RBA OFFICIAL
 
2024/08/07(水) 08:04

築60年、既存不適格、借地権…難問クリア 空き家リノベラボ「house matsubara」

投稿者:  牧田司

IMG_0792.jpg
「house matsubara」

 Japan.asset management(Jam)は8月5日、空き家リノベラボ「house matsubara」を公開した。「築60年・既存不適格・借地権付き・検査済証なし」という厳しい条件が付いている空き家をJamが借り上げ、オーナーと共同投資により1階を店舗に、2階を住宅にコンバージョンしたもの。参加者全員に自家製漬け込み酒サワーなどが無料で供された。

 物件は、京王井の頭線東松原駅から徒歩4分、世田谷区松原6丁目の第一種低層住居専用地域に位置する建築面積33.12㎡、延床面積62.38㎡の木造2階建て。築年数は60年(昭和38年)。改修竣工は2024年3月。

 プロジェクトメンバーは、企画・設計:Jam、BIM設計:MAKE HOUSE、リーシング:omusubi不動産、底地権アドバイザー:市萬、施工:Rrise、テナント運営:Botany。

 プロジェクトスキームは、Jamが建物オーナーと期間8年間の定期賃貸借契約を結び、Jamは転借人Botanyと契約期間3年間(再契約可能)の定期賃貸借契約(転貸)を締結。賃料の20%~40%程度を建物オーナーに固定賃料として支払う。工事費は700万円程度。

IMG_0793.jpg
店舗エントランス

IMG_0773.jpg
天井

IMG_0777.jpg IMG_0786.jpg
文様入り窓ガラス(左)と配電用碍子

◇        ◆     ◇

 公開されたのは1階の店舗部分で、面積は1低層地域で許可される50㎡未満。耐震補強を施し、床を撤去し土間空間とすることで天井高を3m近く確保。ガラス窓、柱、梁、天井板、配電用碍子など一部は従前のものを使用、デザインとして取り込んでいる。

 店舗はカフェ&バーで、コーヒー、ティーのほかクラフトソーダ、クラフトフルーツ、30~40種の自家製漬け込み酒サワーなどが提供される。

 この日は、1杯無料ということだったので、記者はアフリカ産ハニーブッシュサワーを頂いた。アルコール度数は4%。値段を聞き忘れたが、病みつきになりそうだ。昨年、三菱地所ホームの「KIGOCOCHI(キゴコチ)」ショールームで頂いた「KAMOSHIKA Drinks(カモシカ飲料)」と少し似ていた。

IMG_0780.jpg
Botanyさん

◇        ◆     ◇

 Jamのホームページにはオーナーへのインタビュー記事も紹介されている。一部を紹介する。

 オーナーKさん:母が相続した家になります。元々、祖父母が建てた戸建住宅で、母も結婚までの少しの間住んでいたそうです。やがて祖父母が亡くなって、おじが引き継いで暮らしていたのですが、そのおじも高齢で使わなくなり、2018年ごろ空き家となりました。 

 -ちょうど昨年末に空き家特措法が改正されて、維持管理の不十分な空き家に対して固定資産税の軽減措置を外すことも含めて指導が入るようになったばかりですね。税負担リスクについてのご相談が増えているので、法改正が意識改革にはなっているようです。

 Kさん:まさに意識改革になっていましたね。一番初めは、借地権自体が売れないかと考えました。借地権の更新料が結構大きな金額でしたから、更新前に手放すことも考えていたんです。色々と売却の可能性を探ったのですが、なかなか欲しいという方がいらっしゃらず、話がまとまりませんでした。

 それで他に使い道がないかなということでインターネットで調べて、せたがや空き家活用ナビに相談してみました。すると複数社からお声がけがあり、具体的な提案までいただいたのは御社含めて2社でした。

 もう一社の提案は、10年借り上げで家賃収入が月5000円ほどという条件で、お断りしました。5000円だと保険料もまかなえないですし、ましてや借地料などという金額でさすがに現実的ではない。「10年後に家が返ってきます」というお話だったのですが、私は正直この家が10年後あるのかどうかもわかりませんでした。10年先の未来を見いだせなかったんですね。

 その後、話だけでもと思って御社に相談したんです。初めの提案では、自分の持ち物件として空き家を活用していただくならものすごく良いビジネスだなと思いました。ただ私たちの場合、借地権の更新料と内装造作の費用を地主さんにお支払いしたばかりで、毎月の借地料という負担もあるという、そこからのスタートです。なので、空き家の状態が悪く改修費がかかるとはいえ、提案された初期投資額を負担に感じました。もちろん、毎月の家賃をいただけて8年後にはお返しいただけることについては魅力的だなと思っていました。

 なので、借上期間中のメリットがもう少しあればというところだったのですが、その後臨機応変に改修内容や負担区分を調整していただけて再提案いただいたので、「これであれば空き家のままにしておくよりは」と思って進めることにしました。

 −実際に出来上がってみていかがですか?

 Kさん:今回このように再生してもらってびっくりしました。 こんなに変わるのかというぐらい変わっていました。築60年の建物が再生されて次の方に引き継がれて使っていただけるんですから、私としては本当にやってよかったなと思います。 

木質化PJ「KIGOCOCHI(キゴコチ)」マンションリフォーム提案三菱地所ホーム(2023/10/14)

 

 


 

 

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン