今回の地価調査は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇幅が拡大した。
一方で、資材費や労務費を含む建築費は落ち着きを見せ始めているがまだ増加傾向にあり、各事業セクターは引き続き厳しい事業環境にある。
住宅市場に関しては、郊外の一部で売れ行きに鈍化傾向がみられるが、都心部・準都心部の売れ行きは順調であり、トータルでは好調に推移している。住宅ローン金利は政策金利の引き上げに連動して上昇する銀行がみられるものの、現時点では顧客の購入マインドへの影響は軽微であり、引き続き需要が堅調である。土地取得が難しいことから、急激に供給量が増えることはないため、引き続き当面は需要と供給のバランスは大きく崩れないだろう。一方で分譲住宅の価格も上昇していることから、ハード・ソフト面で価格に見合った付加価値を提供していくことが更に必要になってくる。
オフィス市場に関しては、2025 年に東京での新規供給が集中するものの、今後中長期的には建築費増加の影響により建築工期の延期、または建築工事の中断となる物件が増えてくることも予想される。工事延期により供給時期が分散することで、需給のバランスが安定していくと見込んでいる。当社保有のオフィスにおいても空室率は低下しており、今後も低下傾向は続くと想定する。出社や採用の増加により、当社主力ブランドの PMO への拡張移転ニーズも多い。
今年 2月末には「BLUE FRONT SHIBAURA」 TOWER S が竣工し、3月に JR浜松町駅から芝浦エリアをつなぐ緑のアプローチ「GREEN WALK」が開通。7月には日本初進出のラグジュアリーホテル「フェアモント東京」が開業、8月にはオフィスフロアへの入居が始まり、当社グループも本社を移転している。東京ベイエリアを一望できる 1フロア約1,500坪の「テナント企業専用の共用フロア「BLUE SKY LOUNGE」を設ける等、競合物件との差別化を図ることでリーシングも極めて順調に進んでいる。多様な働き方に対応した多くのワークスペースが実際に使用可能となり、立地特性である空・海・緑に恵まれた自然環境を活かした新たな働き方が実践され始めている。9 月には商業店舗の開業と合わせてグランドオープンを迎えている。商業エリアは「まちのコミュニティハブ」をテーマに、オフィスワーカーに加えて地域の皆様にも開けたパブリックスペースを設けることで幅広い皆様にご利用いただき順調なスタートを切っている。
ホテル市場に関しては、引き続き非常に高い水準でインバウンド顧客の利用が続いており、当社直営ホテルとグループのUDSが運営するホテル共に稼働率やADRが高い水準で推移している。7月には「フェアモント東京」も開業し、今後様々なニーズに合わせたタイプ別のホテルを提供できるように新しいホテルの形も検討している。
当社グループは、不動産開発や関連サービスの提供を通じて、お客様一人ひとりの「Life」や「Time」に寄り添うことを大切にしてきている。従来から、「個々のお客様を起点とした価値創造」の手法の進化・変化を図って参りましたが、刻々と変化する事業環境の中で更なる成長を実現するため、これまで拡大してきた事業基盤を基に、価値創造の進化・変革をグループ一丸となって進めていくべく、4月に新たなグループ経営計画を策定している。野村不動産グループ2030年ビジョン「まだ見ぬ、Life&Time Developerへ -幸せと豊かさを最大化するグループへ-」の実現を目指し、グループ全体で、新たな付加価値を創造し、お客様に多様な付加価値を備えた不動産関連商品・サービスをこれからも提供していく。