記憶にないくらい久しぶりに、フリーペーパー「SUUMO新築マンション 首都圏版」の年末号「2030年の首都圏は? 東京23区未来予想図」を持ち帰った。重いのなんの。計ったら950~960グラム。ページ数は744ページ。しかも上質紙でオールカラー。普通の雑誌だったら原価だけでも千円以上はする。無料で配布できるのはマンションのWEB広告などと抱き合わせだからだそうだ。コストは物件価格にオンされるのだろう。
さすがSUUMOだ。その前身「住宅情報」が発刊されたのは1976年だ。記者はそのころ、どうして不動産協会や都市開発協会、日本住宅建設産業協会(現全国住宅産業協会)などは共同の住宅購入相談所を設けないのだろうと考えていた(不動産協会は銀座・そごうに一時設置していたが)。
その後、読売新聞社が「住宅情報」に対抗するように住宅情報誌を発刊したが、長続きしなかった。差別化ができなかったからだ。現在のSUUMO事業を展開するリクルートホールディングスの2023年3月期の売上高は3兆4,164億円で、SUUMOなどの住宅分野を含むマッチング&ソリューション事業の売上高は8,078億円だ。SUUMOだけでも売上高は1,000億円超と言われている。
年末版は、「住宅情報」時代と同じ「不動産会社ガイド」が中心に編集されている。紙面の大半を占める。今年は42社が掲載されていた。
最初に登場したのは三井不動産レジデンシャル、次はタカラレーベンで、日鉄興和不動産、相鉄不動産/相模鉄道、長谷工グループ…と続く。アイウエオ順ではない。ページ数順だった。三井レジは最多の40ページ、タカラレーベンは30ページで、もっともも少ない見開き2ページのブリスなど3社が一番後ろ。
掲載会社を見て、供給上位の会社が漏れていることに気が付いた。三菱地所レジデンス、住友不動産、オープンハウス、飯田グループ、モリモト、大和地所レジデンス、明和地所、日本エスコンなどのデベロッパーに住友商事、丸紅の商社、東武鉄道などの鉄道会社(系)などだ。まあ、しかし、42社なら首都圏マンション市場の7割くらいを占めるのだろうと計算した。
その一方で、電鉄(系)の〝攻勢〟が目立つ。東急、小田急、相鉄、京急、名鉄、近鉄、阪急阪神、京阪電鉄、西鉄など全42社の約2割を占める。首都圏電鉄会社で掲載されていないのは東武、西武、京王、京成の4社だ。
これらの会社の沿線は同業他社やデベロッパーのマンションの〝草刈り場〟になっており、総じて地価・マンション価格が低く、街のポテンシャルもいま一つだ。ひとえに、沿線の価値向上に取り組んでこなかった電鉄会社の責任だ。
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しかし、消費者にとってはこれら〝割り負け〟沿線はいいこともある。デベロッパーに価格下げ圧力がかかっているからだ。SUUMOの絞り込み条件から「東京都」「60㎡以上」「4000万円未満」(坪単価200万円)で検索したら17件がヒットした。これに「神奈川県」26件、「埼玉県」34件、「千葉県」37件、「茨城県」10件を合わせると124件ある。この124件のうち圧倒的多数は〝割り負け〟沿線とJRだろう。
これから分譲されるマンションは、どのような遠隔地でも坪単価200万円以下、つまり20坪で4,000万円以下はありえない。不動産に掘り出し物はないと思うが、〝住めば都〟だ。いい物件が見つかるかもしれない。
SUUMOと他のマンションポータルサイトにお願いだ。AIを駆使し、購入検討者の属性、ライフスタイルに応じたセカンド・オピニオン機能を付加することだ(どこかやっていないか。SUUMOカウンターがその役割を果たしているのか)。検索条件に「日高屋」「DOOTOR」「マクドナルド」の御三家を加えてはどうか。「喫煙可」も必要かもしれない。レポーターなる人の記事(広告)は即刻やめるべきだ。