コスモスイニシアが分譲中のリノベションマンション「ロワ・ヴェール学芸大学」を見学した。専有面積200.92㎡(60坪)で価格は22,800万円(坪単価375万円)。東京建物がバブル期に分譲した数少ない〝億ション〟の「ロワ・ヴェール」シリーズの一つだ。リノベに際しても〝本物〟にこだわっており、坪単価は信じられないほど安い。
物件は、東急東横線学芸大学駅から徒歩14分、目黒区目黒本町2丁目の第一種中高層住居専用地域(建ぺい率60%、容積率200%)に位置する4階建て全13戸の「ロワ・ヴェール学芸大学」の1階部分。専有面積は200.92㎡で価格は22,800万円(坪単価375万円)。分譲会社は東京建物、竣工は1989年5月。施工は西松建設。当時の価格は39,002万円(177㎡)~68,877万円(202㎡)。リフォーム・リノベーションは2024年7月。
現地は、中層マンションが建ち並んでいる住宅街の一角。物件は駅からはややあるが、近接する「清水池公園」のバス停からは目黒駅まで14分。バス利用だと、学芸大学駅まで歩くうちに目黒駅に着く。「清水池公園」へは徒歩1~2分。
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同社広報のMさんから見学のお誘いがあったとき、200㎡の広さで坪単価375万円の〝安さ〟もさることながら、「ロア・ヴェール」のブランドに興味が惹かれた。Mさんは「ロワ・ヴェール」を調べて知ったそうで、同じ広報担当のOさんも、物件を案内していただいたOさんも竣工した年は生まれる前のはずで、同業の記者Fさんも知らなかったそうだ。東建も野村均社長ら役員以外は「ロワ・ヴェール」を知らないだろうから、少し長くなるが説明しよう。
物件が竣工したのは平成元年(1989年)5月。バブルの絶頂期で、「『億ション』と呼ばれる超高級マンション分譲事業にも進出し、1989(平成元)年から『ロワ・ヴェール』シリーズとして展開しました」(東京建物ホームページ)とあるように、東建が〝億ション〟市場に参入した年だ。第一号が「学芸大学」だったか「表参道」だったかはわからないが、設備仕様レベルが最高に素晴らしかったのを覚えている。全戸に1台以上の駐車場を設けたのが人気になった。
なぜ、レベルが高かったか。東建が億ション市場に参入したのは後発だったので、レベルを上げて差別化を図ったのだろうと思う。当時、億ションブランドとして圧倒的な存在感を示していたのが大建ドムスや東高ハウスだった。1988年竣工の「ドムス南青山」の最高価格44億円は、2016年分譲の三井不動産レジデンシャル「パークマンション檜町公園」の55億円(坪単価3,129万円)に抜かれるまで28年間、最高値であり続けた。
平成2年(1990年)9月にバブルが突如崩壊し、その後、「ロア・ヴェール」は1物件も供給されておらず、トータルしても「荻窪北」「市ヶ谷佐内町」など数件しかないはずだ。その意味で、「学芸大学」は数少ない東建の〝ヴィンテージ〟マンションの一つだ。
何が素晴らしいか。写真を見ていただきたい。外観は本物の御影石ではない擬石だが、周辺のマンションと比べて突出して存在感を示している。
エントランスホールの壁はトラバーチン(当時はそんなに珍しくなかったが)。リノベ住戸内も出窓のカウンターなどはトラバーチンが採用されており、玄関収納は無垢材、61畳台のLDKの床は30cm幅のオーク材、2か所あるトイレはTOTOの最上級、建具・ドアの把手には真鍮、壁は砂壁調のクロス、ラグジュアリーホテル並みの洗面室、中庭付き…。難点といえば、天井高が2400ミリで、窓は単板ガラスであることくらいだ。
さて、冒頭に「坪単価は信じられないほど安い」と書いたが、念頭にあるのは、この仕様レベルでいま新築マンションを建てたらいくらになるかだ。坪1,000万円は無理だろうが、坪700万円はくだらないはずだ。つまり、坪375万円は新築の半値に近いと読んだからだ。ありえない価格だ。面積が広いのでグロスは張るが…本物の価値が分かる人にアピールできるかどうか。内覧には十数組が訪れているという。