RBA OFFICIAL
 
2025/03/22(土) 12:48

東京建物、三菱地所、野村不、三井不 デベロッパー4社の地価公示コメント

投稿者:  牧田司

地価上昇基調が継続する可能性 つねにマーケット重視

東京建物 小澤克人社長

 今回発表された地価公示は、地域や用途によって差はあるものの、全国全用途平均で4年連続上昇、上昇幅も拡大した。分譲マンション市場の堅調さの持続に加え、国外からの観光客の増加によりホテルや店舗需要が好調であったこと、オフィス需要の回復基調が鮮明となってきたこと、さらには再開発の進展により利便性や賑わいの向上が期待されるエリアが増加したことが背景にあると考えられる。

 オフィスマーケットは、好調な企業業績などを背景に業容拡大、人材確保を目的とした好立地・ハイグレードオフィスの需要は引き続き底堅く、空室率も低下傾向にある。特にワーカーの心身の健康に着目したウェルビーイングへの対応やサステナビリティに配慮した高付加価値のオフィスビルの需要は今後も一層増大すると見ている。当社は、本社を構える東京駅の東側、八重洲・日本橋・京橋エリアを中心に複数の再開発事業を地権者の皆様と推進しているが、八重洲で進める「TOFROM YAESU TOWER」ではオフィスフロアのコンセプトを「ウェルビーイング」とし、ワーカーのウェルビーイング向上をサポートする機能を多数実装する予定である。これらウェルビーイング向上施策に加えて東京駅前という立地特性を多くの企業さまからご評価いただき、竣工が来年であるにも関わらず、隣接する街区「TOFROM YAESU THE FRONT」と合わせたオフィスフロアの内定率は既に約60%に達している。

 ホテルや商業施設においてはインバウンド観光客の増加などにより、東京・大阪・京都をはじめとした観光地・全国主要都市を中心にホテルの稼働率や飲食店舗の売上が増加するなど、今後も拡大が期待できる。当社においては昨年、ヒルトンのフラッグシップ・ブランド「ヒルトン・ホテルズ&リゾーツ」として京都初進出となる「ヒルトン京都」を河原町三条にオープンした。313の客室を有するラグジュアリーホテルであり、先斗町や祇園至近という利便性も相まって、京都観光の拠点の一つとして大変ご好評をいただけている。

 物流施設は、ECの拡大や人手不足などを背景とした企業側の物流拠点網の再整備に伴う需要が底堅く、今後、需要の拡大が期待できる。当社は今後、千葉県船橋市で冷凍・冷蔵物流施設、神奈川県厚木市で危険物専用倉庫併設の物流施設開発に着手するなど、さまざまなニーズに対応した競争力の高い物流施設を提供していく。

 分譲マンションマーケットは、建築費の上昇や住宅ローン金利の動向など懸念はあるものの、共働き世帯(いわゆるパワーカップル)や富裕層からの利便性が高く良質な住宅への需要は依然として高く、特に都心部においては価格の上昇基調が継続している。一方で郊外においては需給のバランスにより価格上昇が落ち着き始めているエリアも見られ、エリアによる価格トレンドの強弱が出始めている状況である。

 金利については日銀の金融政策による動向を引き続き注視すべき状況にあるものの、それほど大幅な上昇にはならないと見ており、当面不動産市場への影響は少ないと思われる。その他、地政学的リスクや為替変動の影響、国内外の物価動向や人手不足問題等、今後の景気への不安要素もあるが、経済活動がさらに活発化し、原材料上昇分の製品価格転嫁や賃金の上昇などがさらに進むことで、用途を問わず利便性の高いエリアを中心に、地価の上昇基調が継続する可能性がある。

 当社としては、地価動向には引き続き注視するととともに、いつの時代もマーケットを重視し、お客様のニーズを的確に捉え、お客様にご満足いただける商品やサービスの提供を通じて、人々が安全・安心・快適に過ごせるまちづくりを推進していく。

