吉田氏(ホテル・オークラ東京で)
不動産協会・不動産流通経営協会は1月8日、新年合同賀詞交歓会を開催。不動産協会理事長・吉田淳一氏(三菱地所取締役会長)、不動産流通経営協会(FRK)理事長・太田陽一氏(東急リバブル代表取締役社長)があいさつしたほか、中野洋昌・国土交通大臣(公明党所属)、福岡資麿・厚生労働大臣(三菱地所出身)、林芳正・内閣官房長官(住友商事出身)、斉藤鉄夫・公明党代表(前国交相)など政官関係者も多く集まり、盛り上がった。
冒頭、吉田理事長は次のようにあいさつした。
皆様、新年あけましておめでとうございます。不動産協会理事長の吉田でございます。
本日は不動産協会、不動産流通経営協会合同の新年賀詞交歓会に、中野国土交通大臣をはじめ、日頃よりご指導いただいております、国会議員の先生方、関係諸官庁・友好団体や報道関係の皆様など、多数ご出席いただき、まことにありがとうございます。主催者を代表いたしまして、ひとこと年頭のご挨拶を申し上げます。
まず、令和7年度の税制改正について、昨年末に与党の大綱が決定されました。最重点要望であった住宅ローン減税の借入限度額の維持等について延長が認められたのをはじめ、当協会の主要な要望は概ね認められました。ご尽力いただいた先生方、関係の皆様方に、厚く御礼申し上げます。
昨年を振り返ってみますと、まず元日に発生した能登半島地震は甚大な被害をもたらしました。9月には地震の被災地を豪雨が襲いました。今なお、過酷な避難生活を送られている方もおり、改めて、被災された方々へ心よりお見舞いを申し上げます。
昨年は、国内の政治・経済において「変化」のあった年でした。33年ぶりに5%を上回る賃上げが実現し、また、金融政策の見直しが図られました。9月の自民党総裁選により、石破新政権が誕生。衆議院の解散総選挙の結果、自民党・公明党が少数与党となり、政治の枠組みも変わりました。
世界に目を転じると、世界情勢は「不安定さ」が継続しています。アメリカでは11月に大統領選が行われ、トランプ氏が選ばれました。また、ウクライナおよび中東地域をめぐる情勢も先が見えません。
国内の不動産事業は、全体としては堅調に推移しています。とりわけ、オフィス市場では、空室率は改善傾向となり、多くのエリアで賃料上昇局面に移行しております。これらの動きは企業の働き方改革や生産性向上に向けた取組みが進む中、質の高いオフィスに対する期待の表れと受け止めております。
一方、建築費の高騰、各業界の人手不足の影響等、厳しい事業環境にも置かれています。
また、国全体として少子化・人口減少をはじめとした構造的な課題にも直面しています。
本年は、これらの課題を業界一丸となって乗り越えるとともに、政官民総力をあげて、一つ一つを前に進めていく「着実に未来を切り拓く年」にできればと思っております。
我が国は、賃上げと投資が牽引する成長型経済の実現を目指さなければなりません。
そのためには、GXやDXを一層推進し、社会課題を解決するとともに、持続的な経済成長を実現することが重要であり、産業創造に資するまちづくりに取り組み、民間投資を拡大、我が国の競争力をさらに高めていくことが不可欠です。
こうした認識のもとでの、今後の協会の活動について簡潔にお話しいたします。
官民連携してまちづくりGXに向けた動きが進む中、環境分野では、民生部門における省エネや再エネ等の取り組みの役割を果たすべく、ZEH、ZEBの実現加速や、中高層建築物の木造化促進、ホールライフカーボン削減への取り組み等により、サステナブルなまちづくりをより一層進めて参ります。
都市政策では、地方創生の推進と共に、経済効果の高い大都市が国全体を牽引し、我が国の国際競争力を強化することが重要であり、魅力ある都市環境づくりが求められています。
昨年は、初めて「南海トラフ地震臨時情報」が発表されました。今後想定される多様な災害も見すえ、都市の防災性能の向上に向けた取り組みを一層進めなくてはなりません。
