
嶋野木工所(嶋野浩司氏)が制作した「オアシス妙典」でしか見られない組子細工アート
ものすごい名工の組子細工を見た。ポラスの分譲戸建て「リーズン妙典」(全7棟)の入居者ワークショップイベントの取材が終わった後、物件の道路を挟んだ対面にある古民家を改装し、近隣住民に開放している「オアシス妙典」を見学した時だ。
オーナーの篠田清氏(85)や施設の運営会社、主催者などの話を聞き、建物の内部を観察していたら、壁面に組子細工アートがさりげなく飾られているのが目に飛び込んできた。大きさは横1間(180cm)×高さ約50cmが2枚。見学会が終わったので、篠田氏に「この組子が素晴らしいですね」と声をかけた。
篠田氏は「さすが、この価値が分かったら素晴らしい」(この時点で、記者は普通の組子細工だと思っていた)と応え、「作品は佐倉市の嶋野木工所(嶋野浩司氏)に依頼して制作してもらったもの。これはわが国に3つしかないうちの一つ。しかも他の作品は門外不出で、写真でしか見ることができない。制作者はすでに亡くなっている。普通の組子細工は直角でできているが、これは斜めに組んでいる。しかも、スギ材ではなく、硬い欅。嶋野さんは現存する作品の写真を見て制作されたという。制作期間は3年。嶋野さんはまだ40代、稀有な名工」と語った。
作品をしっかり確認した。その通りで、組子のひとつ一つはみんな斜めになっていた。どのようにしてこのような作品を制作したのか知る由もないが、わが国に一人しかいない、しかもここにしかない作品を見ることができてとてもうれしくなった。ネットで検索したら「三ツ組手」というのだそうだ。アスリートに例えたら、体操の3回宙返り3回ひねり後方かかえ込みか(そんな技があるのか)。
建物は、3間×6間=18坪。篠田家は酒の小売店を営んでおり、母屋を建て替えるため借り住まいとして昭和9年に完成したもの。母屋の完成後は倉庫として使用されていた。
記者は、人間もそうだが、建築物を見るときはいつも〝美しいか醜いか〟〝本物か偽物か〟〝素材は何か〟を自分の物差しで判断し、見た通りに記事にすることを心掛けている。それが記者の責務だと思っている。見方が間違っていようがそんなことは問題ではない。篠田氏に声をかけたからこそ、国宝級の作品を見ることができた。読者の方も見学されることをお勧めする。

「アトリエ妙典」

内観(右側の壁に飾られているのが組子細工)




篠田氏

「TOFROM YAESU TOWER」の「日本橋やぶ久」に掲げられている組子細工(担当者は「お金をかけすぎたか」と苦笑していた)