不動産の本質的な価値を高める取り組み加速

三菱地所 中島篤社長

 令和7年の地価公示では、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4 年連続で上昇し、上昇率も拡大した。特に、交通ないし生活利便性に優れたエリアや、インバウンド需要が見込まれるエリアでの地価上昇が顕著であった。また、オフィス市場においては空室率低下と賃料上昇の傾向が継続し、地価の上昇に反映されている。

 住宅需要は堅調で、分譲マンションの価格が引き続き上昇を続けているほか、賃貸マンション等を含め今後も好調が続くものと見込んでいる。当社事業では、昨年発表した「ザ・パークハウス 武蔵小杉タワーズ」の販売が順調に進んでおり、大阪エリアでも「ザ・パークハウス 心斎橋タワー」など、交通利便性の高い好立地の物件は人気だ。

 商業地に目を向けると、インバウンド需要の増加を背景に、ホテル事業やアウトレット事業も好調を維持。当社が空港事業を手掛ける宮古島エリアでウルトラ・ラグジュアリークラスのホテル「ローズウッド宮古島」が本年3月に開業したほか、2025年度中には当社グループの三菱地所ホテルズ&リゾーツが運営する「ロイヤルパークホテルズ」ブランドの運営客室数が6,000を突破予定。今後も積極的に全国各地のインバウンド需要を取り込んでいく。

 オフィス市場では賃料の上昇が進む。丸の内エリアの空室率は昨年12月時点で1.97%と低水準を維持しており、当社グループの事業戦略として、各企業の経営資源たるオフィスへの付加価値提供を進め、賃料水準の底上げに一層取り組んでいる。また、昨年9月には大阪駅前の「グラングリーン大阪」が先行開業し、既に多くの来場者を迎えているが、本年3月21日には南館のオフィス棟が開業し、本格的な街の稼働が始まる。みどりとイノベーションをコンセプトに掲げるプロジェクトとしてここからが真価を問われる局面であり、求められる価値を徹底的に考え、提供していく。

 日本経済では賃上げの定着や日銀の追加利上げなど、グローバルレベルのインフレを前提とした大きな動きがある。こうした時代の流れを味方につけ、不動産の本質的な価値を高める取り組みを加速させ、業界全体の成長へとつなげることで好循環を生み出していく。

ハード・ソフト両面で価格上昇に見合う商品の開発に注力

野村不動産 松尾大作社長

 

 今回の地価公示は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇幅が拡大した。一方で、資材費や労務費を含む建築費の高騰が当面継続すると想定されるため、各事業セクターは厳しい事業環境にある。当社としては、動向を注視しながら、多様な用地取得方法の推進や、ハード・ソフト両面で価格上昇に見合う商品の開発等により今後も対応していく。

 住宅市場に関しては、建築費の上昇により、厳しい事業環境が継続する見込みのため、急激に供給量が増えるとは考えづらい。しかし、昨今の賃上げ率拡大とそれに伴う世帯年収の増加により住宅取得意識は継続して強く、需給のバランスは当面崩れないと見ており、利便性の高い都心物件や郊外の駅地価物件などを中心に、売れ行きが依然好調である。住宅ローン金利は上昇傾向がみられるが、世帯年収の増加に伴い、現時点では顧客の購入マインドへの影響は軽微である。今後も引き続き動向を注視してゆく。

 オフィス市場に関しては、出社や採用の増加により、当社主力ブランドのPMOに加えてサービスオフィスのH¹Oでもテナント企業の拡張移転ニーズが増えている。また、インフレ局面において、賃料増額へのテナント企業の理解は得られる傾向がある。2025 年に東京での新規供給が集中するため、一時的にマーケット全体で影響が出る可能性があるが、23 区全体のマーケット規模と過去からの供給量に鑑みると、需給バランスが急激に悪化するとは考えにくい。

 ホテル市場に関しては、高い水準でインバウンド顧客の利用が続いており、当社運営ホテルにおいても直営ホテルとグループのUDSが運営するホテルが共に好調。「フェアモント東京」も開業することから、市況の活性化しているタイミングで多様なホテルタイプを提供することが出来る。