また、都市は「ウェルビーイングの実現」や、「イノベーションの創出に資する交流・経済活動」を生み出す役割があります。世界中から多様な人々を惹きつけ、ビジネス・学術・文化・エンターテインメントなど、あらゆる分野で活発な交流が起こるような機能集積を図り、質の高い賑わい空間を創出して参ります。
住宅分野では、環境性能・防災性能に優れた、質の高い住宅を供給することにより、安心・安全で良質な住宅ストックの形成・循環の実現に貢献して参ります。
老朽化マンションの増加が見込まれる中、マンション建替えに関する合意形成の円滑化、適正な管理の推進に向けた、法改正の着実な進展を期待いたします。
また、本年は概ね5年で見直しを行う「住生活基本計画」の議論も本格化いたします。我が国の重要課題のひとつである「こども・子育て」をはじめ、多様化する住宅ニーズも踏まえ、適切に対応して参ります。
その他、重要な社会インフラであり、地域経済への貢献も大きい物流不動産、インバウンド増加により、事業機会が拡がるリゾートの開発など、事業環境の整備について幅広く取り組んでまいります。
当協会としては、国民の暮らしを豊かにするまちづくりや、住環境の整備を通じ、我が国の経済・社会の発展に向けて、貢献していきたいと考えておりますので、引き続きご理解、ご支援賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
結びにあたりまして、皆様の一層のご活躍とご健勝をお祈りし、また今年一年が皆様や国民にとって明るく良い年となることを祈念申し上げて、私の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。
「既存住宅の流通活性化に果敢に挑戦」FRK・太田理事長
太田氏
乾杯の音頭を取った不動産流通経営協会(FRK)理事長・太田陽一氏(東急リバブル代表取締役社長)は、次のように述べた
「昨年の不動産流通市場は、国内外の経済環境などが変化する中、総合経済対策など政策面での後押しもあり、東日本レインズのデータによると首都圏の既存マンションの成約価格などは概ね好調を維持しており、総じて底堅く推移した。
本年は、デフレに後戻りしない成長型経済を実現する内需のけん引役として既存住宅の流通活性化に果敢に取り組んでまいります。
わが国の暮らしや住まいにも徐々に変化が生じており、過去の働き方・育児・介護・マイホーム像と現実のずれが、人手不足、少子化、空き家などの目に見える社会課題となっており、高気密性や省エネ性能など住宅に求められる水準も年々高まっている。政策面でのご支援もいただき、他団体とも連携しながら多様化する消費者ニーズに対応し、不動産流通市場の持続的な成長に力を尽くしてまいりたい」
マンション管理・会計の円滑化図る法案提出 中野国交相
中野氏
来賓として出席した中野洋昌・国土交通大臣は次のようにあいさつした。
「不動産業は質の高い不動産の供給を通じて、わが国の経済社会へ未来につなげていく重要な役割を期待されている。その役割を十分果たしていただくべく、国土交通省としても施策の充実に取り組んでいく。
令和7年度の税制改正におきましては、住宅取得環境が厳しさを増していることを踏まえ、子育て世帯の借入限度額の上乗せ措置等を延長する住宅ローン減税など主要な税制措置が認められた。
また、国民の1割以上が居住するマンションにつきましては、建物と居住者の二つの老いが進行している。そのため区分所有法の見直しと一体的に新築から再生までのマンションのライフサイクル全体を通じ管理や会計の円滑化を図るための方策について、本年の通常国会での法案提出を目指している。
さらに、世界水準のデジタル社会形成に向け、不動産DXにより取引の円滑化、業務の効率化を実現するとともに、不動産関連情報の連携を促すことで新たなビジネスの創出にも取り組んでいく」
勢ぞろいした公明党幹部と記念写真に収まる吉田氏(右から4人目)と不動産流通経営協会理事長・太田陽一氏(右から3人目)