トータルフューチャーヘルスケア共同プレス発表会(帝国ホテルで)
「急変の早期発見」「軽症での早期発見」社会実装へ-YKK AP、大東建託、NTT ドコモ・ベンチャーズ、中部電力の事業パートナー4社は10月4日、プレス発表会を開催し、イーソリューションズ子会社のトータルフューチャーヘルスケア(TFH)への出資を通じ、生活空間で発生する転倒などの急変や、認知症などの疾患リスクの早期発見モデルの社会実装に取り組む業界横断のプラットフォームを発足すると発表した。プレス発表会にはメディア約65人、関係者約50人が参加した。
プラットフォームを立ち上げたのは、転倒は、つまずきによる転倒だけでなく、脳卒中や心筋梗塞などの疾患起因による意識障害や、認知症やフレイルなどの心身の変化の兆候としても現れ、多くが生活空間で発生しており、寝たきり状態になるケースも多いことから、疾患リスクを早期発見できれば、医療費・介護費などの社会コストの削減に寄与できる可能性があるとしている。
早期発見モデルは、世界最先端技術を有するVayyar Imaging Ltd.(Vayyar)、Binah.ai Ltd(Binah)、PST(PST)ら技術パートナーと提携して、優先的な実施権を持つTFHが開発する。技術パートナーは提携協議を進めている3社も含め今後も提携企業を増やしていく計画。実証協力機関は慶應義塾大学医学部。
主催者を代表してイーソリューションズ代表取締役社長・佐々木経世氏は、家で起きる転倒事故(年間743万件、死亡者数19万人)が多い現状や、認知症(潜在患者数1,002万人)、糖尿病(同2,469万人)、高血圧(同4,140万人)の受診率はそれぞれ12%、14%、43%にとどまっている深刻な状況を紹介し、「心疾患、脳血管、高血圧、糖尿病など8大疾患を早期発見すれば、医療費、介護費などの社会コスト(104.6兆円)は最大で13兆円削減できると予測されている。このような心強いパートナーに恵まれ、日本の未来のために一緒に取り組めることにわくわくしている」とあいさつした。
事業パートナーで、各企業との連携を促進する商社的な役割を担うYKK AP代表取締役社長・魚津彰氏は、同社の樹脂サッシ出荷量は12年間で5倍に拡大したことを紹介し、今回の事業では「2025年に実証実験のため社員寮を建設し、TFHなどと共同研究し、新たな商品開発につなげる」と語った。
大東建託代表取締役社長執行役員CEO・竹内啓氏は、2024年度を初年度とする中期経営計画で「託すをつなぎ、未来をひらく。」をパーパスに掲げたことを紹介し、「当社らしい街づくりを実践する『DKミライサークル』では、会員130万人のアプリ『ruum』と連携させて、賃貸住宅居住者225万人、介護関連施設179施設での実証実験と共同研究を進め、課題解決を目指す」と話した。
1億人超の利用者がいるNTT ドコモ・ベンチャーズ代表取締役社長・前田義晃氏は「今回の業界横断の事業では通信環境整備を支援し、加えて、ドコモのヘルスケア基盤と『Well-being 推定AI』を活用し、早期発見プラットフォームと連携することで疾病リスクの早期発見に貢献していく。医療・ヘルスケア分野のデジタルによる改革は不可欠」と述べた。
中部電力代表取締役社長・林欣吾氏は、電力スマートメーターで計測した電力使用量をAIに分析し、フレイルを検知する、自治体向けサービスを開始していることを紹介し、「当社の電力解析技術とTFHの技術を掛け合わせ、フレイル以外の疾患対策を共同で開発する」と語った。
来賓としてあいさつしたエグゼクティブアドバイザーの国際協力銀行取締役会長・前田匡史氏は、「日本の課題発見力は高いが、それを解決するビジネスモデルを構築する能力が低い。佐々木さんと出会ったのは18年前。佐々木さんは天才です。とにかく巻き込む力がある。業界の枠を超えて企業を結び付けていく拡張性に富んでいる。これが天才たるゆえんです。今回の事業は日本発の新しいビジネスとして世界に展開できる。益々の発展を確信しております。祈っているのではありません」と語った。
また、順天堂大学理事長補佐医学部脳神経外科学名誉教授・新井一氏は「予防医学には、病気を発症させない健康増進など一次予防、いち早く病気を発見する二次予防、退院後の社会復帰を促す三次予防があります。私が注目しているのは今回の事業は二次予防に革命をもたらすのではないかということです」と絶賛した。
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プレス発表会の案内が届いたとき、素晴らしい取り組みだと思った。と同時に不思議に思ったことが一つある。主催者企業4社のうち東海・北陸が発祥か本社を構える企業はYKK AP、大東建託、中部電力の3社もあることだった。
この日、配布された資料には、イーソリューションズ社長の佐々木氏は富山県黒部市出身、YKK AP社長の魚津社長は富山県出身、大東建託の竹内社長は富山県砺波市出身、中部電力の林社長は三重県出身とあるではないか。出身は不明だが、エグゼクティブアドバイザーの富山大学学長の齋藤滋氏も登壇し、あいさつした。
まだある。建築家・隈研吾氏もエグゼクティブアドバイザーとしてビデオメッセージを寄せたが、記者団からの質問に、佐々木氏は「隈さんとは40年来の友人」と答えた。富山県には隈研吾氏の作品「Toyamaキラリ」と日本酒ブランド「IWA」の酒蔵がある。
これで知恵の輪が解けた。これは東海・北陸発(初)であり、さらに言えば富山発(初)のプロジェクトだ。佐々木姓は東北に多いが、由来は滋賀県だといわれている。三重県出身の記者の母親も佐々木姓だった。地方閥があるかどうかは知らないが、富山の薬売り商法は生きている。先用後利だ。きっと花が咲く。数兆円のマーケットになるような気がする。がんばれ富山!佐々木さん!
一つ追加。写真はすべて主催者のオフィシャル画像。写真家のクレジットは不要のようだが、最高に素晴らしい。他社も見習ってほしい。いつも送られてくる人物の写真は遠景の米粒ばかり。拡大に耐えられない。