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2025/08/07(木) 12:18

柔軟オフィスは生産性・WB・仕事の先延ばしに好影響 永山晋・一橋大大学院准教授

投稿者:  牧田司

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多田氏(左)と永山氏(BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S 28階ラウンジで)

 野村不動産は8月6日、「BLUE FRONT SHIBAURAメディアセミナー」を開催し、同社と共同研究を行っている一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科准教授の永山晋氏(43)が、学術誌Scientific Reportsで審査中の「オフィス環境は職場のパフォーマンスに影響を与えるのか? 」をテーマにした論文内容を報告。多様な場所が選択できるオフィス環境(柔軟オフィス)は生産性、ウェルビーイング(WB)、仕事の先延ばしにポジティブな影響をもたらすと語った。

 セミナーの冒頭、同社芝浦プロシェクト事業部・多田剛孝氏は「BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S」の概要などについて説明し、「専有部の約10%の3,300坪(10,890㎡)の共用空間を用意しており、これほどまでの共有空間を有するオフィスは国内にそうない」とし、約1,500坪(4,950㎡)の28階のラウンジなどを含め、「世界最高水準の圧倒的な共用空間」を強調した。

 永山氏との共同研究については、「多様な場所、チョイスがあることで何がよくなるか、具体的に明らかにできればさらに説得力が増すという仮説のもとに、先生にお声掛けした」と説明した。

 これを受け、永山氏は学術的な背景として、多様な場所が選択できるオフィス環境(柔軟オフィス)はワーカーのパフォーマンスを高めるのか、ポジティブ、ネガティブのどちらの結果も併存し、実験的手法が限られており、因果の理解も限定的であるとしたうえで、柔軟オフィスがもたらす矛盾を説明しうる3つの要因(①オフィス環境から「資源」をうまく得られるか②個人的特性③ワークスタイル)に焦点を当てフィールド実験を行ったと話した。

 実験は、野村不動産の新宿本社勤務社員195名を対象に、新宿本社の固定オフィス勤務要請50名と、浜松町のトライアル柔軟オフィス勤務要請145名に分け、柔軟オフィス勤務と固定オフィス勤務とでは生産性・ウェルビーイング・仕事の先延ばしがどうなるかをBefore&Afterの2度にわたるアンケートにより検証した。

 柔軟オフィス勤務要請を行った145名のうち柔軟オフィス勤務を選択したのは94名で、残りの51名は固定オフィス勤務選択した(要請にもかかわらず固定オフィス勤務を選んだ人の気持ちはよくわかる)。

 アンケートの結果、柔軟オフィスを積極的に活用した場合のパフォーマンス・スコアは、固定オフィスと比較し、生産性は18.8%、ウェルビーイングは22.3%、仕事の先延ばしは19.8%低い水準となった。

 柔軟オフィスでリラックスして仕事をする場所の多様性は生産性と仕事の先延ばしに対してポジティブな影響を及ぼし、集中して作業する場所の多様性も、生産性に対して有意にポジティブな影響を持つことを示唆した。一方で、同僚とのコミュニケーションをする場所の多様性、フォーマルな会議を行う場所の多様性、カジュアルな雰囲気で行う場所の多様性の影響については有意な影響は検出されなかったという。

 この結果について、永山氏は、誠実性が高い人、リラックスしながら多様な場所を活用する人にとって柔軟オフィスは有効であると話した。

 また、先延ばしは、現在と将来の報酬と労力の評価のバランスによって決定され、資源の低下は、近視眼的思考を引き起こし、とりわけ、将来生じる労力を過小評価し、「計画の誤謬」をもたらすと語った。

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BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S 28階ラウンジ

◇        ◆     ◇

 とても興味深いセミナーだった。「世界最高水準の圧倒的な共用空間」を備える「BLUE FRONT SHIBAURA TOWER S」の入居企業の生産性、ウェルビーイング、仕事の先延ばしの数値は劇的に変わるのか。そのBefore&Afterを報告してほしい。

 ただ、実験についていくつか分からないことがある。永山氏は「資源」とは認知、社会、構造、物理(ストレス・集中力、人間関係、仕事の自由度、機材の質など)と定義づけており、記者が重要な資源だと考えている価値の可視化が難しい「デザイン」「みどり」「音」「色」「アート」などはどうなっているのだろうか。

 もう一つ「誠実性」について。永山氏は、誠実性は心理学のビッグファイブモデルの一つ(他は外向性、神経症傾向、開放性、協調性)で、「柔軟オフィスでは、誠実性が低い人に対してマネジメントの工夫が必要」と話した。

 外向性や協調性に欠け、不真面目の権化のような記者はぐうの音も出ないが、28階ラウンジはビッグファイブのいずれも低いレベルにある多種多様なワーカーを受容するような気がするし、環境が全てを決定するものでもないと思う。職住近接の宿舎が与えられ、喫煙室完備の会館も利用できる究極の柔軟オフィス環境を享受できている国会議員の先生方は誠実性に欠ける人ばっかりだ(記者が選挙に行かないのは、そのような人と関わりたくないからでもある)。

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