日本ツーバイフォー建築協会(会長:池田明・三井ホーム代表取締役社長)は6月13日、定時総会後に記者会見を行い、能登半島地震では地盤崩壊、液状化を除く強震変形による2×4住宅の被害は全壊、半壊、一部損壊ともゼロであったことを報告し、厳しい状況が続く住宅着工でも健闘しており、持家におけるシェアは20年前の約2倍、12.9%となり過去最高を更新したと発表した。池田会長は次のように述べた。
先の能登半島地震では大きな被害が発生したが、一方で2×4住宅については、当協会会員の独自調査(6社1,120棟)によると、震度6弱以上の地域では地盤崩壊と液状化を除いた強震変形による被害は1,111棟のうち全壊、半壊、一部損壊ともゼロという結果になった。改めて2×4住宅の優れた耐震性を確信するとともに、今後とも2×4住宅の供給を通じて、安全・安心な住まいを広める責務を果たしていく。
2023年度の住宅着工戸数は約86万戸で前年度比7%減少となった。特に持家は4月までの集計で29か月連続して前年同月比マイナスとなっており、大変厳しい状況が続いている。
一方、2×4住宅の着工は91,647戸で、対前年度比横ばい、全住宅着工に占めるシェアは11.5%、前年度に比べ0.8ポイント増加した。また2×4住宅の持家シェアは年々増加しており、20年前の6%から昨年度は約2倍の12.9%となり過去最高を更新した。ユーザーの皆様に支持されていると考えている。
住宅用途以外の2×4設計、建築についても、当協会の調査によると着工件数は前年度比7%増加した。性能面の高さに加え、生産性、施工性の高さ、木の建築として環境にやさしいことなどが評価されている。引き続き2×4による中高層、大規模建築の建築を強く推進していく。
また、今年度は2×4工法オープン化50周年に当たる。本日の講演会やポスターの制作など周辺事業を順次進めていく。
カーボンニュートラルの実現を目指すわが国において、建設時や建物維持におけるCO2排出量が少ない木造建築である2×4建築の供給を通じて、脱炭素社会の実現に貢献することを重要な使命と考え、引き続き普及発展に努めていく。
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質疑応答では、持家着工戸数の減少が続いていることに対する質問が相次いだ。これに対して、池田会長、副会長の蓮井美津夫氏(イワクラホーム代表取締役社長)、倉田俊行氏(ウイング代表取締役社長)、細谷惣一郎氏(三菱地所ホーム代表取締役社長)は、土地、資材、物価高などによる一次取得層の取得環境の悪化、コロナ禍による価値観の変化、資産性、コストパフォーマンス(コスパ)を重視する最近の傾向などが背景にあると答えた。
この種の質疑応答は、意見を言う場ではないので記者は黙って聞いていた。持家の着工減は繰り返し質問が飛び、同じような答えが返ってくる。もう聞き飽きた。耳にたこができるくらいだ。
しかし、どことは言わないが、厳しい環境下でも業績を伸ばしている会社はある。持家はアッパーミドル、富裕層にターゲットを切り替えるとか、持家がだめなら貸家、分譲にシフトしたり、他の事業を伸ばしたりするなど対応策はあるはずだ。
もう一つ、これは2×4協会だけではなくプレハブ建築協会、日本木造住宅産業協会などの会合・記者会見でも感じるのだが、どこも基本性能やコスト、工期、環境性能などしか話題に上らない。木造でいえば、鉄やコンクリとの比較だ。性質、特徴が異なるのに比較してどうなる。
記者は違った見方をしている。それは何よりも「住宅」と不可分な外構=みどりだ。しつこいほど「みどり」について記事を書いてきた。高級住宅地やポテンシャルの高い街は間違いなく「みどり」が豊かだ。ぺんぺん草も生えない狭小で貧しい住宅が隠花植物のようにはびこっているのに、みどり環境について質問する記者などいないし、主催者側も話さない。資産性=駅からの距離に矮小化する論議に辟易している。
先月、三鷹市の任意団体・ミライアクションみたかが主催した講演会で、千葉大学名誉教授・藤井英二郎氏は「強剪定された街路樹は委縮した心と社会の表れです。だから、木とお互い様だよ、共認している生き物としての感覚でいえば、涼しくもなるし、心も豊かになる。そういう社会を目指そうじゃありませんか」と話した。講演後の拍手が鳴りやまなかった。アンコールを求めるコンサートのようだった。
これがヒントだ。荒んだ世の中に逆らうことも掉さすこともせず、病葉のように身をまかせる-このような意識が蔓延しているような気がしてならない。かくいう記者もそうだが…。