伊藤忠都市開発が分譲中の「クレヴィア三軒茶屋」のモデルルームを見学した。駅から徒歩11分の全52戸で、70㎡以上の住戸はトーヨーキッチン、浴槽の框にヒノキを採用した浴室を標準装備とし、1階の2住戸は露天風呂付き。既分譲の坪単価は約570万円だが、設備仕様レベルはこの価格水準では突出しているはずだ。価格上昇が著しく、一方で設備仕様レベルが劣化・退行している業界に一石を投じるマンションだ。
物件は、東急田園都市線三軒茶屋駅から徒歩11分、世田谷区若林1丁目の第一種住居地域に位置する5階建て全52戸。専有面積は36.36~133.66㎡。現在分譲中の住戸(9戸)の価格は7,990万〜28,990万円(54.17〜133.66㎡)。既分譲住戸の坪単価は約570万円。竣工予定は2023年9月下旬。デザイン監修はアーキサイト メビウス。設計監理は安宅設計。施工は大末建設。販売代理は伊藤忠ハウジング。
昨年12月に物件ホームページを開設し、これまで反響は約2,000件超、来場者は約260組。6月末から販売を開始しており、未分譲の1LDKなどを除き、約半数が成約済み。購入者の半分は世田谷区に地縁がある人が中心で、賃貸脱出派がメイン。
現地は、環七通りから奥まった2~3階建て住宅や5階建てのマンションなどが建ち並ぶ閑静な住宅街の一角。本件敷地より北側のエリアが下がっており、建物中央の中庭・吹抜け空間を囲むように住戸を配置。プランは36㎡台が6戸、40~60㎡台が27戸。70㎡以上が19戸。
主な基本性能・設備仕様は、二重床・二重天井、サッシ高約2400ミリ、ディスポーザー、食洗機、ミストサウナ、グローエ水栓など。
同社・瀬戸氏は「立地は幹線道路から奥まった閑静な住宅街、かつヒルトップで、上層部は都心方面中心に眺望がたのしめる住戸も多く、この立地条件と設備仕様を掛け合わせた商品企画が評価されています。最近のマンションは価格が上昇しているのに設備仕様は変わっていないと考え、トーヨーキッチンやヒノキ框の浴槽を採用することなどで差別化を図りました。物件ホームページには〝露天風呂あります〟と謳っています」と話した。
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今に始まったことではないが、同社ほどチャレンジ精神が旺盛なデベロッパーはない。この5年間の主な物件を直近の供給順に列挙した。
玄関手洗い収納を3LDKタイプに装備した「西馬込」、天井高2700ミリ&ワイドスパンの「新御徒町」、シャワールームのみで浴槽をなくした住戸も提案した「山吹神楽坂」、最上階にリモートワークや読書に利用できる「+HANARE Common」を設けた「両国国技館通り」、6か所の「ボイド」と9室の「離れ」を設けた「小杉御殿町」、5つ星ホテル並みの有楽町の「ギャラリー」、「理想の新婚部屋」を提案した「門前仲町」(賃貸)、角住戸率100%、約7.2m~約9.4mのワイドスパンの「上野池之端」、自分の生活スタイルに合わせてプラン(有償)が選べる「大井町」、住戸内の1坪を8種類の中から選べる「池袋West」、外観デザインが秀逸だった「文京関口」、ベランダから釣りができそうな「金沢八景」…。(RBAホームページで「伊藤忠都市開発」を検索していただければヒットするはず)
今回の「三軒茶屋」もこれらの物件に引けを取らない。驚いたのは〝ゼロ動線〟をテーマにしたトーヨーキッチンを標準装備(70㎡以上の住戸)していることだった。サイズは1990×1050ミリ(住戸により異なる)だから大きくはないが、天板がキラキラと輝き(ステンレス製)、何よりも洗・切・盛を手際よくできる76センチ四方のユーティリティシンクがいい。表裏リバーシブルのまな板付き。トーヨーキッチンの商品を標準装備しているマンションなど最近ほとんど見たことがない。料理好きにはたまらないキッチンだ。
もう一つは、框にヒノキ、浴槽内に御影石を採用した浴槽だ。この種の浴槽は最近ほとんど見かけなくなったが、なるほどと得心したのは浴室と洗面室の壁面を同じタイルとし、ガラスで仕切ることで一体的な空間を演出していることだ(一部の住戸のみ)。ホテル・旅館気分が味わえるはずだ。
1階の2住戸(約57㎡)には、住戸内の浴室のほかにテラス内に露天風呂を設けているのも面白い。記者は風呂が好きではないのでよく分からないのだが、これもまた風呂好きにはたまらないだろう。