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2023/03/22(水) 17:28

令和5年地価公示 野村不・三菱地所・東急不 社長コメント

投稿者:  牧田司

お客様心理の変化に敏感に対応

野村不動産代表取締役社長・松尾大作氏

 今回の地価公示は、コロナ前への回復傾向が顕著となり、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも、2年連続で上昇し、上昇率が拡大した。住宅地については3 大都市圏・地方圏のいずれも2年連続で上昇し、上昇率が拡大、商業地については大阪圏が3年ぶりに上昇に転じたことで、三大都市圏・地方圏いずれにおいても上昇し、上昇率が拡大した。

 住宅市場に関しては、用地案件の減少などにより供給が限られるなかで需要は引き続き堅調であり、売れ行き好調な状況が続いている。共働き世帯の増加やテレワークの浸透等により、住まいで過ごす時間を豊かにしたいという新たな需要が生まれたことなどを背景に、中古を含めて需要は底堅く、また富裕層の動きも活発である。今後は、多様化するニーズを捉えた商品企画や、CO2排出量実質ゼロ住宅、駐車場へのEV 充電設備設置、国産木材の活用など脱炭素に寄与するサステナブルな商品・サービスがさらに求められる。

 開発手法の面では、通常の土地取得に加え法定再開発や公有地利活用、その他多様な手法を用いるとともに、地方中核都市におけるコンパクトシティ化へのニーズへ対応した中心市街地の再開発への参画など、継続的かつ中長期的な取組みが大切だと考える。
 なお、注視している建築費の上昇や住宅ローン金利の動向などに加えて、昨今のエネルギーコストの高騰やインフレによる家計への影響など、お客様心理の変化についてこれまで以上に敏感になってゆく必要がある。

 オフィス市場に関しては、賃料は緩やかな下落傾向にあり、空室率は一進一退の状況が続く。一方でオフィスへの回帰や、好調な企業業績を背景にオフィスの拡張移転を行う事例も増えている。リアルなコミュニケーションの再評価や採用拡大など、オフィスの意義や価値を重視し、センターオフィスの機能を充実させる動きもみられるようになった。働き方のニーズはさらに多様化しており、当社ではこうした変化に対応すべく、大規模オフィスに加え、中規模ハイグレードオフィスのPMOシリーズ、サービス付き小規模オフィスのH1O、時間貸しシェアオフィスのH1T などを組み合わせた「オフィスポートフォリオ戦略」を提案することにより、企業のフレキシブルな働き方を支援してゆきたい。また、オフィス空間の提供にとどまらず、入居企業をサービス面から支援する取組みもさらに進化させる必要がある。

 商業市場に関しては、コロナ前の状態に完全に戻ることは難しいと考えるが、食料品などの生活必需品を扱う地域密着型施設を中心に着実に回復に向かっており、独自性のある施設運営により差別化を図っていく。
 ホテル市場に関してはコロナの影響から回復しつつある。すでに国内の利用客増により稼働率は上昇しており、今後のインバウンド需要の戻りによる本格的な需要回復に備える。

 物流市場に関しては、eコマースニーズの拡大を背景に旺盛な需要があり、用地取得競争は過熱しているものの、多様な開発手法を用いて順調に用地取得が進んでいる。当社の開発ノウハウを活かすとともにテナント支援の取組み等をさらに進め、引き続き積極投資を行う。

 当社は、社会環境の変化や人々の価値観の多様化を念頭に置きつつ、これまで同様、お客様一人ひとりの生活や時間に寄り添い新たな価値を生み出す新規事業に取り組むなど、まだ見ぬ価値創造に向け挑戦をし続ける。

 地価公示は、不動産の取引動向や中期的な展望を反映したものであり、様々なマクロ指標と合わせて今後も重要指標のひとつとして注視していく。

コロナ前への回復傾向が顕著

三菱地所執行役社長・吉田淳一氏

 令和5年地価公示は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2 年連続上昇し、上昇率が拡大した。地域や用途などにより差があるものの、ウィズコロナの下、景気が緩やかに持ち直している中、都市部を中心に上昇が継続するとともに、地方部においても上昇範囲が広がるなど、コロナ前への回復傾向が顕著となったと見られる。

 住宅は、都心の高額物件の需要が引き続き旺盛であり、直近では「ザ・パークハウス広尾」が早期に完売、また最高水準のグレードを目指したザ・パークハウスのフラッグシップシリーズ「ザ・パークハウス グラン 三番町26」の販売も好調に推移している。政府による水際対策緩和に伴い、インバウンドニーズが徐々に顕在化しており、「ザ・パークハウス京都河原町」ではその引き合いを実感している。

 アウトレットでは、国内需要は引き続き好調に推移し、コロナ前と同水準を維持している。昨年10月には当社グループとして約10年ぶりに「ふかや花園プレミアム・アウトレット」が開業し、単なる買い物の場だけでなく、地元地域と共生し、情報発信・観光拠点の場となっている。

 ホテルは、国内需要が底堅く推移しており、昨年10月の入国制限の緩和を受けインバウンド需要が徐々に回復傾向だ。昨年11月には「ザ ロイヤルパークキャンバス 銀座コリドー」を開業した。お酒や音楽などナイトライフをより充実させるコンテンツを提供し、国内外の観光需要をうまく取り込みながら好調なスタートを切った。

