RBA OFFICIAL
 
2023/03/17(金) 16:19

「自分の創造性を発見する場所」 隈研吾氏&大成建設ハウジング「モクコンの家」

投稿者:  牧田司

モクコンの家_ノキテラス外観.jpg    モクコンの家_ハコテラス外観.jpg
「ノキテラス−2階建て−」(左)と「ハコテラス−3階建て」

 大成建設ハウジングは3月16日、建築家・隈研吾氏とのコラボレーションによる壁式鉄筋コンクリート住宅「パルコン」の新たな戸建住宅「モクコンの家」を同日から発売すると発表した。「パルコン」の強さと、木のやさしさとぬくもりのある外観とテラスを併設するのが特徴。発売地域は関東、東海、関西、九州(一部地域を除く)。

 以下、同社のプレス・リリースで紹介されているインタビュー記事全文を紹介する。

◇        ◆     ◇

-パルコンについて、どういった印象をお持ちでしょうか。

 隈氏「パルコンには、コンクリート住宅の総合的な強さを感じます。」

 住まいは人間の生活を守る、そして人間自身を守る非常に大事な器だと思います。そこでは何よりも安心感が求められます。
 大成建設ハウジングが手掛けるパルコンは、コンクリート住宅ならではの耐震性が安心感につながり、安らぎという家の基本的な条件を満たしていると考えます。また、よく知られているように耐火性、防音・遮音、断熱・気密など、他にも優れたポイントがたくさんあり、さらに劣化に強く耐久性がある点はまさにサステナビリティという時代の要請にも応えていると思います。
 いま、コロナ禍を経て住宅の役割が増えたと感じています。これまで家は社会とは切り離された場、という位置づけでしたが、社会と個人の接点として住宅が意識されるようになりました。仕事をする場所、人と集う場所、クリエイティブな場としての機能が求められます。そうした社会的な役割を果たすためにも、コンクリートという災害に強い素材こそ大切なのではないかと考えています。

 -デザインのこだわりについてお聞かせください。

 隈氏「木のぬくもりと、半屋外スペースです。」 

 私が携わる建築では、木のぬくもりが大きなテーマです。人類にとっていちばん古くからの友人として「木」がそばにありました。手触りのあたたかさ、やわらかさをいつも感じられることが大切なのです。
 今回のパルコンでも木材をふんだんに使い、見た目にも手触りとしても、自然のやさしさが感じられることを重視しました。「ノキテラス」の大屋根とファザード、「ハコテラス」の木製テラスなど、ぬくもりある木の質感が特色です。
 また、屋上の庭園スペースや、室内と屋外をつなぐテラスなど、これまでの一般的なテラスやバルコニーを超えた、空間の豊かさを持った半屋外スペースを設けました。どちらもコンクリートならではの堅牢性によって、半屋外を生活の場として使用することが可能になっています。屋外でも人がゆったりと過ごせることを前提で考え、いろいろなシーンの演出を想定してみました。外気の心地よさを、広がりのあるスペースで感じることができます。特に「ハコテラス」はバルコニー上部の開放感に注目していただきたいと思います。

 -玄関から続くミュージアムは、何を目的に作られましたか。

 隈氏「住宅と社会をつなげたい、と考えました。」

 今回のプランは、アプローチから玄関を入り、そのままミュージアムスペースが連なっているのが大きな特徴です。アフターコロナを見据えてそこにいろいろな人々が集うシーンを思い描きました。仕事をする場、クリエイティブな発想が生まれる場として機能することはもちろん、住宅と社会がつながる際のひとつの形を体験していただけるでしょう。
 ミュージアムは住む人の創造性の拠点となると同時に人を招き入れて打ち合わせや交流するスペースにもなる。またその場にいる人がリラックスできることも大切。多目的でフレキシブルに活用できるスペースです。

 -ZEHへの対応についてはいかがでしょうか。

 隈氏「サステナブルなデザインと技術があります。」

 これからの住宅を考える上で、持続可能性は大きなテーマです。ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に対応しているかどうか、住む人もそこに集う人も、省エネルギーに関心が集まる部分だと思います。
 今回の家はZEH対応設備だけでなく、木材を多用した住み心地の向上、充分な植栽スペースの想定などトータルにサステナブルであることが特徴です。
 素材や構造といったエンジニアリングだけでなく、デザインとエンジニアリングが一致している部分をぜひ体験していただきたい。そうした点で、サステナブル住宅のひとつのモデルになるだろうと考えています。

 -この新しい邸宅は、一言で表すならどんな家でしょうか。

 隈氏「住む人が、自分の創造性を発見する場所です。」

 この家は住む人の「自由」を信頼している部分があります。空間はなるべくシンプルに作り、住む人がどんな風にその空間を使いこなしていくのか。住む人の自由、住む人の創造性を活かす場所がたくさんあります。
 ぜひクリエイティブに住んでいただければと思います。
 半屋外の空間にいろいろな家具を持ち込んで、いかに日常的な場として使いこなすか。屋外を生活空間に組み入れるのは新しいトレンドでもあり、そのトレンドをご自分のセンスで実現できるのです。
 そしてミュージアム。自分のコレクション、蔵書などで満たしたクリエイティブなスペースとして、ぜひ自由に使いこなして欲しいと思います。この家がキャンパスだとすると、皆さんがいままで見たことのない絵を描くだろうと期待します。家が、自分自身の新しい創造性を発見する場所になるのです。
 新しい創造力がコンクリート住宅という安心感の土台の上で開花し、サステナブルに社会と繋がるでしょう。

◇        ◆     ◇

 隈氏が「プレファブ」とコラボするのに驚いた。しかし、隈氏は20年も昔から、「木」と「コンクリ」の〝融合〟を考えていたと思われるふしがある。著書「負ける建築」(岩波書店、2004年)の「Ⅲ-3 コンクリートの時間」の中に次のような記述がある。

 「建築という『形』を持つものを用いて、移り行く不確かな状態を固定化し、確実なものにしようという欲求がこの時代(20世紀)を支配した。その意味でこの時代は『形』の時代でもあり、『建築』の時代でもあったのである」
 「その欲求に対して、コンクリートほど見事に応えてくれる材料はほかに移り行く流動的なものが、コンクリートにおいては、一瞬にして形を持ち、固定化されるのである」
 「しかし、今や、そのような固定化こそ、人々の嫌悪の対象になりつつある。自由を自由のままに楽しみ、移りゆくものを移りゆくままに享受する生活態度を、人々は獲得しつつある。そのような時代には、永遠に固定化されることのない材料、工法が求められるようになるであろう。例えば木造の時間」
 「木造はコンクリートのように液体状態の自由を持つこともなければ突然に強くなることもない。いつもそこそこに不自由で、そこそこ弱いのである」
 「時間とは永遠にだらだらと続くものだということが木造の本質である。…それは二〇世紀の『工業化』『プレファブ』の時間とも全く異質のものである」
 「いかなる形にも固定化されようのないもの。中心も境界もなく、だらしなく、曖昧なもの…あえてそれを建築と呼ぶ必要は、もはやないだろう。形からアプローチするのではなく具体的な工法や材料からアプローチして、その『だらしない』境地に到達できないものかと、今、だらだらと夢想している」

 今回の「モクコンの家」は、この夢想を具現化しようという試みのように記者は感じるのだが、みなさんはいかがか。

 

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン