「HARUMI FLAG」の板状型計上戸数は2,690戸で東急不動産の持分は12%-これまで杳として知れなかった「HARUMI FLAG」の事業主10社の持分のうち、東急不動産は12%であることが分かった。5月10日行われた同社の2024年3月期決算説明会で担当者が明らかにした。幹事会社の三井不動産(レジデンシャル)は「非開示情報なのでコメントできない」としている。
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この日(10日)、記者は午前中の旭化成ホームズ、午後は東急不動産ホールディングスの決算説明会を取材することになっていた。旭化成ホームズの決算説明会はこれまで何度も取材しているが、東急不動産HDは、国土交通省記者会で開催するので取材を申し込んだ。
同省記者会を訪れるのは、耐震偽装にかかわる記者会見が行われたとき以来だから20年ぶりくらいだった。なつかしさかこみあげてきた。
遅行指標の決算数字は予想されたことであるので、説明を聞いてそのまま帰ろうと思っていた。ところが、決算短信の「当期の分譲マンションは、『HARUMI FLAG』(東京都中央区)、『ブランズタワー大阪本町』(大阪府大阪市)を新規竣工引渡物件として計上した他、…」が目に留まった。
そこで、ダメもとで次のように質問した。「『HARUMI FLAG』の計上戸数は何戸で、金額はいくらか、御社の持ち分比率は何%か。それと、都との契約では、利益が計画を1%でも上回った場合は協議を行い、利益は折半することになっているが、協議は行ったのかまだなのか」と。
すると、同社担当者は「HARUMI FLAG」の板状型計上戸数は2,690戸で、持ち分は12%であると回答した。金額や都との協議については「担当者レベルではわかっているはずだが、ここではよくわからない」とのことだった。
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これで十分。質問した甲斐があった。「HARUMI FLAG」の事業主は幹事会社の三井不動産レジデンシャルを筆頭に、三菱地所レジデンス、野村不動産、住友不動産、東急不動産、東京建物、大和ハウス工業、住友商事、NTT都市開発、日鉄興和不動産の10社だ。
東急不動産の持分が12%ということは、10社が均等割りでないことは容易にわかる。記者は同社と三菱地所レジデンス、野村不動産、住友不動産、東京建物は同じ比率、つまり12×5社=60%だろうと読んだ。三井不動産はこの4社を差別することなど絶対にないと断言できる。
幹事会社の三井不動産レジデンシャルはその働き、貢献度からして最低で20%だと読み、30%はないだろうから約25%と踏んだ。切りのいいところで24%とすれば、残り16%を4社で割れば4%だ。これまた、三井不動産はこの4社を平等に扱うはずだ。同社のさすがなのはこういうところに表れる。
この数値を板状型計上戸数2,690戸、1戸当たり平均価格7,500万円に当てはめれば、東急不動産は約323戸、242億円だ。同社の「住宅」セグメント売上高1,882億円(前期は1,463億円)の12.9%、「住宅その他」の計上戸数987戸(同508戸)の32.7%が「HARUMI FLAG」であると推測される。「HARUMI FLAG」は少なからず同社の売上げ、利益に貢献していることが分かった。
これで取材の目的は達せられたのだが、この数字を補強するため、予定に入っていなかった三菱地所と三井不動産の決算説明会の取材を急きょ申し込んだ。
快く(そうでなかったかもしれないが)受け入れていただいたので、東急不HDに対する質問と同じ質問をした。三菱地所は「確認します」「幹事会社の三井さんに聞いていただきたい」との回答で、三井不動産は「事業会社の持ち分比率は非開示」「都との契約についても非開示」とのことだった。もう1社にも電話で「公表できるのであれば教えていただきたい」と聞いたら「三井さんに聞いてほしい」とのことだった。
都との協議に入るかどうかは、まだタワーマンションの引き渡しが済んでいないので決まるのは来年度以降になるのではないか。九分九厘、利益折半になると読んだ。