
「11 PROJECTS.56 CREATORS.PRODUCT DESIGN.」(日本橋三井ホール)
alter.実行委員会(特別協賛:三井不動産)は11月7日~9日、「11 PROJECTS.56 CREATORS.PRODUCT DESIGN.」を日本橋三井ホールで開催した。前日の6日にはメディアにも展示会場が公開された。イベントは資金・コスト面で開発が難しい若手クリエイターを支援するのが目的で、会場には11組・56名が出展。建築材にはならない樹木の皮、産業廃棄物として捨てられる陶器くずを商品・アートとして再生したり、わが国の伝統的な縄による梱包手法をアートに昇華させたりしている。無限の可能性を秘めた作品ばかりだった。
〝alter.〟は「変える」という意味で、全てを入れ替える〝change〟とは異なり、一部を作り変えて全体をよりよくするというもの。プロダクトやインテリアのプロトタイピングにはコストがかかり、若い世代のクリエイターの参入障壁になっている現状を変えようと、若い世代が持つ新しい発想を形にする支援するのが目的で開催された。
イベントには35歳以下の国内若手デザイナーを中心に現代美術家、写真家、編集者、研究者、音楽家、ダンサー、アートディレクター、エンジニアなど11組・56名が出展。コミッティメンバーには、ニューヨーク近代美術館(MoMA)やポンピドゥーセンターのキュレーターなど国際的に活躍する審査員が名を連ねている。

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記者の一押しは、京都と福井で活動しているLIVE phenomenonの上田樹一氏(26)のヒノキの椅子(32万円)とオットマン(7.5万円)だ。ヒノキの樹皮が座面になっているのを初めてみた。摩耗したらどうなるかとは思ったが、微細なデザインは壁材など様々な用途に採用できるはずだ。
HAMA Reimaginedもいい。「HAMA」とは、陶磁器の焼成時に生じる台座のことで、器ごとに形が異なるため使用後は再利用されず、廃棄されることが多いが、展示では様々な商品やアート作品に仕上げられていた。SDGsの時代の流れにぴったりで、爆発的にヒットするのではないか。無限の可能性を秘めていると思った。
Packing listは、わが国の伝統的な石工の縄による梱包手段をアートに昇華させた作品。これもまた梱包のあり方を世に問うものだ。不織布は雨ざらしにしても5年間は持つというスグレモノだ。

上田樹一氏の作品

座面

HAMA Reimagined

HAMA Reimagined

Packing list
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一つ腑に落ちないことがあった。イベント説明者によると、この種のクリエイターは圧倒的に男性が多く女性は少ないということだ。今回のイベントでも応募総数59人のうち女性は8人だったという。ジェンダー・ギャップがこの創造的分野でも解消されていないことを知って衝撃を受けた。
これはなぜか。素人の記者が考えるに、扱う素材が重いとか制作現場が汚い、制作するのに力がいる、危険が伴う、時間がかかる…このようなハンディはありそうだが、プロダクトに対する審美感は男性以上に優れているはずだ。女性の活躍(これまた嫌な言葉)を阻む何かがわが国には存在するのか(記者と同じグループのメディア関係者は圧倒的に女性の方が多かったのはなぜか)。

