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2025/10/09(木) 21:33

〝訳あり不動産〟845万戸 山積する課題浮き彫りに ネクスウィル調査

投稿者:  牧田司

Screenshot 2025-10-09 at 21-29-16 【News Release】約8割が知らない売却できる資産 全国845万戸の”共有持ち分付き住宅”の持つ課題とは 訳あり不動産市場調査.pdf.png
(提供:「株式会社モニタス」) 

空き家・訳あり不動産の買取再販サービス「ワケガイ」・空き家・訳あり事業を展開しているネクスウィルは109日、メディア向け「訳あり不動産の実態に関する勉強会」を開催し、「共有持ち分」に関する訳あり不動産実態調査結果を発表した。

調査は、全国40歳以上の男女11,199人を対象にインターネットリサーチにより「株式会社モニタス」が実施したもの。「訳あり不動産」とは、相続や権利関係の複雑さなどにより、売却や活用が難しい不動産を指す。

調査の結果、40歳以上家計主世帯における3,112戸の現住戸の持ち家数のうち、共有持ち分付き住宅は全国で845万戸(現住戸が612万戸、現住戸以外が233万戸)にのぼり、大都市圏に集中し、「隠れ資産」の存在感が浮き彫りになったとしている。

「共有持ち分の住宅や土地を売ることができる」と認識している人は全体で16.5%にとどまり、共有持分所有者の売却可能性の認知度は28%にしか過ぎないことも分かった。相続後に必要となる手続きや、手続きを行わなかった場合に起こり得るリスクの理解も2割程度にとどまっている。

共有持ち分を所有する人の9.4%が「困っている」と回答し、その悩みとして「税金や管理費用などの費用負担があること」(46.7%)のほか、「共有者との関係が良くない」「一部の共有者だけが使用しており、自身にメリットがない」「共有者の所在や連絡先が不明である」などと、人間関係や権利の不透明さに悩みを抱えていることがわかった。

このような悩みを抱える人のうち約7割が「時期を問わず解決したい」と考えており、「すぐにでも解決したい」と答えた人は10.3%にのぼった。

一方で、共有持ち分に関する専門家などへの相談経験がある人はごくわずかで、「相談したことはない」と答えた人が88.7%を占めた。

同社は結果について、同社代表取締役・丸岡智幸氏は、「買取再販業は、銀行からの融資を受けて事業展開しているが、このような『訳あり物件』は融資が下りない。当社はこれまで約300件の実績を通じてノウハウを蓄積してきた。問題を次の世代に先送りするのではなく、早め早めの対応が求められる。当社は、空き家対策に悩んでいる全国の自治体と連携を強化し、社会的課題の解決につなげたい」と話した。

同社の2024年度の買取実績は27.4億円(425件)で、うち「共有持ち分物件」は116件。2025年予測は42億円(800件)で、うち「共有持ち分物件」は200件を予測している。累計の「共有持ち分物件」取り扱い件数は約300件。自治体との連携による成約件数は約10件。

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丸岡氏

◇      ◆     ◇

 空き家問題に関心がないわけではないが、テーマが大きすぎて、手に負えないのでこれまでほとんど取材してこなかった。絶対的・排他的に保障されている財産権に踏み込むのは一筋縄でいかないからでもある。

 なので、同社のような取り組みをしている会社があるのにびっくりした。累計で約300件の買取実績があるというではないか。しかも、連携している自治体は岩手県紫波町、愛媛県八幡浜市、沖縄県宮古市、大阪府阪南市といえば、阪南市はともかく、往復の交通費だけで数万円、日帰りは無理だろうから1回の出張代を考えたら、ペイするとはとても思えない。それを社員が直接出向いて交渉するのだという。近親憎悪という言葉があるように、親族間のトラブルは容易に修復できないのはみんなよく知っていることだ。気の遠くなるような、複雑に絡み合った糸をほぐす、このようなビジネスモデルを構築した同社を応援したい。専門家に相談したら、アドバイスは得られるだろうが、解決策を提示する専門家は皆無のはずだ。

 国土交通省の空き家対策総合支援・空き家再生等推進事業費の令和8年度予算概算要求額は70.80億円、1都道府県当たり額は約8,700万円だ。この額が多いのか少ないのかよく分からない。空き家の増加による社会的・経済的損失額をAIに聞いたら、「約3.89兆円の経済損失や、固定資産税の負担、資産価値の低下をもたらし、社会的損失としては、治安の悪化や犯罪の温床化、景観の悪化、近隣への被害、地域経済の衰退や過疎化を加速させるなどの問題を引きおこします」と返ってきた。

        ◆     ◇

いつか記事化を考えているのだが、国や業界に言いたいことが一つある。「有料老人ホーム」「特別養護老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」もそうだが、「訳あり不動産」「事故物件」「嫌悪施設」「心理的瑕疵」などの文言を改めていただきたいということだ。

消費者は「訳」があるから不動産を売ったり買ったりする。空から人が降ってくる時代だ、世の中は「事故」だらけではないか(これは微妙な問題だが、「自死」はどうして「事故物件」になるのか。生きようが死のうが自由ではないか。生きづらい世の中を変えるべき)。「嫌悪施設」はほとんどエッセンシャルワーカーが勤務する施設だ。先祖代々が祭られている「墓地」を嫌悪することは、自己を嫌悪することにならないのか。

これらの文言・不動産用語は、問題を解決するのではなく、より問題を複雑化し、社会的・経済的格差を助長しているように思えてならない。

 

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