総事業費が6,000億円で、第1期の「グランフロント大阪」を含めると1兆円超の大阪駅北口再開発事業「うめきた2期」である「グラングリーン大阪」の先行街びらきが9月6日行われるが、街びらきに先立つ9月3日、その全容がメディアに公開された。素晴らしいの一言だが、その前に、関係者もわれわれメディアも住民も考えないといけない問題を提起する。
「うめきた公園」についてだ。関係者とメディアで総勢数百人が参加したこの日(3日)、主催者は「大阪最後の一等地の開発」「公園の中に街をつくる」「東京丸の内とおなじ大きさ」「世界的に珍しい駅前公園」などと〝自画自賛〟した。
記者は、「世界的に珍しい」については、海外の公園は全く知らないので留保するが、素晴らしい公園であることに異論はない。
考えないといけないのは、そんな素晴らしい公園であるにも関わらず、専門家の評価はそれほど高くないということだ。大阪市は昨年12月、「大阪市公園及びその他施設指定管理予定者選定会議」で「うめきた公園」の指定管理者として事業者9社で構成される一般社団法人うめきたMMOを選定した。別表に示したように、大阪公立大学大学院農学研究科教授・加我宏之氏、和歌山大学経済学部教授・足立基浩氏、公認会計士・生野徳彦氏の3氏の審査委員による評点は100点満点で77点だった。
記者は、つい先日までこの評点を知らなかった。皆さんは100点満点で77点をどう評価されるか。記者の小中学校時代の通信簿は相対評価だったので、77点は5段階評価で「5」にはならないし、環境評価でよく用いられる「S」ランクでもなく、飲食店の「松竹梅」の「竹」で、宅建試験の合格ラインでしかないと思うがいかがか。
公園の設計は日建設計、三菱地所設計で、施工は竹中工務店だ。これ以上ないメンバーだ。安藤忠雄氏も関与している。しかも、国際的な環境評価制度で「Sランク」を取得しているにも関わらずだ。内覧会でこの点を質そうと手を挙げたが、指名はされなかった(メディアは200人くらい参加していたのではないか)。
誤解がないよう断っておくが、記者は評点が低いことだけを問題にせよとは考えていない。都市計画や造園の専門家などの意見は尊重しないといけない。なぜそのような評点になったかは審査委員の方々はきちんと述べられているはずだ。意見を公表せず、委員の方をA、B、Cと記号化し、結果として「質の高い公園マネジメントの展開が期待できる」「地域全体の賑わいが創出できる」「収支計画の考え方が明確に示されている」と結論付ける傲岸不遜の市の姿勢を問いたいのだ。ただ意見を聞く置くだけというこの種の審議会や委員会制度にも問題があるが…。
そして何より問題なのは、77点の評点に対して地元のメディアはなにも伝えていないのではないかということだ。メディア・リテラシーが問われる。
この日(3日)、ばったりお会いした千葉大学グランドフェロー・池邊このみ氏にこの点について聞いたら、「詳細な評点が分からないが、指定管理者制度では80点以上、Sランクを取得しないといけない」と語った。池邊氏は、UR都市機構が平成30年に「うめきた2期」の事業者を決定した審査委員会(委員長:西尾章治郎・大阪大学総長)の委員の一人だ。「うめきた公園」のランドスケープデザインを〝絶賛〟した(詳細は別稿)。
「LEED-NDプラン認証」と「SITES予備認証」を同時取得「グラングリーン大阪」(2024/7/17)
「グラングリーン大阪」9月6日まちびらき うめきたMMOが公園指定管理者に決定(2024/2/27)
〝ぶっ飛んだみどり〟だけでない 「グラングリーン大阪」タワマンに絶句(2023/10/12)