 オフィスは、コロナの収束に伴い、業容が拡大している企業を中心に移転検討が活発化しており、リーシングにおいては、都市中心部への需要の底堅さを実感している。本年2月に竣工した「3rd MINAMI AOYAMA」は、次世代のワークスペースとして、各執務フロアにインナー/アウターバルコニーを整備する等、多様な働き方を可能にするオフィス空間を実現し、順調にリーシングが進んでいる。

足元の国際経済情勢などマクロ要因注視

東急不動産代表取締役社長・岡田正志氏 

 今回の地価公示では全国の全用途平均は2年連続で上昇した。昨年までは新型コロナウイルスの影響で地価は弱含んでいたが、アフターコロナをにらんだ人流の回復やテレワークから出社への移行、そしてインバウンドの回復基調などが影響している。ただ、ロシア・ウクライナ情勢による世界情勢の不安定化や世界経済の先行き不安、物価高騰による国内景気への悪影響などの不安定要素もあり、当面は地価の動向を注視していく必要があるとみている。

 地価の上昇地点をみると北海道、特に札幌市近郊の好調さが目立つ。2030年の北海道新幹線の札幌駅への延伸を見据え、札幌駅周辺を中心に市内で開発が進んでいるほか、グループの東急コミュニティーが管理する北広島市の新しい野球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」の周辺でも地価上昇が続くなど、札幌市近郊部の住宅地、商業地にも地価上昇の流れが波及している。札幌市とその近郊に人口集積が進んでいることも影響している。当社も札幌の中心部「すすきの」の玄関口であるススキノラフィラ跡地で、ホテルや商業施設のほかシネマコンプレックスなどが入る2023 年秋開業予定の大型再開発「(仮称)札幌すすきの駅前複合開発計画」(地上18 階建て)を手掛けているほか、環境先進型の分譲マンション「(仮称)ブランズ新札幌」を開発するなど、注目度が高まる札幌市内でも積極的に開発事業を進めている。

 当社は「環境先進企業」を目指して、環境に配慮した事業展開を全国で進めているが、特に北海道では小樽市や松前町、釧路市などで風力発電や太陽光発電所を開発・運営しているほか、石狩市では再生可能エネルギー100%のデータセンターの開発を計画するなど、北海道を重点地域の1つとして事業を推進している。また、インバウンド需要が回復した国際リゾートのニセコでも「ホテルニセコアルペン」のホテルコンドミニアムへの建て替えを含む大規模開発計画「Value up NISEKO 2030」を進めている。

 全国の住宅地をみると都市中心部の希少性の高い立地や、交通利便性等に優れた周辺地域では地価上昇が継続するなど根強い需要がある。低金利環境の継続など政策面でも需要を下支えしている効果がある。また、商業地では都心部を中心に店舗の需要のほか、オフィス需要なども堅調で、地価上昇につながっている。インバウンド需要で地価が過熱気味だった都心部の地価がコロナ禍による需要喪失で下落する場面もあったが、一時的な現象と捉えており、「アフターコロナ」によるインバウンドの復活などで、都市中心部の地価回復は当面続くとみている。

 当社では今年11月に竣工する「Shibuya Sakura Stage」をはじめとする「広域渋谷圏」の100年に一度ともいわれる再開発を、東急グループで連携して進めている。再開発ビルの開発で渋谷のオフィス床面積の拡大や渋谷駅周辺のバリアフリー化を進め、渋谷の街の魅力向上に努めている。都心5 区ではオフィス賃料の下落、空室率の上昇などがみられる地域もあるが、当社の本拠地である渋谷はITやコンテンツ産業を中心にオフィス需要が旺盛で賃料水準も安定し、空室率も低い状態が続いている。

 中長期的な不動産市場については、足元では国際経済情勢などのマクロ要因などを注視する必要があるが、不動産市況は回復基調が続くだろう。中長期的には少子高齢化による単身世帯の増加や空き家問題、「働き方改革」によるオフィス環境の変化等、不動産市場を取り巻く環境の変化が続くが、国内外で環境への意識が高まるなか、今後の不動産市場では「環境」が大きなテーマになるとみている。

 当社では2月末時点で開発中も含め全国に86事業、発電能力を示す定格容量で1,405メガワット(一般家庭の年間電力使用量ではさいたま市とほぼ同程度の約67.6万世帯分)の再生可能エネルギー発電所を全国に有しており、この再エネ電気を活用して昨年末、保有する全244施設の再エネ化を完了した。すでにオフィス市場では外資系を中心に「再生可能エネルギーではないビルには入居できない」という企業も出てくるなど、世界的な環境意識の高まりが不動産市況にも影響を与えている。当社はハードだけでなく当社グループの持つ幅広い事業領域を生かしたソフトサービスという付加価値を組み合わせて事業展開を進めていくとともに、再生可能エネルギーの活用のほか、ZEBやZEHなど環境に配慮したオフィスビルやマンションの開発を進めるなど、今後も積極的に環境対応を進めていく方針だ。

 

 

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