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2022/10/25(火) 14:57

「桐の街・春日部」匠の技を未来に繋ぐ ポラス+地元企業連携 建材・インテリア開発

投稿者:  牧田司

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「フレーベスト新河岸WA plus」

 ポラスグループは10月24日、〝桐の街〟として知られる春日部桐箱工業協同組合や建材メーカー・厚川産業と協働・開発した住宅用内装用無垢桐パネル「KIRINOKA」の活用を進めるとともに、伝統的工芸品をインテリア雑貨「KIRIHAKO」としても商品化し、同社ショールームなどで販売していくと発表。同日、分譲戸建て「フレーベスト新河岸WA plus」のモデルハウスに設けた「アンテナモデル」をメディアに公開した。

 桐は、軽くて断熱性が高く、調湿性に富み、防虫効果もあることから桐箪笥、桐箱などとして利用されてきたが、「表層が柔らかく、傷がつきやすい」などの理由から国内建材メーカーは建材としてほとんど扱ってこなかった。

 一方で、春日部市では、日光東照宮の造営に携わった匠が市内に住み着き、桐を使った製品を作っていたことから「春日部桐箱」として全国に知られるようになり、1980年代のバブル期には贈答品のパッケージとして重宝がられた。しかし、その後、1990年代の容器包装リサイクル法や環境意識の高まりの中、桐箱は過剰包装として生産量が減少。春日部桐箱工業協同組合が設立された昭和60年(1985年)当時、約50社あった桐箱業者は現在10社まで減少している。桐箱の生産は全国で行われているが、春日部以外では組織化されておらず、職人の高齢化、後継者難、価格決定権がないことなどから廃れる一方とされている。

 こうした状況を打破しようと、伝統手工芸品「桐箱」の住空間への転用と地域産業の活性化のために、10年前から同社グループと春日部桐箱工業協同組合、厚川産業が研究を進め、浮造りや多重塗装など試行錯誤を重ね、無垢桐パネル「KIRINOKA」として開発。2021年度グッドデザイン賞を受賞し、今年度は200棟を超える分譲住宅に採用している。

 「KIRIHAKO」は、「KIRINOKA」のテイストに合わせてインテリア雑貨として開発したもので、「Kinu-hako「Iro-hako」「Yuki-hako」と名付けテーブル、アロマペット、貯金箱、蛇腹の箱、アートパネル&フレームとして、同社のショールーム、大手通販サイトなどで販売していく。

 ポラスグループ中央住宅戸建分譲設計本部設計一部部長・野村壮一郎氏は「『KIRINOKA』は年間200~300棟で採用していく。『KIRIHAKO』はインテリアとしていろいろなパターンで作れるので桐の価値を高めることができる」と語った。

 春日部桐箱工業協同組合理事長で、明治31年創業の厚川産業代表取締役・厚川秀樹氏は、「桐は成長が早く30年で直径50cmくらいになる。わが国の桐の生産地としては会津、岩手が知られるが、国有林が多く、自然林はなくなってきており、中国や北米産が中心。我が家は床材に桐を採用しており、暖かくべたべたしない。ネコも喜ぶ(引っ掻けがいがあるためか)。ただ、施工が難しく畳材と競争するのには課題もある」と語った。発表会に臨んだ同社常務取締役・厚川雅信氏については「もう代替わり、来年度からは社長」と社長交代を明言した。

 「フレーベスト新河岸WA plus」は、東武東上線新河岸駅から徒歩11分、川越市大字藤間字開発に位置する全41戸。敷地面積は110.03~154.82㎡、建物面積は95.63~106.61㎡、価格は3,980万~4,980万円。8月から21戸を販売開始しており、現在、14戸を成約するなど好調に推移している。

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モデルハウス見学会(手前の小物、壁は桐材、床はシナの挽き板)

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塗装は4種から選べる

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「KIRIHAKO」

◇        ◆     ◇

 若い人はどうか知らないが、小生などは桐は日常だった。嫁入り道具として桐箪笥をトラックに載せて嫁ぐのは女性の夢だったし、引き出しを締めると隣り合わせの引き出しが開くのを楽しんだものだ。母親の宝、自分の分身のへその緒は桐箱に収められた。

 大きくなっても、一時は桐壺が最高ではないかと「通い婚」を夢見し、きれいな女性にキリキリ舞いし、結局は裏キリにあい、キリ捨てらてばかりいた。それでも、キリの摩周湖は数少ない持ち歌の一つだった。今でも江戸キリ子で酒を飲む。

 そんな桐が使われなくなり、ミクロの世界で生きる匠の技が廃れるのは見るに忍びない。今回の取り組みが花開くことを望みたい。

 その可能性はかキリなく大きいと見た。厚川氏が自宅の床材に桐を採用していることを前段で紹介した。野村氏もまた「最初、厚川さんから提案されたのは実は床材だった」と打ち明けた。ナイスが商品化した「表層圧密ギュッド」のように圧縮すると、桐本来のよさが失われるので圧縮材は不向きのようだが、柱の傷で子供の成長を計ったように「傷をデザイン」することは可能なはずだ。

 その可能性を証明することを一つ経験した。この日はとても寒く、モデルハウスは暖房がつけられていたのだが、コロナ対策なのか窓という窓は開け放たれていたのでその効果はなかった。

 ところが、床材は同社の分譲戸建ての特長でもある挽き板が採用されており、その寒さの分だけ暖かく感じられた(小生のマンションはシート張り)。桐も同じであるはずだ。その差のテータもあるはずだ。

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アンテナモデル内観

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現地

 

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