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2023/02/24(金) 22:47

深謀遠慮の計算 三方良しオフィス・店舗賃貸保証サービス業 サンフロ「TRI-WINS」

投稿者:  牧田司

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左から中村氏、齋藤氏、増山氏

 サンフロンティア不動産は2月24日、同社グループのSFビルサポートの新しいオフィス・店舗賃貸保証サービス「TRI-WINS(トライ ウインズ)」を同日立ち上げ、サービスを開始したと発表した。

 コロナ禍による東京都の人口流出、企業倒産の増加、オフィス空室率の上昇、賃料の下落傾向に対応すると同時に「新しい資本主義の成長戦略」を見据えた戦略として、ビル経営者・入居者・社会課題に対応する〝三方良し〟の「Win-Win-Win(TRIPLE WINS)」の実現を目指すもの。

 ビル経営者が抱える収益悪化、滞納トラブルのリスク、ビル価値の下落の不安を解消し、入居者へは初期費用の負担軽減、入居審査の壁の低減を図り、同時に社会課題の解決へ貢献する。トラブルが絶えない代理店方式を採用せず、これまで5万件を超える信用調査を行ってきたノウハウを武器にする。

 記者発表会に臨んだサンフロンティア不動産代表取締役社長・齋藤清一氏は、近年の東京都の人口動態、企業倒産、オフィス賃料・空室率などの動向を紹介しながら、同社が強みとする既存オフィスの「バリューアップ」を武器に、環境保護、人材育成、地域創生に取り組み、持続可能で豊かな社会の実現を目指すと語った。

 また、SFビルサポート代表取締役社長・中村泉氏は「昨年、政府はイノベーションの鍵となるスタートアップ創出元年を宣言しました。新ブランド『TRI-WINS』を活用していただくことで、ビル経営者様には稼働率アップなど安定的なビル経営を、入居者様には有効な資金活用を実現し、合わせて社会課題解決に取り組む」とコメントした。

 当面、取り扱う対象物件は首都圏で、保証内容は賃料・共益費・その他固定費の滞納分で、保証委託料は賃料換算で2年間分。

◇        ◆     ◇

 中小企業庁の2022年版「中小企業白書・小規模企業白書」によると、2021年は新型コロナウイルスの流行や原油・原材料価格の高騰、部材調達難、人材不足といった問題が中小企業を直撃し、引き続き厳しい環境下にあるとしている。

 2021年の倒産件数は資金繰り支援策などの効果もあり、6,030件と57年ぶりの低水準となった。しかし、休廃業・解散件数は、前年の49,698件から46,724件へ減少したものの、民間調査が開始された2000年以降で過去3番目の高水準となっている。中小企業向け持続化給付金は終了し、金融機関の貸出残高が増加し、各業種において借入金の返済余力が低下しているとしている。

 同社が得意とする中小型の既存オフィスビルを高付加価値化させるバリューアップ事業も決して楽観視できる環境下ではないはずだ。リリースにもあるように、同社の個人事業主と新規設立3年未満の入居者の合計は全体の約30%を占めるという。一方で、スタートアップ企業の3年生存率(倒産率)は50%という厳しいデータもある。

 どうして、このような厳しい環境下で新ブランドを立ち上げたのか。代位弁済・債権回収リスクを敢えて冒してまで競争が激しいと言われるオフィス・店舗の賃貸保証サービス業に参入するのか。いま一つ分からない。

 だが、しかし〝ピンチはチャンス〟。だからこその参入なのだろう。SFビルサポート保証事業課次長・増山暁泰氏は「信用調査は2005年から5万件の実績があり、草分け的な存在」と語り、中村社長も「17年間の累計の取り扱い件数は8,000件、うち保証件数は4,000件弱。毎年1、2割ずつ積みあがっている。十分グループの事業に貢献できる」と自信を見せた。

 さらにまた、スタートアップへの年間投資額を現在の約8,000億円から2027年度に10兆円規模に引き上げる目標を掲げた政府の「スタートアップ育成5か年計画」も視野に入れているのだろう。

 齋藤社長は創業の理念である「利他」も強調した。「三方良し」&「利他」-考えてみればあらゆるビジネスに通じることだ。これなくして企業は存続できない時代であるのは確かだ。深謀遠慮の計算があっての決断だろうと理解した。

 中村社長は、わが故郷・三重県の英虞湾の突端志摩町出身だと聞いた。「近江泥棒、伊勢乞食」、つまり三方良しを編み出した近江(滋賀県)とその対極の商法で対決した伊勢商人(三重県)については明言を避けたが、ともに共通する「利他」の精神は小さいころから身についているのだろうと思った。

 

 

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