積水ハウスは3月10日、前日に発表した第6次中期経営計画(2023~2025年度)説明会を開催した。
同社代表取締役社長執行役員兼CEO・仲井嘉浩氏は、第5次中期経営計画(202~2022年度)を振り返り「営業利益を当初計画より421億円上回ったのは自信になった。戦略は間違っていなかったことを確認できた。初年度は新型コロナやウッドショックの影響などにより441億円利益を押し下げ、このうち100億円を価格に転嫁し、70億円は内部努力で取り戻したが、残りの270億円は吸収できなかった。しかし、最終的には270億円を回収し、なおかつ戸建住宅、賃貸事業が好調だったことにより205億円上方修正することができた」とし、第6次中期経営計画については、「この自信を背景に〝『わが家』を世界一幸せな場所にする〟30年グローバルビジョン実践するため、基本方針は『国内の〝安定成長〟と海外の〝積極的成長〟』とした」と語った。
第6次中期経営計画では、「国内の“安定成長”と海外の“積極的成長”」を基本方針とし、「技術力」「施工力」「顧客基盤」と、商品・技術開発から、営業・設計・施工・アフターサービスまで、住まいづくりに関わるすべてのプロセスを独自のバリューチェーンを活かし、既存事業の深化と拡張を図る。
請負型ビジネスでは、戸建住宅事業は価格レンジ別の3ブランド戦略を深化させ、CRM(Customer Relationship Management)戦略の推進を図り、新たなビジネスとして、地域ビルダーと連携して1stレンジの強化を図る。
建築・土木事業では、鴻池組の強みである環境対応・技術力をドライバーに、土木分野での環境ソリューションを強化し、建築分野での受注チャネル拡大・深化を図る。
開発型ビジネスでは、徹底したエリアマーケティングを実施、仲介・不動産事業では、資産価値の高い美しい分譲地を開発するとともに、緑化環境の整備や既存住宅の流通・活性化に取り組む。マンション事業、都市再開発事業では、四大都市圏において厳選したエリアへ資産価値の高い物件を供給するとともに、ZEHマンション・ZEBの開発を推進する。また、「Trip Base 道の駅プロジェクト」をはじめ、地方自治体等との連携による地方創生にも貢献していく。
国際事業では、米国・豪州・英国での戸建住宅の年間供給戸数1万戸を目指す。
2026年1月期の経営目標は売上高36,760億円(2024年1月期30,800億円)、営業利益3,180億円(同2,650億円)、経常利益3,110億円(同2,590億円)、純利益2,140億円(同1,930億円)、ROEは11%以上を安定的に創出し、配当は中期的な平均配当性向40%以上(110円を下限)とする。
基本方針を「コアビジネスのさらなる深化と新規事業への挑戦」と位置づけた2022年度を最終年度とする第5次中期経営計画は、3か年合計の業績は当初収益計画を上回り、2022年度では過去最高の売上高・利益を達成した。
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仲井社長は説明会で何度も「自信」を口にした。5~6回はあったはずだ。その理由を記者も考えた。
2022年の持家の着工戸数は前年比11.3%減の25.3万戸となり、16年ぶりに分譲住宅に抜かれた。賃貸や分譲住宅が前年比で伸びているのに、どうして持家のみが大幅に減少しているのか。巷では物価高などを中心とする消費マインドの低下がその理由に挙げられているが、ならば分譲住宅だって影響を受けるはずだ。分譲戸建ては一昨年のような勢いはなくなったが、戸数は増加している。
記者は、持家の減少は、消費マインドの低下だけではなく、いわゆるパワービルダーの分譲戸建てに市場を奪われているからではないかと考えている。2022年の分譲戸建て着工戸数約14.5万戸だが、うち全国区のパワービルダーの着工比率は50%を突破しているはずだ。
その影響は、今後発表されるハウスメーカーなどの決算に表れるはずだ。その点、積水ハウスは健闘していると思う。戸建住宅事業は売上高3,524億円(前期比0.1%減)、営業利益は383億円(同9.8%減)となった。減益になったのは原価高の影響だろうか。1棟当たり単価は4,619万円、分譲戸建ての建物部分の1棟単価は3,885万円、マンションも1戸5,207万円と極めて高い数値を示している。
飯田グループホールディングスの注文住宅単価は2,103万円、戸建て分譲単価は2,987万円(2023年3月期3Q)と比較すると、積水ハウスの住宅は似て非なるものがよくわかる。マンション単価で突出している三井不動産の2022年3月期の単価は6,442万円だ。同社と三井不のこの価格差は関西圏中心と首都圏中心の差だろう。
これらから読み取ることができるのは、同社の顧客は景気変動に影響されない高所得層が中心で、ハード・ソフト・サービスの融合によりZ住宅など付加価値の高い住宅を供給し、徹底したエリアマーケティング戦略を取っているということだ。同社の顧客の自己資金比率は25.9%、戸建ての紹介比率は38.9%というデータが裏付けている。仲井社長の「自信」はそうした盤石な基盤が構築できているからではないか。疲弊するばかりの競争が激しい市場に人材を投入しないという意思の表れでもあると記者は理解している。
10日の説明会で好調な分譲住宅について聞かれた仲井氏は「当社はCRMによって、フェースツーフェースによる顧客相談を年間30万件受けている。DXを駆使して土地なし顧客などに対応できているのが大きい」と語り、金利動向に対する質問に対しては「(1次取得層向けの)1stレンジは影響を受けるかもしれないが、主力の中高級路線の顧客への影響はそれほどでもないと見込んでいる」と話した。