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2025/01/08(水) 17:38

マンション供給量は着工戸数の半分以下の不思議 整合性図るべき

投稿者:  牧田司

 一昨日(1月6日)書いた今年の分譲住宅市場見通しの記事の続き。住宅新報1月7日号は、「不動産軽罪研究所が24年12月24日に発表した25年のマンション市場予測によると、首都圏のマンション供給戸数は大型タワーがけん引して東京23区が急回復することで24年比13.0%増の2万6000万戸となる見込み」「24年の状況としては、工期延長と着工減で発売も後ずれし、供給戸数(予測含む)は前年比14.4%減の2万3000戸となる見通し」「商品企画面では、コスト圧縮の影響で目新しさはなく、引き続きZEHと省エネ関連がテーマとなる見込み」などと報じている。

 記者は、これまでこの種の予測記事に対してコメントは行ってこなかったが、事実と異なるので書くことにした。

 まず、供給戸数が2024年比13.0%の2.6万戸台に増加することについて。前回も書いたが、2024年1~11月の着工戸数は47,903戸(前年比1.8%増)で、不動研の供給予想は約2.3万戸(同14.4%減)だ。12月着工戸数がどうなるかわからないが、仮に低く見積もって3,000戸としても通年では5万戸超になる。そうなると不動研のカバー率は50%を割ることになる。

 カバー率が5割を切って果たして全体像が予想できるのか。これが疑問の一つ。そこで不動研に提案だ。再開発、建て替えなどで一般分譲しない地権者向け住戸は〝みなし供給〟としてカウントしてはどうか。そうすればカバー率は飛躍的に高まる。

 「商品企画面では、コスト圧縮の影響で目新しさはなく」というのもいかがか。小生も近年のマンションの質・設備仕様レベルの退行を目の当たりにしてとても残念に思っているのだが、中には質向上に真剣に取り組んでいるデベロッパーはあるはずだ。そういうデベロッパーを応援・支援するためにも業界紙は取材をすべきだし、デベロッパーもまた現地見学会などをどんどん行い、アピールしてほしい。

 在庫率について。住宅新報は「供給を手控えたことで在庫(202424年11月末)は5,205戸(前年同期比8.1%増)となり、低水準を維持した」としている。

 この「供給を手控えたため…在庫は低水準」というのは意味不明というより、「供給」と「在庫」の意味を全然理解していない。供給を抑制したら在庫は増え、収益を圧迫するのが普通の商品だ。

 生産・漁獲されたお米、野菜、魚の供給をやめたら農漁業者は生きられないではないか。卸問屋が買い占めたら消費者から批判を浴びる。マンションも例外ではない。供給を手控えているのでは断じてない。着工=商品だ(積水ハウス「国立」は例外中の例外)。先に見たように、地権者向けなどの住戸がなりな数字に達しており、戸数は多くはないがクローズドで販売される高額マンションも少なからずあると解釈すべきだ。

 「在庫は低水準」にも疑問符が付く。記者は2016年の記事で適正在庫について次のように書いた。

 「かつてマンションの雄だった大京の横山修二社長は『完成在庫は供給量の1か月分くらいが適正』と話したことがある。在庫を抱えていたほうが、お客さんのニーズに応えられるメリットが大きいというのがその理由だ。しかし、資金力の乏しいマンションデベロッパーは、当然ながら極度に完成在庫を恐れた。

 当時と現在では借入金利が全然異なるので単純比較はできないが、金利が低くマンション市況が好調なときは在庫増が収益を圧迫することはないが、市況が右肩下がりになると価格の下げ圧力が強まり、利益が吹っ飛ぶ事態もありうるので、やはり供給量の10%くらいが適正在庫ではないかと記者は考えている」

 ChatGPTにも「適正在庫はどれくらいか」と聞いてみた。回答は次の通り。

 「分譲マンションの適正在庫率(市場に出ている在庫の適正な割合)は、一般的には市場の需給バランスを示す重要な指標ですが、具体的な『適正な数値』は地域や市場状況によって異なります。ただし、以下の目安がよく参考にされます。

・適正在庫率の目安  1.5~2.5ヶ月分の在庫(後略)

・過剰在庫(供給過多)の目安 在庫が3ヶ月分以上になると、供給過剰気味であり、価格の下落圧力がかかりやすくなります。

・在庫不足(供給不足)の目安 在庫が1ヶ月分未満の場合、供給不足が懸念され、価格が上昇する可能性があります」

 皆さんいかがか。記者とChatGPTは考え方が異なるようだ。現在の市況は、低金利で価格先高観も強く、需要は堅調だから在庫を多少抱えてもいいかもしれないが、2か月分というのは危険ラインだと記者は考えている。2016年の記事をいま読み返したが、横山社長は「1か月分」とおっしゃったので、正確には12分1、つまり約8%だ。「供給量の10%」は「供給量の1か月分、8%」に訂正する。

 とすると、2024年11月末の在庫5,205戸(2023年分が2,538戸、2024年分が2,667戸)の在庫率は11.8%(2023年分は9.4%、2024年分は15.5%)になり、とても「低水準」レベルとは言えない。

 供給上位のデベロッパー各社の決算数字からすると信じられない在庫率と言えなくもない。例えは三井不動産。同社の2025年3月期2Qの計上戸数は1,997戸で完成在庫は11戸しかない。今期計上予定戸数3,650戸の契約進捗率は97%に達している。

 野村不動産HDの2025年3月期2Qの住宅の計上戸数は2,079戸(1,899戸、戸建て180戸)で、完成在庫は戸建てを含めて386戸(うち164戸は未分譲)。計上予定売上高2,900億円に対する契約進捗率は91.0%。

 東京建物の2024年12月期の計上予定戸数は1,740戸で3Q段階の契約進捗は98%、完成在庫は100戸(同社としては多いほう)しかない。通期の粗利益率は28%を見込む(前述の三井不動産は30%を超えると見られる)。

 これまで他社より在庫が目立った東急不動産は2025年3月期2Qの計上戸数422戸に対して完成在庫は161戸。数年前までは少なくともこの倍の完成在庫があったので、同社も激減している。通期売上予想に対する契約済み割合は91%となっている。

 大手で完成在庫が突出して多いのは住友不動産だが、利益率は他を圧倒している。なぜかは書かないが、同社はそもそも「完成在庫」という概念がない。

 これ以上はわからない。供給エリア、個別物件を調べるほかない。売れ行きの二極化が進んでいるのかもしれない。

 いずれにしろ、供給戸数の倍もある着工戸数との整合性を図るべきだ。供給戸数が乱高下するのはカバー率が50%前後と低いからで、着工戸数そのものは激増も激減もしていない。きちんと見極めたい。

マンション供給減=市場縮小ではない戸建ても底入れ・回復へ今年の分譲住宅市場(2025/1/6)

メジャー7決算平均価格は5,400万円(2014年比900万円上昇)在庫じわり増加(2016/11/14)


 

 

 

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