三菱地所レジデンスは8月29日、メディア向け事業説明会開催し、今年還暦を迎えた同社代表取締役社長執行役員・宮島正治氏(60)は、入社以来ほとんど住宅畑を歩み続けたことについて「とてもよかった」と振り返り、今後の展開について「マンションのお客さまからも施工会社からも『選ばれ続ける』姿勢を貫いていく」と語った。また、説明会後に行った約1時間30分の立食形式の懇談会では、メディアからのストレートや変化球にはもちろん、記者が投じた危険球をさらりとかわし、一つ一つ丁寧に答えた。
宮島氏は昭和62年(1982年)入社。最初に配属された第一住宅部では同社の記念碑的マンション「パークハウス多摩川」(全9棟575戸)を担当し、その後、様々なソリューションを提案するパートナー事業部にも一時籍を置いたが、「ずっとマンションをやってきてよかった。平成26年からは約5年間、住宅業務企画部長として経営にも携われたのはとても勉強になった」とこれまでの歩みについて語った。
平成23年(2011年)の東日本大震災を経験し、また、三菱地所、三菱地所リアルエステートサービス、藤和不動産の住宅事業の統合により、三菱地所レジデンスが誕生したことは大きな転機になり、「団結力が強まった」と述べた。
現在のマンション市場ついては、超富裕層は所有することのステータス性(メリットからベネフィット)、よりよい住環境(眺望、利便性、歴史など)、近しい価値観の共有、資産の分散を志向する傾向が顕著で、実需層はバブル崩壊やリーマン・ショックの経験がないことなどから、住宅価格が下落する不安より資産性を重視し、パワーファミリー(共働きによる収入と、買い替えなどによる売却マンションの差益)が増加していると説明。
今後の同社の展開については、「分譲マンション事業の売り上げ構成は約6割。これからも戸数を追わない。当面は年間2,000~2,500戸販売できるよう仕込んでいく。地価上昇、建築費上昇を見込んだ商品企画が重要となる。収益を圧迫しないよう心がけていく。再開発にも力を入れていく」と話した。最上級ブランドの「ザ・パークハウス グラン」は地方での展開もあり得ることを示唆した。また、顧客はもちろん、施工会社とのパートナーシップを重視し「選ばれ続ける姿勢を貫く」と強調した。
その他4割の比率となっている事業については、賃貸の「ザ・パークハビオ」が調整弁的な働きをしており、今後も利益を確保するため拡大していく姿勢を示し、このほか有料老人ホーム、学生マンション、リノベーション、ホテルコンドミニアムなどメニューを揃え、多角的に展開していくと話した。
記者は「富裕層がステータス性を重視するというなら、大・丸・有にマンションを分譲したら坪単価5,000万円か、それ以上でも売れるのではないか」と牽制球を投げたら、「区分所有者の街づくりなどへの反対リスクを考えると難しい」とかわした。