「KATARITSUGI」プロジェクトモデルハウス
小田急不動産は5月31日(古材の日)、新潟県阿賀町の築160年の古民家の構造材を再利用した、エシカル消費を提案する「KATARITSUGI」プロジェクトの平屋モデルハウスを神奈川県開成町にオープンする。オープンに先駆けた29日、メディア向け那須蘭会を行った。
モデルハウスは、小田急線開成駅から徒歩12分、神奈川県足柄上郡開成町みなみ3丁目に位置する土地面積約246㎡、建物面積約130㎡。木造平屋建て(建基法では木造2階建て)・在来工法。建築はロックフィールズ、外構はランドフローラ。坪単価は140万円の予定。
外構には中高木や芝生など緑をふんだんに施し、外壁は国産の杉板と一部屋根には新潟の安田瓦を採用。玄関とLDKの間には天井高4m超の土間を設置。24.5帖のLDKの天井高は5m超で、天井には井桁状の古材の梁を配置。床は厚さ30ミリの浮造り仕上げのスギ材を用いているほか、内装材はすべてスギ材。ZEH水準(太陽光パネル設置も可)。
事業スキームは、同社が顧客に土地を仲介・販売し、古民家所有者は全国古民家再生協会の加盟事業者に古材を提供し、再生協会事業者と顧客が建築請負契約を結ぶのというもの。年間5棟の販売を予定している。
同社仲介事業本部仲介営業部企画推進グループリーダー・山尾正尭氏は、「わが国には現在、約900万戸の空き家があり、古民家は102万戸と推定されている。オーナーの方は何とかしたいという切実な思いがある。当社はその思いを受け継ぎ、良質な古民家の古材活用を小田急沿線で提案していく。鎌倉、箱根など小田急線にはエシカル志向の方も多く、相性がいい」と経緯と展開について説明した。
全国古民家再生協会室長(瑕疵保険推進室)・井上幸一氏は「この種の移築・再生の取り組みは当協会として初めて。古民家を次世代へ継承していくため協会としても市場をつくり上げていく」と、同協会理事・大沼勝志氏は「モデルハウスに活用された古民家は築160年の60坪。構造材はすべてオーナーが所有する裏山の樹齢100年超のスギで、オーナーは解体費用の問題と、先祖代々から受け継がれてきた本家を壊すことに対する親族の反対もあり、悩んでいた。モデルハウスには梁材26本が使用されている。解体・再生事業はモノづくりの面白さを若手の職人にも伝えることにもなり、5年後には当たり前になるようサポートしていく」とそれぞれ語った。
阿賀町まちづくり代表取締役・高橋眞也氏は、「阿賀町は新潟県で最も高齢化が進んでいる自治体。このところ人口は年間300人が減少しており、現在は9,000人弱。1,200棟が空き家になっていると推定される。古材が新しい家に活用されるのはとてもうれしい。全国に広がることを期待している」と話した。
左から山尾氏、井上氏
左から大沼氏、高橋氏
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外観に一部瓦が使用されているデザインはどうかと思ったが(人それぞれ好みがある)、LDKの天井に配された樹齢100年超、築後160年の黒光りする井桁状の梁(塗装仕上げ)は悠久の時を刻んだ存在感がある。白と黒のコントラストがまた美しい。
そして何よりいいのが、床から建具・家具に至るまですべてが学名Cryptomeria japonica(隠された日本の宝)のスギ材であることだ。このようなすべてがスギの住宅は初めて見た。新潟県は梁も柱もスギを利用していたようだ。
同業の記者の方からは「エシカル志向を考えればもっと古材を活用してもよかったのではないか」という質問が飛んだ。同社は、顧客の要望に応じ、レトロ建具を提案することも考えていると答えた。
記者もそうしたほうがいいと思う。昭和レトロをテーマにしたコスモスイニシアのリノベマンション「ステーションプラザ代田橋」は素晴らしかった。世の中はサーキュラーエコノミーが広がり、古材・古家具は流通しているとも聞く。SDGsは小学生だって知っている。
テーマは昭和レトロ 簀戸、サイザル麻、組子…コスモスイニシアのリノベ「代田橋」(2023/8/2)