東京大学大学院農学生命科学研究科と積水ハウスは11月30日、生物多様性と健康に関する共同研究を2022年12月1日から開始すると発表した。身近な庭の自然とのふれあいが、居住者の自然に対する態度・行動や健康に及ぼす影響を総合的に検証するもので、この種の試みは世界初となる。
同研究科は、都市の生物多様性の保全や生態系サービスの活用に関する研究を行っており、2020年に緑地の利用頻度と家の窓からの緑の景色という2つの自然経験の尺度が、都市住民のメンタルヘルス(自尊心、人生の満足度、幸福度、鬱・不安症状、孤独感)とどのように関連しているのかを検証。その結果、緑地の利用頻度が高い人だけでなく、窓から緑が良く見える家に住む人もこれら5つのメンタルヘルス尺度が良好な状態にあるという結果が得られたとしている。
今回の共同研究では、同科保全生態学研究室が構築した分析手法と同社の「5本の樹」計画を組み合わせて研究することで、「生物多様性の豊かな庭の緑」が「人の健康・幸せ」にどのような影響を与えるかを科学的に検証する。
同科准教授・曽我昌史氏は共同研究について「積水ハウスの保有する全国の植栽データによって、これまで検証が難しかった『庭の生物多様性と健康および自然に対する考え・行動の関係性』が世界で初めて総合的に検証されることになります」とコメントしている。
積水ハウスは2001年から「5本の樹」計画として〝3本は鳥のため、2本は蝶のため〟に、地域の在来樹種を植える取り組みを行っており、2019年から行っている琉球大学久保田研究室・シンクネイチャーとの共同検証では、生物多様性の劣化が著しい都市部で植樹を行ってきた効果が確認されている。
「5本の樹」計画で樹木を植える際、顧客が望む樹種を積水ハウスに聞いた。別表がそれだ。同社によると、地域によっては樹種が異なるとのことだ。以下に特徴を紹介する。
ソヨゴは常緑の中木で、赤い実がなることから庭木として人気も高い。シラカシは常緑樹で、地質にもよるが樹高は20mくらいになる。強剪定すると枝葉が繁茂するので注意が必要とされる。
イロハモミジはよく知られた落葉樹。基本的には剪定は行わないとされている。アオダモはバットの材利用としてよく知られた落葉広葉樹。樹高も10mくらいにしか成長しないので、庭木としてよく植えられる。
エゴノキは落葉小高木。白い小さな花が咲き、庭木や公園などによく植えられる。ヤマボウシも庭木や街路樹によく用いられる落葉樹。初夏に白い花を咲かせる。クロガネモチは常緑広葉樹。冬季に真っ赤な実を付ける。美しい樹形を描く。街路樹としても用いられる。