東京建物は1月16日、2025年度から2027年度までの3年間を計画期間とする中期経営計画を策定し発表。長期ビジョンに「次世代デベロッパーへ」を掲げ、事業を通じて「社会課題の解決」と「企業としての成長」をより高い次元で両立することを目指す。
前中計期間(2020年~2024年)の事業環境認識では、新型コロナウイルス感染症の流行による顧客の価値観・行動様式およびマーケット環境の変化、異次元の金融緩和政策の転換、地政学リスクの高まり・顕在化、インフレ・人手不足などによる建築費の急激な高騰を挙げ、事業環境の不確実性は一層高まっており、変化のスピードも加速しているとしている。
中期経営計画の基本方針には、「次世代デベロッパーへ」を掲げ、強靭かつしなやかな事業ポートフォリオの構築により、成長加速・資本効率向上を実現するとしている。
定量目標としては、事業利益は950億円(2027年度)、ROE10%(本中計期間)、配当性向40%(2027年度)とし、財財務指標(2027年度)はD/Eレシオ2.4倍程度、有利子負債は12倍程度としている。
重点戦略は、〝BASE〟(成長の礎)をコンセプトに①大規模再開発の着実な推進②分譲マンション事業の更なる成長③投資家向け物件売却事業の加速④海外事業の拡大⑤サービス事業の拡大⑥新規事業のむ確立-の6つ。事業ポートフォリオ戦略の考え方として「賃貸:分譲・売却:サービス=30%:60%:10%」を維持しながら、成長投資のためのキャッシュ創出および資本効率の向上を図ることから、当初想定より「賃貸」の割合を減らし、「分譲・売却」の割合を増やす方向で見直した。
重点戦略の大規模再開発では、2026年竣工の「八重洲プロジェクト」をはじめ重点エリアである八重洲・日本橋・京橋(YNK)エリアで複数の大規模案件を推進する。
分譲マンションでは更なる成長を目指し、建て替え・再開発へ注力し、本中計期間中に約4,300戸を計上する予定で、年間2,000戸供給体制を目指す。投資家向け物件の売却も加速化し、オフィス、ホテル、物流、商業施設など本中計期間中の売却益計上額は約1,100億円を見込む。
海外事業では、事業利益に占める割合を2030年に10%程度に引き上げる。タイ・中国では分譲住宅に加え、物流施設など多様なアセットタイプへの投資も実施する。
サービス事業では、投資家向けの「不動産マネジメント」と一般消費者向けの「体験型施設運営」に力を入れ、ノンアセット(ライトアセット)ビジネスを拡大する。
新規事業では、アリーナ、複合型スポーツレジャー施設などのスポーツ・エンターテイメント、メガソーラー、データセンターなどのサステナビリティに注力し、ビジネスモデルを確立し、将来の新たな利益の柱となる事業を創出する。
成長を支える経営インフラの高度化では、環境面ではCO2排出量(2019年度比)2030年度まで46.2%削減、再エネ電力の創出・活用、ZEB・ZEHの開発、メガソーラー開発などを行う。社会的取り組みでは人権の尊重、持続可能なサプライチェーンの構築、地域社会への貢献活動を強化する。ガバナンスでは、取締役会の機能強化、リスクマネジメントの強化などを図る。人的資本の拡充では「事業戦略を支える人材ポートフォリオの構築」と「多様な人材の活躍」を両輪として企業価値の持続的向上を実現する。DXの取り組みとしては、デジタル活用により「体験価値」工場、「場の価値」創出、「事業機会」の拡大を目指す。
前中期計画の振り返りとして、2024年12月期(予想)の事業利益は780億円(中計目標750億円)、ROE12.1%(同8~10%)、D/Eレシオ2.3倍、有利子負債11.4倍(同2.4倍、12倍程度)ネット投資額累計約5,060億円(同5,000億円)となり、おおむね中継を上回る見込み。