総合地所(事業比率非公表)と三交不動産(同)は4月10日、長谷工コーポレーションの新しい間取り提案「Be-Fit」を初採用した「ルネ松戸みのり台(マツドリームPJ)」のメディア向け見学会を行った。価格上昇・専有圧縮が続く中、建築コストを抑制しながら収納スペースを集約し、廊下収納などを提案することで限られた空間を効率的に利用できるようにしている。田の字型プランから脱却し、デッドスペースを生かすアイデアだ。劇的にヒットする可能性を秘めているとみた。販売開始は5月中旬予定。
物件は、新京成線みのり台駅から徒歩10分、松戸市稔台七丁目の準工業地域に位置する12階建て全173戸。専有面積は58.70~82.75㎡、予定価格は3,500万円台~7,200万円台(最多価格帯4,200万円台)、坪単価は230万円の予定。竣工予定は2026年1月。施工は長谷工コーポレーション。
現地は、駅前の商店街、戸建て住宅街を抜けた一角で、従前は聖徳大学学生寮。用途地域は準工業地域だが嫌悪施設はほとんどない。建物はくの字型で、南東向き(85戸)と南西向き(88戸)がほぼ半々。
主な基本性能・設備仕様は、ZEH-M Oriented認定、直床、リビング天井高2550ミリ(階数により異なる)、Low-Eガラス、浴室タオル掛けなど(食洗機、バックカウンター・収納などはアイセルコ対応)。共用施設はワークラウンジ、クリエイティブラウンジなど。
これまで資料請求は約250件、モデルルーム来場者は約60組。来場者の居住地は松戸市内が約80%、年代は30代の第一次取得層が中心。
「Be-Fit」の開発提案を行った総合地所分譲事業部の女性担当者は、「当社など長谷工グループ15名ほどのプロジェクトチームがあり、多様性が謳われる社会の中で、田の字型プランに追加して、お客さまの選択肢を増やす間取りを作りたい、という考え方から『Be-Fit』は誕生しました。モデルルームをオープンしたばかりですが、いい評価をいただいている」などと語った。
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20数年前だ。当時、需要を喚起する〝タレントマンション〟が流行しており、大成有楽不動産(当時有楽土地)・平和不動産「ティアラシティ」(279戸)はオードリー・ヘプバーンを起用した。販売事務所からパンフレットの袋にいたるまですべてピンク色に統一され、ヘプバーンのテレホンカードも来場者にプレゼントされた。記者も2枚もらった。その効果は絶大で、駅から10分以上あったにも関わらず人気となった。故人であるため、肖像権は格安だったことを関係者から聞いた。
どうして、ヘプバーンを持ち出したか。今回の分譲マンションは、この「ティアラシティ」に近接しているからだ。現地も見学会前に確認した。準工地域だが嫌悪施設はなく、まずまずの立地だった。ただ、このところ新京成線や東武スカイツリーラインなどでは坪200~250万円の物件がかなり供給されており、販売は容易ではないと判断した。完売まで3年はかかるだろうと考えた。
「Be-Fit」も報道で知っていた。もはや常識の収納を集約した「Large-Storage(ラージ・ストレージ)」や「Out-Frame(アウトフレーム)」が強調されており、その効果は限定的と思っていた。
女性担当者の話を聞き、モデルルームの玄関・廊下の「Fit-Zone」を見てびっくりした。記者は廊下幅をメーターモジュールにすべきというのが持論なのだが、なんと通常の廊下幅930ミリに収納スペース奥行き幅450ミリを足した幅1,380ミリもあるではないか。
「Fit-Zone」の奥行き450ミリの分だけ居室面積は狭くなるが、玄関・廊下の空間は劇的に広くなる。その価値は天井高2100ミリ×幅1365ミリ×奥行き450ミリ=1.29㎥だ。同社の「アイセルコ」も利用できるので、35年ローンで月額601円だ。酒1合より安い。現金で購入することも可能で、その場合は24万円。背面支持金具と棚板は自由自在に移動することができる。女性担当者も「来場者に評価されている」と話した。爆発的にヒットするかもしれない。
似たものでは、ポラスの実用新案取得済みでキッズデザイン賞を受賞した「AKUNDANA(アクンダナ)」がある。これは可動式なので、奥行きはそれほどなく、重いものは置けない。コスモスイニシアもマンションや戸建ての〝魅せる玄関〟に力を入れており、大きな支持を得ている。