第53回「名橋『日本橋』橋洗い」
「名橋『日本橋』保存会」は7月27日、第53回「名橋『日本橋』橋洗い」を開催。日本橋地区の町内会や三井不動産を中心とする地元企業・テナントなどから約1,800人が参加した。イベントには消防署から散水車・はしご車も出動し、子どもたちは〝パンツの代えないからね〟と叫ぶ親の声など無視し、全身ずぶぬれになって楽しんだ。猛暑・酷暑の中、一帯にしばし涼しい風が吹いた。
「名橋『日本橋』橋洗い」は、日本橋の美化保存を目的に年に一度、子どもから大人まで、日本橋地区の町内会や地元企業など「日本橋」を愛する多くの地元関係者が参加するイベント。オープニングセレモニーでは、日本各地の名水を「日本国道路元標」に注ぐ「名水 水あわせ」が行われ、環境に優しい洗剤を使用し日本橋を手作業で洗いあげた。仕上げに東京国道事務所の散水車や消防車により、1年の汚れを落とした。
イベントの冒頭、名橋「日本橋」保存会会長・中村胤夫氏は「東京オリンピックの開催にあわせ川を見上げるように建設された首都高は、あと15年すると地下化され、この橋もなくなる。青空が戻ってくる。待ち遠しい限り。伝統を未来につなぐ日本橋になってくれることを願っている。散水車も来てくれる。皆さん、がんばりましょう」と声を掛けた。
このほか、来賓として中央区長・山本泰人氏、中央区議会議長・原田賢一氏、東京国道事務所長・本田卓氏、中央警察署長・中島勝仁氏、日本橋消防署長・石澤幸洋氏、衆議院議員・辻清人氏、参議院議員・片山さつき氏、前東京都議会議員・石島秀起氏、首都高速道路 更新・建設局長・高野正克氏があいさつした。
〝パパ、心も洗ったほうがいいよ〟
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初めて取材した。これほど大掛かりなイベントだとは全然思わなかった。それぞれおそろいの法被姿で、手には橋を洗うためのブラシを、足は濡れてもいいグッズ・草履履きないでたちで橋洗いにいそしんでいた。
色とりどりの法被は、デベロッパーの三井不動産、野村不動産、東京建物、大栄不動産(三菱地所はなかった)、日本橋のたもとに本社ビルを建設中の野村ホールディングスに三越伊勢丹、文明堂、千疋屋、山本山、みずほフィナンシャルグループ、三井住友銀行、清水建設、鹿島建設、TORAY、マンダリンホテル…さすが日本橋だ。
イベント冒頭のあいさつは、中村氏だけは何とか聞き取れたが、約30分続いたそのほかの方の声は首都高の騒音と参加者の歓声にかき消され、全く聞き取れなかったのだが、さすが選挙演説で鍛えたのか、片山さつき氏の大きな〝足を洗います〟との声が聞こえてきた。しめたと思った。ごたごたに嫌気がさしたか。大スクープだ。しかし、そうではなかった。周囲の方に聞いたら、「足」ではなく「橋」を洗うとのことだった。
三井不動産社長・植田俊氏も準備万端。法被に短パン、運動靴の作業スタイルで元気な姿を見せていた。「(社長、毎回参加しているんですか)もちろん、10年以上、いや、20年近くかもしれない」とのことだった。
三井不動産・植田社長
中央が片山さつき議員(足を洗う気はないのかハイヒールだった)
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国土交通省に「東京都心における首都高速道路のあり方委員会」が設立された2002年前後の頃だ。記者は当時、三井不動産社長・岩沙弘道氏が「わたしが生きている間に日本橋川が再生されるのを見たい」と語ったのを覚えている。その時は、とても無理だろうと思った。岩沙氏が長生きしても日本橋川が再生されることなどありえない、絵空事だと。
ところが、岩沙氏の想いは、次期社長・菰田正信氏に引き継がれた。同社が〝残しながら、蘇らせながら、創っていく〟というキャッチフレーズを掲げ、日本橋再生計画を本格化させたのは菰田氏が社長に就任した平成23年(2011年)ころからではなかったか。
そして、平成28年(2016年)、国家戦略特区都市再生プロジェクトとして首都高の地下化のフ具体化の検討が始まり、平成31年(2019年)、都市計画変更素案が示され、同年、神田橋JCT~江戸橋JCT間を地下ルートで整備することが決定された。高架橋の撤去工事の完了は2040年度の予定。
今から15年後の2040年といえば、岩沙氏は98歳、菰田氏は86歳、植田氏は79歳だ。それぞれ白寿(99歳)、米寿(88歳)、傘寿(80歳)を迎えるころだ。3人揃って再生が実現した日本橋川を見たとき、なにを話すかとても興味がある。記者が生きているなら91歳だ。インタビューしたいものだとは思うが…アユやヤマメは無理としてもフナやコイが泳ぎ、セーヌ川がそうなったように水泳・水遊びができ、両岸には四季の草花が咲き誇り、トンボや蝶、ツバメにウグイスなどが飛来する姿を見られるようになってほしい。
若い記者の皆さん、この日本橋川の再生を過去にさかのぼってぜひ取材していただきたい。ベストセラーになるのは間違いない。
アールの形状が美しい建築中の野村グループ本社ビル(事業全体は「日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業」、施工は清水建設)
三井不動産 ビルも賃貸も億ション並み「和」盛り込んだ「日本橋再生」(2014/1/29)
これでいいのか 川に背を向ける日本橋の街(2008/5/19)