クラウド録画サービスシェアNo.1のセーフィーは1月30日、記者発表会を開き、電源のみですぐに利用でき、屋外設置可能なLTE搭載クラウド録画型カメラ「Safie GO 360(セーフィー ゴー サンビャクロクジュウ)」を2024年2月1日から提供開始すると発表した。発表会では、顧客のアイダ設計建設本部部長・堀江久幸氏、清水建設建築総本部生産技術本部 生産技術開発センター デジタルマネジメントグループ主査・大垣博氏らが同社営業本部第2ビジネスユニット部長・渡部郁巴氏とトークセッションを行った。発表会には約40名のメディアが参加した。
「Safie GO 360」は現場の全景を俯瞰して撮影できることに加え、狭小地の撮影でも、焦点距離が近い対象物を歪みがなく明瞭に映し出すことが可能。過去の映像を振り返った時にも360°の上下・左右自由に動かせる画角により映像の隅々まで取り逃しがないことも特徴。また、現場監督や作業員自身が簡単に設置でき、都度の取り外しの手間やコストの削減にも繋がり、工程の進捗確認、順序の遵守有無などを遠隔から確認でき、現場訪問時間を大幅に削減できる。重さは約3.95㎏(金具含む)。
セーフィーは2014年設立のベンチャー企業。2017年にLTE搭載クラウド録画型カメラ「Safie GO」第一号を提供開始しており、テクノ・システム・リサーチ社の「ネットワークカメラのクラウド録画サービス市場調査(2022)」によると、この種のカメラ登録台数ベースシェアは56.4%のトップとなっている。
会見で渡部氏は「『Safie GO』は建設業界向けに数万台提供しており、スタンダードになっている。今年は2024年問題がスタートする。6月からは建設業などの時間外労働時間制限80時間/月が施行される。また、法令1万件のアナログ規制一掃に向けたデジタル化の取り組みも加速しており、マーケットは当社にとって追い風になっている。今回の商品はAIとの連携を視野に入れたデジタル化の入り口になるプロダクト」と語った。
堀江氏は、「導入時に7社製品と比較したが、クラウドで見ることができるのが決め手となった。現在では120拠点で採用している。戸建て現場は工期3~4か月で現場を訪問する機会は30~45回くらいある。電話でのやり取りが多くその無駄を省くことができ、全体分析もできるので効率化も図れる。職人さんなどは〝見られている〟という意識はあるだろうが、いたずらなどの抑止力にもなる」と話した。
大垣氏は、「『Safie GO 360』により従来製品では困難だった上下・左右の全方向映像を収めることができ、遠隔での現場確認をより効率的に進めることが可能になった。仕上げ工事中の天井や床下などの施工状況を1台のカメラで遠隔確認ができ、生産性向上に繋がることが期待できる」と語った。
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アナログ人間そのものの記者は話を聞きながら、この人間味など全くない不気味な魚の眼が省力化・省人化・生産性向上につながるのはよく分かった。法令1万件のアナログ規制撤廃は待ったなしだ。
同社は提供目標については非公表としているが、マーケットは年間1~2万台のようだ。
課題の一つは重さではないか。大垣氏は、現場担当者のヘルメットに装着すると話したが、重さ4キロ前後のカメラを頭に付けたら記者など1時間ももたない。慣れれば平気なのだろうか。
もう一つは、大垣氏も指摘したが、膨大な量の画像データを人が分析したら担当者の時短にはつながらないのではないか。AIとの連携が必至だ。そうすればほとんど瞬時に知りたい情報を得られのではないか。
社員・職人を監視することの懸念について質問したメディアの方もいたが、やろうと思えばできるだろうが、本末転倒だ。労使でそうならないようにしっかり契約すべきだろうし、そもそも社員・職人を信用できないような社長や上司は鼎の軽重が問われる。AIには経営陣の指示が適切かどうかを判定する権限を付与すべきだと思う。
記者は、法令違反・施工不良を防止することにつながるかどうか質問したが、大垣氏は「データは残るので、品質向上にはつながる」と答えた。
この意味はみんな考えないといけない。カメラは「事実」を正確に伝える。それを「是」とするのか「非」と判断するのか、問われるのはわれわれ人間の「視力」だ。