20222月に着工。市の中心市街地活性化基本計画の一つ。

名称は「並木の杜シティ」で、全体敷地面積約1.1ha4階建て商業棟の1街区とマンション棟、駐車場棟からなる2街区で構成。「並木の杜」としているように、前面道路の国道の歩道部分幅員5mと再開発事業地内の幅員5mを合わせた幅員10mの部分は2段植栽のプロムナード(歩道)として整備するのも特徴の一つ。

主な基本性能・設備仕様は免震構造、直床、リビング天井高2500ミリ、食洗機(プレミアム住戸のみ)などで、共用施設にはクラブラウンジ、マルチスタジオなど。シニア層をターゲットにした「シニアバリアフリー」住戸はベンチ付き玄関、全居室・浴室引き戸ドア、メーターモジュール廊下など。

IMG_3738.jpg
模型

IMG_3739.jpg IMG_3742.jpg
ベンチ付き玄関(左)と2枚引き戸の浴室

IMG_3744.jpg
現地(右は「ホテルB4Tいわき」)

        ◆     ◇

 いわき駅に降りてすぐ、他の地方都市と同様、街の活性化が急務であることが分かった。来年1月開業予定の駅直結のJR東日本のスマートホテル「ホテルB4Tいわき」と駅前の再開発商業ビル「ラトブ」は目立つのだが、その他の建物は古く、駅前通りのケヤキ並木は美しいのだが、どこか暗い影を落としているように感じた。人通りも少なかった。

マンション取材を終え、一杯飲んでから帰ろうと思い、担当者に飲食街を尋ねた。マンションパビリオンのすぐ裏手がそうだと教えられたので足を踏み入れた。車がやっと通れるような狭い路地裏には大小の古い雑居ビルに飲食店・歓楽施設が櫛比していた。その佇まいは隆盛を極めた「常磐炭鉱」の昭和の時代にタイムスリップしたようで、時間が午後4時過ぎだったためもあるのだろうが、営業している店はほとんどなく、廃墟の町に迷い込んだような錯覚も覚えると同時に、おどろおどろしい光景に足がすくんだ。

そんな記者を見下すように、3匹の野良猫が毛を逆立て〝お前が来るところではない〟と殺意のこもったまなざしで睨めつけてきた。馬鹿にされまいと小生も睨み返したら、そのうちの一匹は記者の剣幕に怖気ついたのか脱糞(マーキングか)した。

猫とそんなやり取りをしていても埒があかないので、その飲食街と目と鼻の先の「ラトブ」1階のカフェ&バーでワインを飲んだ。安くておいしかった。そろそろ帰ろうとしたら、目の前の対面の店に「営業中」の電灯がついた。午後5時過ぎだったか。落ちぶれ果てても小生は記者だ。この目で疲弊する飲み屋の実態を探ろうと、店の前のベンチに腰かけていた女子高生3人組に勧められるままに3店並んだ真ん中の「わら焼 湊」に入った。

カツオなど新鮮な魚介類を本物の藁で焼いて食べさせる店だった。店内に入った途端、L字型の無垢の白木のカウンターが目に飛び込んできた。幅(奥行き)にして50cm、長さにして3m+6m9mはあった。樹種を聞いたらイチョウだった。値段は百数十万すると思ったが、「神社の御神木だったのをただで譲り受けたもの」とのことだった。

高級材の、しかも御神木だった貴重なイチョウのカウンターで酒が飲める僥倖に記者は舞い上がり、早速お勧めの酒を注文した。宮城県栗原市の一ノ蔵酒造の「祥雲金龍」だった。初めて味わう酒だった。甘さが抑えられている分だけ旨みと辛みが口腔に広がった。肴もおいしい。

会計を済ませるころには相当酔っぱらっていた。東京に戻るのは夜中になりそうだったので帰るのを断念、ホテルに泊まった。

翌日は「ラトブ」の45階にある市の図書館に立ち寄った。三猿文庫・愚庵文庫など背表紙を見ただけで読みたくなるような歴史的な書籍・文献がたくさんある。同市の所蔵図書の多さは東北一だそうだ。

飲まずに東京に戻っていたら、いわき市の悪いイメージしか残らなかったはずだ。酒に十の徳あり。(今年5月に行われた、フランスの日本酒コンクール「Kura Master 2022」純米酒部門で「祥雲金龍 純米吟醸」が部門最高賞「審査員賞」を受賞したとある)

IMG_3750.jpg IMG_3757.jpg
いわき駅近くの飲食・歓楽街の昼と夜

IMG_3749.jpg
〝お前は誰だ〟〝大きなお世話だ〟(脱糞したのは手前の猫)

IMG_3752.jpg IMG_3754.jpg
イチョウ材のカウンター(左)と生カキのわら焼き・「祥雲金龍」

        ◆     ◇

 「シニアバリアフリー」は成功するとみた。これはどこのエリアのマンションにも通用するはずだ。肝心の坪単価だが、担当者から「書かないで頂きたい」と言われたので書かない。今回で4棟目の分譲というフージャースコーポは「年間100戸は厳しい」地域の需給関係を知悉しているはずで、高値追求しないとみた。市の人口動態などのデータも強気になれない数値を示している。

 同市は昭和41年、県が主導して行った広域市町村合併によって生まれた中核市だ。市域面積1,232k㎡は当時日本一広い市として話題になった。その後、他の地域でも合併が相次いだため、現在は富山市(1,241k㎡)に次いで全国12番目の広さとなっている。

令和49月現在の人口は326,000人。福島県全人口の18.2%を占め、仙台市の1,068,129人(令和49月現在)に次ぐ東北エリア2番目の多さだ。しかし、人口は平成10年の360,661人をピークに減少の一途で、高齢化率も31.5%(令和2年)と30%を超えている。

「並木の杜シティ」が街の再生の起爆剤になるよう願う関係者の気持ちはよく分かる。

IMG_3762.jpg
駅前通り

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン