吉田氏(ザ・オークラ東京で)
不動産協会は5月17日、定時総会後に「設立60周年祝賀会」を開催し、冒頭、新しい理事長に就任した吉田淳一氏(三菱地所会長)が次のように挨拶した。同協会のこの種のリアルでのイベントは4年ぶりで、約450名が参加した。
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本日(17日)、不動産協会理事長に就任しました三菱地所の吉田でございます。
不動産協会設立60周年祝賀会の開会にあたり、一言ご挨拶申し上げます。
本日は、公務ご多忙中にもかかわらず、斉藤鉄夫国土交通大臣をはじめ関係省庁の幹部の皆様、また日頃からご支援、ご協力をいただいております友好団体や報道関係の皆様、多数のご出席をいただき、まことにありがとうございます。
不動産協会は、この度設立60周年を迎えることができ、関係する皆様方のご支援に感謝申し上げます。不動産協会は、昭和38年3月に社団法人として発足しました。当時のわが国は、高度経済成長がスタートし、人口や産業の都市への集中に伴い、都市が大きく拡大し、不動産開発が活発になった時代でした。会員会社が行う事業の環境整備に資する活動をより効果的に展開するために、それまで任意団体として活動してきた不動産協会を社団法人化し、不動産事業に係る法制度や税制についての調査・研究や政策提言等の取組みを本格化させました。
その後、昭和50年代の安定成長期を経て、昭和の終わりから平成にかけてのバブル期とその崩壊により、右肩上がりの時代は終焉しました。平成に入ってからは「失われた20年」といわれる経済の低迷期を経て、アベノミクスによる経済回復がなされました。次には、コロナ禍により経済が落ち込みましたが、今はコロナとの共存により経済活動が正常化し、新たな飛躍に向けてのスタートを迎えています。そうした中で、不動産業は時代のニーズに応じ、魅力的なまちづくりや良質な住宅の供給により、都市再生の推進や優れた住環境の創出などを通じて、日本経済の発展に寄与してきました。
ロシアによるウクライナ侵攻は、いまだ終結の兆しがなく長期化しており、エネルギーや原材料をはじめ、インフレの進行に拍車がかかっています。金利の見通し、海外経済の下振れ懸念など、経済の先行きについては不透明な状況にあります。こうした中で、わが国の経済を力強い成長に導くためには、住宅・都市分野における事業推進を強力に図っていくことが不可欠です。
国際的な脱炭素化の動きが加速し、わが国でも2050年カーボンニュートラルの実現に向けたGXを促進する様々な施策が進められており、まちづくりにおいても炭素中立型の経済社会の実現に向けた取組みをしっかりと行うことが求められています。
環境政策においては、経済合理性・社会課題解決の同時実現が不可欠であり、GX推進に向けた加速を後押しする環境整備に取り組むことが大切です。
都市政策については、国際競争力強化を牽引する新たな都市再生を推進し、都市と地方のリンケージや好循環を生み出すために、質の高い都市緑地創出の推進、面的エネルギーネットワークの支援促進等が求められます。
ダイバーシティ・インクルージョンなまちづくりを推進するために、ウォーカブルな空間形成を図り、多様な空間の一体的な利活用、DX等の活用による持続可能なエリアマネジメントの着実な進展、少子化・子育てへの対応等に向けた諸課題への取組みが必要です。
住宅政策については、安心安全でサステナブルな暮らしの実現に向け、良質な住宅ストックの形成・循環のために、ZEHなど環境性能の高い住宅の供給支援が重要です。
併せて、区分所有法改正による合意形成の円滑化など、老朽化したマンションの建替えの促進、適正な管理の実現を図る取組みの促進も求められます。
また、防災性能の向上に向けた対応を行うほか、子育て世帯などへの支援措置の充実を図るとともに、在宅勤務等の新しい働き方への対応に関する支援が必要です。
不動産協会としては、これを機にさらなる活動の充実を目指し、わが国の経済・社会の発展に向けて貢献できるよう、全力を尽くしてまいります。
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総会では、前理事長の菰田正信氏(三井不動産会長)は会長に、新たな副理事長に松尾大作氏(野村不動産社長)が、副理事長の沓掛英二氏(野村不動産取締役)が顧問にそれぞれ就任した。
新たなスタートへカンパーイ!