「令和7年度 改正マンション関連法に関する説明会」(ビジョンセンター東京八重洲で)
国土交通省と法務省民事局は7月8日、「令和7年度 改正マンション関連法に関する説明会」を開催した。午前の部と午後の部あわせて約480人が参加し、関心の高さをうかがわせた。
関連法は一部を除き令和8年4月1日付で施行が予定されていることから、国交省は全国での説明会、専門家による検討会、パブコメの実施などを経てマンション標準管理規約は今年9月下旬を、管理業者管理者方式に関する委託契約書は今年11月1日をめどにそれぞれ公表することにしている。以下、配布資料をもとに要点を紹介する。
マンションの管理・再生の円滑化のための法改正
資料は法改正の背景・必要性について、現在のマンションストック総数は約704万戸(2023年末)で、令和2年の国勢調査による1世帯当たり平均人員2.2人をかけると約1,500万人になり、国民の1割超が居住していることになり、現在137万戸の築40年以上のマンションストック数は20年後には464万戸に増加し、令和5年度のマンション総合調査によると、世帯主が70歳以上の住戸の割合は築40年以上のマンションでは55%に達しているなど「2つの老い」が進行していることを指摘。
また、長期修繕計画を定めて修繕積立金を積み立てているマンションのうち「現在の修繕積立額の残高が、長期修繕計画の予定積立残高に対して不足していない」マンションは約40%に留まっている現状があるとしている。
一方、マンションの建て替え実績は2023年度末で累計297件(約24,000戸)で、建て替えに伴う余剰容積率が縮小傾向にあり、2020年代では保留床は40%を割っており、区分所有者の平均負担額は2012~2016年の約1,106万円から2017~2021年は約1,941万円へ激増している。
こうした背景・課題の解決を図るため、改正法では①適正な管理を促す仕組みの充実、集会出席者の多数決議決による管理の円滑化②建物・敷地の一括売却、一棟リノベーション、建物の取り壊しなどを多数決で可能とする再生の円滑化③地方自治体の取り組みの強化-による三本柱で取り組むとこととしている。
区分所有法・被災区分所有法の改正内容
区分所有法・被災区分所有法の改正内容では、集会の議決の円滑化のため、現行では普通決議は区分所有者の多数決(欠席者もカウントする)が必要なのを、出席者の多数決でいいことに変更され、所在等不明の区分所有者はすべての議決の母数から除外する制度が設けられたのが大きなポイント。
また、区分所有者が専有・共用部分を管理せず、他の区分所有者の権利を侵害するのを防ぐため裁判所が管理人を選定して管理させる財産管理制度や、区分所有者が国内に住所を有しない場合は、国内管理人を選任できる制度が創設される。
さらに、共用部分の変更決議の多数決要件(3/4)を、権利侵害の恐れがある場合は2/3に引き下げられる。
建て替え決議の要件緩和では、現行多数決要件(4/5)を、一定の要件を満たせば3/4に引き下げることが可能になり、建物・敷地の一部売却、建物の取り壊し、一棟リノベーション工事なども建て替えと同等の多数決議決を可能とする制度が創設される。
一括建て替え決議の要件緩和では、現行は各棟ごとの2/3以上、団地全体の4/5以上の賛成が必要なのを、改正後はいずれかの棟で反対者が1/3を超えない場合は団地全体で3/4に引き下げ、一部建て替えも現行の団地全体の3/4から団地全体の2/3に引き下げる。団地内の建物・敷地の一括売却要件も、現行では区分所有者全員の同意が必要だったのを多数決議決で可能にする制度を創設する。
マンション管理法・再生法等の改正内容
マンション管理法・再生法等の改正内容では、令和2年改正時に創設された管理計画認定制度は現在2,379件の実績があるが、制度の拡充を図るため、現行では既存マンションが対象になっているのを新築時に分譲事業者(デベロッパー)が管理計画を作成し、管理組合に引き継ぐ仕組みを導入し、認定に係る表示制度を創設する。
管理組合役員の担い手不足の課題解消のため期待されている管理業者管理者方式の改正では、管理業者と管理者の利益相反を防止するため、管理者受託契約に係る重要事項を区分所有者に説明し、書面を交付すること、自社または関連会社との取引を行う場合は、取引の前に区分所有者に説明することを義務化する。
区分所有法の改正により創設された新たな再生手法(一棟リノベ、建物・敷地の一括売却、建物の取り壊しなど)について、新たな決議に対応した事業手法(組合設立、権利変換計画、分配金取得計画など)を整備するため、マンション再生法の合意要件を緩和、引き下げを行う。また、マンション再生に関するガイドラインやマニュアルを整備し、独立行政法人住宅金融支援機構法(JHF法)の改正により、マンション再生の取り組みを金融面でサポートする。
隣接地の所有権や借地権、底地権を建て替え・再建後のマンションの区分所有権に権利変換できるようにし、特定行政庁の許可による容積率特例制度に高さ規制要件を緩和する特例を追加する。
地方公共団体の取り組みの充実を図るため、地方公共団体がマンションの管理に関して助言・指導・韓国でできるよう権限を強化するため、地方公共団体の内部情報の収集や、財産管理制度の申し立てなどが行えるようにする。また、NPO法人など民間団体をマンション管理適正化法人として登録する制度を創設する。