「湯島ハイタウン」リノベ住戸
コスモスイニシアが8月、ヤマムラ建物再生室との共創によるリノベーションマンションとして分譲開始した築56年の「湯島ハイタウン」の1室を見学した。ごく普通の56㎡のプランをフルリノベーションし、玄関から居室-水回り-キッチン-LDKの空間の中央に通り土間を設け、人と人・空間、あるいは地域を自在にコントロールできるようにしているのが特徴。かなり個性的な間取りではあるが、〝さもありなん〟と納得もした。
プロジェクトは2023年の代田橋のリノベーションマンションに次ぐ第2弾。ヤマムラは、建物が持つ歴史や素材の風合いを活かし、古材の再生や職人の手仕事によって“手の跡”を残す空間づくりを大切にしている会社。
今回は、「都市部における孤独」に空間からアプローチする住まいを企画し、空間と人の関係性に焦点を当てる“間(ま)のある暮らし”がテーマ。「つながりを押しつけないが、つながる余白がある」住まいを提案している。
通り土間は奥行約7000ミリ×幅約540mm(高さ約160ミリの框部分含む)で、その左右に4.3畳大の雪見障子付き居室、バス・トイレ、R型キッチンを配し、西側の旧岩崎邸庭園が眺められるLDKに繋いでいる。間取りは2LDK。建具・家具はヤマムラとの協業により再生された古材の雪見障子や可動建具の壁を採用。リビング天井高は2200ミリ、二重床・二重天井。床は突板フローリング。
同社は、「湯島ハイタウン」での取り組みを皮切りに、今後も建物の個性と地域性を活かした“間(ま)のある暮らし”を複数展開していくという。
物件は、千代田線湯島駅から徒歩3分、文京区湯島4丁目に位置する1969年竣工の16階建て借地権付き「湯島ハイタウン」(A・B棟計400戸)、の1室(専有面積56.43㎡)。当時の売主は藤和不動産(現三菱地所レジデンス)、施工は藤田組(現フジタ)。リノベ後の価格は5,480万円(坪単価321万円)。借地料は7,000円/月。
「湯島ハイタウン」リノベ住戸
「湯島ハイタウン」リノベ住戸
「湯島ハイタウン」リノベ住戸
間取り図
「湯島ハイタウン」
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同社とヤマムラの共創リノベは、第一弾の「ステーションプラザ代田橋」に次いで2度目の見学だった。「代田橋」もそうだったが、かなり個性的な提案なので、受け入れられる人は限られているだろうが、気に入った人ひとりに買ってもらえばいいのだから、とてもいいプランだと思う。
「湯島ハイタウン」は、名前だけは駆け出し記者のころからよく聞いていた。藤和不動産の関係者から〝記念碑的物件〟だと刷り込まれたからだろう。商・住マンションとしては、1966年竣工の中野駅前の「ブロードウェイ」とともにパイオニアだというのは初めて知った。
分譲開始時の価格は、20坪で800万円(坪単価40万円)くらいではないかと予想したのだが、同社広報担当に調べてもらったら、「X」では坪35万円とあるから当たらずとも遠からず。
「湯島ハイタウン」に近接している駅前の新築マンションの坪単価が1,000万円を突破しているのに驚きはしたが、記者は2~3年後の文京区の一等地マンションは軒並み坪1,300~1,500万円になると予想している。緑などない都心3区に住むよりまだ緑が残る(多いとも言えないが)文京区のほうがいいと思う。
取材後、B棟1階にある古色蒼然とした「レストラン湯島」を利用した。オーナーの女性は「最初は文化センターで開業し、ここに移転してから40年以上。便利なところで24時間管理してくれることから脚光を浴びました。入居者は医者や弁護士、大学教授の方が多かったですね。店舗もパン屋、スーパー、蕎麦屋、寿司屋、スナック、クリーニング、喫茶店、画廊、居酒屋、洋服屋…今は私のところとパン屋さんだけ。でも、高齢者向けのデイサービスやリハビリ用の車も玄関前に停まってくれますし、いいマンションですよ。ここのコーヒーは『文京喫茶』でも紹介されました」と話した。
店内には、市場には流通していないと思われる銘柄の焼酎(合法酒のはず)のボトルが並べられていた。ラベルが凄い。古酒蒼然か古酒騒然か。人畜無害の記者などは全然関係ないが、脛に傷持つ人が飲んだらいっぺんに酔いが回り卒倒するか、あるいは瞬く間に飲み干し、外の中庭に投げ捨てるか、どっちかだろう。オーナーに確認したら「馴染みのお客さんからは宴会としてよく利用していただいており、これはお客さんからのプレゼント。売り物ではありません」とのことだった。
「レストラン湯島」