この日(2月7日)の外気温は2℃(華氏35.6度)。団地の会合を終えてから、雪が降りしきる中、いつものように駅前の日高屋で熱燗1合と半ラーメンの昼食。
もう1杯飲みたかったが、この前〝もうアル中同然〟と後輩の記者にたしなめられたので我慢し、駅直結の市役所出張所に設けられている衆院選期日前投票所に向かった。ポケットには衆院選投票券を入れていた。選挙権はもうもう30年以上行使していない。理由は簡単。騙されるのが嫌だからだ。ならは〝拒否〟(逃避と同義語)するのが一番だと。
まあ、しかし、〝天下分け目の戦い〟かどうかは分からないが、同年代の同業Hさんに馬鹿にされるのも嫌だから、一念発起して投票しようと考えた。
豈図らんや。信じられない光景を目にした。投票所そのものはビルの中にあるのだが、中に入るには吹きさらしのアーケードで待たなければならない。案内係の人に聞いたら、待ち時間は1時間以上だ。人数を数えた。約120人(このほか選挙権がないと思われる子どもが約10人)の黒づくしの老弱男女…蟻聚そのものだ。どこかの軍事政権に強制(去勢)された愚民かと思った。凍え死んだらだれが責任を取るのかと。
しばし様子を見ようと、これまたいつもの駅前のDOOTORでタバコを吸いながら思案した。〝行かない-行きます-行く-行くとき-行けば-行け〟…何度も自問自答したが、〝行くな〟と命令するもう一人の自分がいた。雨にも雪にも勝てない、逃げるが勝ちだ。投票される方には頭を下げるほかない。
帰り道、駅頭では赤でも黒でもない黄色だったか。どこかの政党が〝どれほど怖い世の中に向かっているか…外国人…〟などとがなり立てていた。俺も〝害人〟の一人だ。
東京都第30区は、府中市、多摩市、稲城市からなり、有権者数は約42万人、受かるのは一人。当選される方は有権者を裏切らないで頂きたい。
◇ ◆ ◇
「このあいだの選挙、みんなとおなじように投票したわ。ノーブル大統領にいれてみたの。あの人、これまで大統領になった人のなかで、いちばんハンサムだと思うわ」
「ああ、でも対立候補のほうはね!」
「あっちはたいしたことなかったわよ? 背は低いし、地味な感じだし、ひげがちょっとのびてたし、髪もちゃんとくしをいれていなかったみたい」
「野党はなんであんな人を候補にしたのかしら? 背の高い相手に、あんな背の低い人をかつぎだすなんてね。それに-あの人、もごもごしゃべるし。話の半分は聞き取れなかったもの。おまけに聞こえたところは、わけがわからなかった!」
「太りすぎだしね。しかもそれを服でカバーする工夫もしていなかったし。ウィンストン・ノーブルが圧勝して当然よ。名前の差もあるわね。ウィンストン・ノーブルとヒューバート・ホーグを十秒くらべたら、それだけでほとんど決まりだわ」
――これは〝選挙棄民〟の小生が言っていることではない。レイ・ブラッドリーが今から70年前に書いた「華氏451度」(早川書房)から引用したものだ。

