
植田社長(帝国ホテルで)
三井不動産は10月20日、恒例の記者懇親会を開催し、約200人のメディア関係者が集まった。冒頭、同社代表取締役・植田俊社長は次のようにあいさつした。
世界では、トランプ政策が与える影響、地政学的なリスクが懸念されており、国内では行政の混迷が続いている。一方、経済に目を向けると、堅調な内需と設備投資をベースに穏やかな回復が続いている。継続する賃上げと物価との好循環が生まれでインフレ成長を成熟させる成長型経済へ向かう大きな転換期を迎えている。
この良好な経済情勢を象徴するかのように、最近のスポーツの世界では、サッカー日本代表がブラジルを逆転で破り、大谷翔平はそれこそ野球の新しい歴史を作る活躍をし、また、ノーベル賞では生理学・医学賞と化学賞の2人の先生が受賞される明るい話題があった。(これらの流れに水を指す)政治の混迷が経済やマインドを引っ張ることのないよう祈りたい。
わが国のこれまでの30年間に及ぶデフレの時代は、付加価値が正当に評価されず、イノベーションが起きづらい時代だった。デフレを脱却し、インフレを定着させるパラダイムシフトが今起きており、これからの時代は付加価値が正当に評価され、イノベーションが起きる必要条件が整ったと認識している。これまでの〝良いものを安く〟という考えを〝良いものを価格に表現させる〟という考えにマインドをリセットする必要がある。
これは、当社にとって大きなチャンスと考えている。付加価値創造企業として圧倒的な力を有している当社グループの存在感が高まっていると確信している。
当社は昨年4月、長期経営計画「&INNOVATION 2030」を策定した。これまでの不動産デベロッパーの枠を超えた産業デベロッパーとして我々の姿を進化させ、社会のイノベーション、価値創出に貢献していく。今年は長期経営方針に基づく2年目の年になり、2030年までの目標達成に向け着実に進捗させていく。

メデイア関係者は約200人
オフィス事業は、よく事務所と訳されますが、もはや事務作業をする場所ではなく、コロナ禍を経てオフィスはリアルのコミュニケーションにより、付加価値を生み出す現場として位置づけられるようになった。働き手が自発的に行きたくなるオフィスの中を着飾るだけでなく、行きたくなる街にあることが必要。日本橋の街づくりやミッドタウンに代表されるミクストユースの街づくりが重要である。今後、当社は複数の大規模再開発を進めており、2026年竣工の「日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業」は、首都高速を地下化する国家プロジェクトの一翼を担い、エリアのミクストユースを進展させるプロジェクト。すでに満床となっている。「八重洲二丁目中地区第一種市街地再開発事業」は住宅、インターナショナルスクール、劇場などの機能を備える再開発で、既にホンダをはじめ複数の成約を得ている。その他、足元のオフィス空室率は低水準にあり、リーシングは順調に進んでいる。
商業施設・スポーツ・エンターテイメント事業は、今年は8月に2棟目となる名古屋アリーナを着工するなど複数の国内新規開業・リニューアルがあり、ネットワークを拡大した1年。当社は相乗効果による新しい体験価値の創造に取り組んでいる。買い物とスポーツ・エンターテイメントに共通するものはアドレナリンが出るということ。昨年開業した「アリーナ東京ベイ」から近隣のららぽーと滞留効果が生まれ、東京ドームのコンサートやMITASHITA PARKなどとのシナジーが生まれている。また、商業施設ショッピング会員は1,425万人に、アプリからコンサートチケットなどを購入でき、Z世代の取り込みにも成功している。
ホテル・リゾート事業は、稼働率、客室単価とも高水準。インバウンド需要も取り込み、来年は「HOTEL THE MITSUI HAKONE」の開業を予定しており、ラグジュアリーホテルの展開にも注力していく。
住宅事業は、堅調な需要に支えられ、グループ分譲している都心・大規模・再開発マンションが順調に推移している。「日本橋一丁目中地区」には、ヒルトンの最上級ラグジュアリーブランド賃貸「ウォルドーフ・アストリア・レジデンス東京日本橋」を提供することを公表した。
物流事業は、データセンターや冷蔵冷凍倉庫にも進出しており、近年成長が著しい事業。街づくり型、防災拠点、いこい場を提供し、労働力不足などにも先端技術を駆使し開発を進めていく。
海外事業は、イギリスで英国図書館再整備を含むオフィス、ラボ、商業などの大規模開発に参画することが決定した。アメリカでは当社のフラッグシップ「ハドソン・ヤード」は満床となった。4番目の支店をテキサス州ダラス市に設立し、サンベルトエリアでの高級賃貸住宅も竣工する。この他、世界各地で当社グループの強みを生かしたまちづくり型事業を推進していく。
ソリューション・パートナー本部・産学連携事業は、熊本空港の民営化への事業参画、台湾でのサイエンスパークの開発を進めている。アカデミア、自治体、地元企業と連携し実効性のある新しい地方創生に貢献していく。ライフサイエンス事業のLINK-J会員は1,000社超となり、年間イベント数は年間約1,000件に上る。宇宙ビジネス領域における会員数は3年で300以上となり、さらに半導体共創拠点をオープンした。本気でイノベーションを起こし、圧倒的な価値を生み出し、産業競争力が求められている。産業活性化に寄与しともに成長していく。築地地区でも先進的な街づくりを推進していく。
神宮外苑地区の街づくりは、世界有数のスポーツクラスターとなる。新秩父宮ラグビー場の着工を来年2月に控え順調に進捗している。老朽化した施設の建て替えによる収益をもとに、約72haの都心の奇跡の森、神宮内苑の森を民間主導で守っていく、次の世代に繋ぐ未来志向の社会的意義も大きいなプロジェクトでもある。
私どもは、地球を素材としてビジネスを行う立場。これまでも人一倍環境に配慮した取り組みを行ってきたが、今年4月、環境との共生宣言 「&EARTH for Nature」を策定し、自然と人、地域一体として環境を整え、それぞれの魅力が循環し、時を経るごとに輝きを増す豊かな環境を生み出していく。
その象徴的なプロジェクトである国内最大の木造賃貸オフィス「日本橋本町一丁目3番計画」は来年竣工するが既に満床。当社が北海道で所有する約5,000haの信連の木材などを活用して〝植える・育てる・使う〟の持続可能な森林循環を木造によって貢献していく。新たな2棟目の木造ビルも着工する予定になっている。

