テーマは都市間競争力強化 GX実現、地域資源価値最大化の3つ
昨年はインフレ経済への転換点という大きな節目を迎えた。足元の不動産市場は仲介市場の好調など良好な状態を維持している。ただ、国内の金利情勢など、そして海外に目を向ければ米国でのトランプ政権への政権交代、ウクライナ戦争、そして韓国の内政不安などリスク要因は枚挙に暇がないが、今こそこれまでの傾向延長にない高い成長や売上拡大を図り、利益を生み出す好循環へのシフトを模索する機会だ。金利のある世界を意識して、顧客に本当に価値があると認められる商品・サービスの提供に加えて、「スピード感」を今まで以上に意識しながら事業に取り組んでいきたい。
最重要拠点の「広域渋谷圏」では、昨年4月に新しい体験価値を享受できる場所「創造施設」を目指す東急プラザ原宿「ハラカド」が開業し、昨年7月には渋谷最大級のスケールとインパクトを誇る“次世代型ランドマーク”「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」の街開きを迎えるなど、複数の大型再開発で旺盛な不動産需要の取り込みを図ったほか、線路や幹線道路をまたぐデッキを新設するなど課題だった渋谷駅周辺のバリアフリー化も同時に進めることができた。また当社グループは「環境経営」に注力しており、具体的には再生可能エネルギー100%のデータセンターを北海道石狩市で着工するなど再エネ電気を活用した事業展開のほか、広域渋谷圏や長野県の蓼科でTNFDに基づく生物多様性の取り組みを積極的に進めてきた。
当社グループは今年5月、新しい中期経営計画を発表する。2030年度までの 10年間の長期経営計画における前半戦の再構築フェーズは、外部環境の追い風もあり全ての財務目標を2年前倒しで達成することが出来た。後半戦の「強靭化フェーズ」では、強固で独自性のある事業ポートフォリオを構築していく。新中期経営計画の6年間では、金利上昇影響の顕在化に加え、AIの技術革新による付加価値の定義の変化や、富裕層、アッパー層が増えたことによる消費の二極化の進行、また脱炭素などの環境価値が事業活動の「付加要素」から「前提条件」となり転換していくと考える。新しい中計では、強靭化フェーズにおける重点テーマとして、広域渋谷圏戦略を推し進めることによる「国際的な都市間競争力強化」、再生可能エネルギー事業を中心とした「GXの実現」、そしてリゾート事業に代表される「地域資源の価値最大化」の3つのテーマが重要だと考えている。その実現のために財務面と非財務面を統合した価値創造を推進していく。