仲井氏(如水会館で)
プレハブ建築協会は5月30日、通常総会後に記者会見を開き、同協会会長・仲井嘉浩氏(積水ハウス代表取締役兼CEO社長執行役員)が今年度の重点的な取り組みについて説明した。
仲井氏は、今年度の重点施策として3点を挙げ、その一つは、「住生活向上推進プラン2025」の総仕上げの年であるとし、次期の「住生活向上推進プラン2030」を立案し、より質の高いストック生成を目指すと語った。2つ目は災害対策で、激甚化する自然災害に平時から備えるため、協会本部事務所を移転し(新事務所は千代田区麹町2丁目14-2、麹町NKビル)、BCP対応、データ管理、DX効率化を推進するとした。3点目はストック対策で、耐震性・省エネ性など山積する既存ストックの課題解決に取り組み、人材育成にも力を入れると話した。
◇ ◆ ◇
いつか機会があったら仲井氏に聞こうと思っていることが一つある。住宅の緑被率アップについてだ。言うまでもないことだが、「都市の緑地は、美しい景観の形成、温室効果ガスの発生やヒートアイランド現象の緩和、災害時における避難路・避難場所等の形成、雨水の流出抑制機能の発揮、身近に親しめる多様なレクリエーションや自然とのふれあいの場、野生生物の生息、生育環境の確保など多様な効果を有している」(国土交通省:まちづくりGXの検討状況資料)。記者は「住宅」と外構の緑は不可分だと思う。
しかし、全国の市街化区域の緑被率は減少する一方で、最新のデータでは23.2%にしか過ぎない。首都圏の分譲戸建ての平均敷地面積は30坪(100㎡)がやっとだ。これでは敷地内に緑を確保するのは難しい。
一方で、国も自治体もグリーンに対する補助・助成制度を設けてはいるが、一般住宅に対して緑化を義務付けているところは少ないはずだ。施主・戸建て購入者もまた、住宅と外構・緑を切り離して考える人が多いからか、外構の緑化は後回しになる。
不動産の価値を評価する制度・指標にはCASBEE、WELL Building Standard、LEED認証、SITES、ABINC認証、i-tree…たくさんあるが、これらを統合して緑の価値を可視化する取り組みをプレ協に期待しているのだが…。
◇ ◆ ◇
プレ協の令和6年度事業報告で気になる数値が示されている。「令和6年度の新設住宅着工戸数は、81.6万戸(対前年度比+2.0%)で、うち持家22.3万戸(同+1.6%)、貸家35.7万戸(同+4.8%)、分譲22.9万戸(同-2.4%)となった。このうち、プレハブ住宅では、全体9.4万戸(同-6.7%)で、持家2.6万戸(同-4.5%)、貸家6.2万戸(同-8.0%)、分譲0.5万戸(同-14.1%)となった」とし、「住宅市場を取り巻く環境は大変厳しい」としていることだ。
果たしてそうか。住宅市場が縮小傾向にあるのはいまに始まったことではない。今後も、税制面でのメリットが大きい賃貸はともかく、持家や分譲が縮小するのは間違いない。
しかし、大手のハウスメーカー・デベロッパーの決算数字を見ても、軒並み売上高、営業利益はアップしている。時代の変化、多様なニーズに対応しているからだ。優勝劣敗-この原則はビジネス界では貫徹される。