大東建託は5月2日、2024年3月期決算を発表。売上高1兆7,314億円(前期比4.5%増)、営業利益1,048億円(同4.8%増)、経常利益1,087億円(同4.6%増)、純利益746億円(同6.1%増)と増収増益。売上高は過去最高。
セグメント別では、建設事業は工事が順調に進捗し、価格改定効果などにより売上高4,924億円(同7.2%増)、営業利益289億円(同35.5%増)。不動産事業は一括借り上げ物件の増加などにより売上高1兆1,291円(同2.4%増)、営業利益820億円(同0.6%増)となった。受注単価は1億3,667万円(同1,729万円増)、受注ルートはリピートが70.4%(同4.4ポイント増)、新規が29.6%(同4.4ポイント減)、入居者斡旋件数は337,611件(同1.1%減)、居住用入居率(家賃ベース)は97.9(同0.1ポイント減)、2023年度の貸家着工戸数340,395戸に占める同社のシェアは12.6%(同0.8ポイント増)、戸当たり家賃は66,273円。
その他の事業は、マレーシアホテルの稼働率の改善、投資マンションの販売戸数、ビルドセットおよびリノベーション・再販の販売棟数が増加したことなどにより売上高1,098億円(同15.6%増)、営業利益206億円(同36.6%増)となった。
当社はまた、今年創業50年を迎えたことから、次の100年へ向けたグループパーパス「託すをつなぎ、未来をひらく。」を策定。中期経営計画(2024~2026年度) として売上高2兆円、営業利益 1,400億円、ROE 20%、配当性向50%などの数値目標を公表。従業員へ譲渡制限付株式の付与、全商品のZEH化などのSDGsの推進・社会課題への対応、3年間で1000億円の不動産投資、北米買取リノベ再販事業へ着手するなど、積極的に事業展開し2029年管理戸数を世界一の150万戸(現在134万戸)に拡大することを目指すと発表した。
2025年3月期予想は売上高1兆8,200億円(前期比5.1%増)、営業利益 1,100億円(同4.9%増)、経常利益1,130億円(同3.9%増)、純利益760億円(同1.8%増)。年間配当金予想は前期比50円増配の575円。
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同社の決算発表・説明会に初めて参加した。増収増益は想定内だった。市場を反映した数値だと思う。住宅着工戸数は社会経済状況の変化などから縮小しており、令和5年度の総数は前年度比7.0%減の約80万戸となった、とくに持家は前年度比11.5%減の約22万戸、分譲住宅は9.4%減の約24万戸と落ち込んだが、賃家は2.0%減の約34万戸にとどまっている。同社が主力とする「賃貸」はオーナーの相続・節税対策などから堅調に推移しているとみることができる。質の悪いものは市場から排除されるが、その都度、新たに建て替えられる、スクラップ&ビルドが健在なのが賃貸市場の特徴のようだ。
資材高騰、24年問題などはあるが、決算発表・説明会に臨んだ同社社長執行役員 CEO・竹内啓氏は「相続税がある限り、賃貸はそれほど落ち込まない。市場は二極化している」と話したように、エリア特性に適切に対応するなどして、今後も価格転嫁は進むと見た。竹内氏は「世界一の賃貸管理戸数150万戸」達成に自信も見せた。
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記者は、全国セーフティネット住宅の登録戸数895,982戸(3月19日現在)に占める同社の登録戸数855,483戸(比率95.5%)について質問したかった。先日、ある地方自治体の担当者の方から匿名の手紙が届いた。手紙の冒頭には「制度の目的と実態の乖離がひどく疑問をもちながら業務に当たっているなかネットで牧田記者のこだわり記事を拝読し…住宅確保要配慮者の住まい確保に有効な制度になるよう発信をお願いします…このシステムは住宅確保要配慮者の空き家探しには全く役立たない…」とあった。
決算説明会出席者がセーフティネット住宅について質問することを期待はしていたのだが、そんな人などいるわけがない。説明会の趣旨、アナリスト、メディアの取材目的を考え、だんまりを決め込んだ。質問すれば、全員から白眼視されるのは目に見えている。
竹内社長、国や自治体関係者の皆さん、業界の皆さん、そしてアナリストやメディアの皆さん、この現場担当者の悲痛な声にきちんと向きあっていただきたい。