東京カンテイは6月2日、全国の億ション供給動向をまとめ発表した。2024年に全国で供給された億ションは5,531戸で、このうち首都圏は約75%の4,157戸(前年4,180戸)を占めている。都県別では、東京都がもっとも多く3,625戸で、次いで大阪府753戸、神奈川県329戸の順。宮崎県で初めて2戸供給されたため、累計の億ション空白県は山形、鳥取、香川、徳島、佐賀の5県となっている。
2024年12月末時点の累計供給戸数は68,351戸で、分譲実績が確認されたのは42都道府県。圏域別では首都圏が54,569戸、近畿圏が8,899戸、中部圏が2,221 戸、地方圏が2,662戸。都道府県別では東京都の48,183戸が最多で、全国シェアは70.5%となっている。
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面白いデータだ。全国で供給されるマンションは、投資向けやコンパクトを除けば約10万戸(首都圏は約5万戸)だろうから、そのうち約5%(首都圏は約10%)が億ションと捉えることができる。
気になったのは、全体市場をどこまで捕捉しているかだ。不動産経済研究所の調査では、首都圏の2024年億ション供給戸数は3,648戸(前年4,174戸)となっている。不動研は着工戸数の半分も捕捉できていないので少ないのは分かるが、東京カンテイとの差はそれほどでもない。東京カンテイに非分譲住戸をカウントしているのかどうか聞いたが、同社はデータをカウントする際に総戸数をカウントしているが、クローズド販売など一般分譲されない億ション戸数は含めないとのことだ。例えば、「グラングリーン大阪」のように全484戸のうち236戸しか一般分譲されなたかった物件は、残りの戸数はカウントされていないということだ。
だとすれば、実際の億ションの供給戸数は、同社発表戸数より数千戸多い可能性もあるということだ。「供給」の定義を考えないといけないかもしれない。
もう一つ、同社はバブル期を1988年(昭和63年)から1992年(平成4年)の5年間としているが、これには異論をはさまざるを得ない。
バブル発生はもう少し前の1886年(昭和61年)ころだと思う。この年、民活第一号マンションの「西戸山タワーホウムズ」が分譲されたが、モデルルーム来場者は5万人を突破し、申込者は、北は北海道から九州まで全国に及んだ。完全に〝バブル〟だと思った。業界関係者もそう見ているはずだ。
バブルが崩壊したのは1990年(平成2年)9月だ。これも間違いない。同年8月、湾岸戦争が勃発したのを機に株価が暴落し、9月のマンション月間契約率は確か50%を割ったはずだ。その後、マンションの値引き・解約が相次いだ。
ただ、マンションは土地の仕入れから着工・分譲までかなりずれがあるから、単純に供給が多かった1988年(昭和63年)から1992年(平成4年)の5年間をバブル期としたのも分からないわけではない。そのように断ればよかった。
同社は今後、億ション市場についてレポートするとしている。期待したい。かつて同社は詳細な億ション市場動向をまとめ発表している。用途地域別では、住居系エリアが大多数を占め、商業・工業系は数えるほどしかなかったのを覚えている。いまはその逆で、商業系が過半を占めているのではないか。消費者のニーズが居住環境より利便性を重視するように変化したのか、デベロッパーがそのように誘導したのかは分からない。