 物流市場については、EC市場の需要増加と運転手の労働時間規制により人手不足が課題。一方で拠点分散の必要性により、賃貸ニーズは拡大している。当社では首都圏に加えて中間物流適地での事業拡大や、物流施設の開発のみならず、カテゴリーマルチの深化や物流オペレーションの自動化機器導入などの商品企画により、顧客ニーズを踏まえた付加価値を今後も提供していく。

 今年2月末にはいよいよ「BLUE FRONT SHIBAURA」TOWER Sが竣工。3月には竣工式と、同日にJR浜松町駅から芝浦エリアをつなぐ緑のアプローチ「GREEN WALK」も開通。7月にはラグジュアリーホテル「フェアモント東京」、8月にはオフィスフロア、9月には商業店舗と順次開業を予定しており、当社の本社移転も予定している。オフィスフロアでは1フロア約1,500坪の都内最大級の「テナント企業専用の共用フロア」も提供する。他にも、多様な働き方に対応した多くのワークスペースを用意し、立地特性である空・海・緑に恵まれた自然環境を活かした水辺ならではの新しい働き方を当社自らが実現していく。

 2030年をターゲットとする野村不動産グループビジョンに「まだ見ぬ、Life & Time Developerへ」を当社グループで掲げている。 そこに暮らす、働く、時を過ごす一人一人のお客様の生活「Life」や時間「Time」をさらに豊かにしていくために、新たな付加価値を創造し、お客様に多様な付加価値を提供できる不動産関連商品・サービスをこれからも提供していく。

 地価公示は、不動産の取引動向や中期的な展望を反映したものであり、様々なマクロ指標と合わせて今後も重要指標のひとつとして注視していく。

デフレから脱却し成長型経済へ向かう「時代の転換点」

三井不動産 植田俊社長

 今般公表された地価公示では、全国の全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。三大都市圏、地方圏ともに上昇傾向が続き、地域や用途により差があるものの、全体として上昇基調が鮮明となりました。景気回復の影響が全国的な地価上昇に波及した結果といえます。経済活動の活性化に伴い需要が創出され、日本の産業競争力強化、そして国富増大に結び付いているといえます。

 都心部においては、大規模再開発事業が進展するエリアの地価上昇が顕著となりました。大規模再開発事業は、日本の国際競争力の強化に貢献し経済成長を牽引する役割を果たしており、我が国の未来を担うものとして、一層その必要性・重要性を高めています。また、オフィス空室率の低下や賃料が上昇傾向にあり、継続する住宅マーケットの好調さや、活況なインバウンド等から商業・ホテルの需要が堅調であり、地価上昇に反映されました。

 地方圏では、引き続き、半導体関連企業の進出が進む地域や、物流施設需要が高まる地域での地価上昇がみられます。各地域の特色を活かした産業創造を進展させ、新しい時代の新しい形での地方創生が求められています。

 世界では、トランプ政権の政策等のインパクトが各国経済および日本の経済・企業に与える影響をはじめ、様々な地政学リスクが懸念されます。日本経済においては、継続する賃上げにより賃金・物価の好循環への確度が少しずつ高まっています。日銀の利上げにより「金利のある世界」が戻り、デフレから脱却し成長型経済へ向かう「時代の転換点」にいます。

 デフレの時代は付加価値が正当に評価されてきませんでした。付加価値を評価し、物価と賃金のプラスの連鎖を生み、成長型経済の実現につなげたいと考えます。

 当社グループとしては、このような転換点を大きなチャンスととらえ、付加価値の創造力において圧倒的な力を発揮していきたいと考えています。「不動産デベロッパー」の枠を超えた「産業デベロッパー」として、日本の国際競争力の強化・新産業の創造に貢献し、新たな社会的価値と経済的価値の創出を両輪で実現してまいります。

 

rbay_ayumi.gif

 

ログイン

アカウントでログイン

ユーザ名 *
パスワード *
自動ログイン