住友不動産は5月9日、2024年3月期決算を発表。売上高は9,676億円(前期比3.0%増)、営業利益2,546億円(同5.6%増)、経常利益2,531億円(同7.0%増)、純利益1,771億円(同9.4%増)となり、営業利益、経常利益、純利益はいずれも過去最高を更新(営業利益2期連続、経常利益3期連続、純利益11期連続)した。東京のオフィスビルを中心とした不動産賃貸事業と、分譲マンションの引渡し戸数が増加した不動産販売事業がともに最高益となり業績を牽引した。
セグメント別では、賃貸事業は売上高4,444億円(前期比190億円増)、営業利益1,765億円(同108億円増)と増収増益。既存ビルの収益改善と、ホテル、イベントホールなど施設営業分野の回復が業績に寄与。売上、営業利益ともに過去最高を更新した。ビルの空室率は6.9%(前期末6.0%)。
不動産販売事業は、売上高2,412億円(同191億円増)、営業利益602億円(同6,2億円増)と増収増益。マンションと戸建ての契約戸数3,524戸(前期比+563戸)。次期計上予定戸数3,500戸に対しする期首時点で約90%(前年約90%)が契約済み。完成在庫は竣工1年超が771戸(前期末比57戸増)、竣工1年内が782戸(同281戸増)。
完成工事事業部門は、売上高1,945億円(同8,1億円減)、営業利益208億円(同5億円減)と減収減益。受注棟数は「新築そっくりさん」事業が6,947棟(前期比849棟減)、注文住宅事業が2,222棟(同151棟増)。
不動産流通事業部門は、中古マンションの仲介件数は31,502件(前期比3,404件減)、取扱高1兆3,928億円(同32億円減)と減収となったが、足元は回復の兆しがみえるとしている。
2025年3月期予想は、売上高1兆円(前期比3.3%増)、営業利益2,670億円(同4.8%増)、経常利益2,650億円(同4.7%増)、純利益1,900億円(同7.2%増)。年間配当は70円(前期60円)と増配を予定。
決算説明会で、含み益のあるビルなどの売却はあるかの質問に対し、同社は「例えば100で購入した物件が、時価で200、利益は毎年10出ているとして、売却してしまえば、同じ物件を新たに100で仕入れることはできません。一過性の利益は得られますが、毎年の収益はなくなってしまいます。そのため、我々のような賃貸資産で収益を上げるビジネスモデルでは、売却による含み益の顕在化に意義を感じておりません。230棟ものビルを運営する中、物件を保有し続けることによる事業性や効率は常に考えており、過去を含めてビルを一棟も売却していない訳ではありませんが、持続的な成長を経営方針に掲げる当社としては、含み益を顕在化するために売却し、一過性の利益を得て収益を先取りする手法は考えておりません」と答えた。
不動産仲介部門が減収減益になったことに対しては「不動産仲介部門は、チラシやDMを廃止し、旧来の集客方法から脱皮して新たな取り組みとともにマーケットに立ち向かうという過渡期でもあります」と回答している。