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2013/09/05(木) 14:40

地揚げから30年 坪330万円のマンションに再生「Tomihisa Cross」

投稿者:  牧田司

野村不動産のすごさを見た 「第九」に「1000のイゴコチ」

 

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 野村不動産(事業比率41%)、三井不動産レジデンシャル(同35%)、積水ハウス(同14%)、阪急不動産(同10%)の4社JV再開発マンション「Tomihisa Cross」の記者発表会が9月5日、現地の近くで行なわれた。敷地面積は約2.5ha、山手線内の最高層となる55階建てタワーマンション(1,093戸、非分譲住戸含む)をはじめ、賃貸住宅、ペントハウス住宅を含めると全1,230戸の規模で、大型スーパー、認定子ども園、区の防災倉庫なども備えた大規模複合物件となる。

 物件は、東京メトロ丸ノ内線新宿御苑駅から徒歩5分、新宿区富久町に位置する全1,093戸。専有面積は36.22120.65㎡、価格は未定だが、最多価格帯は6,800万円台、坪単価は330万円前後になる模様。設計・監理は久米設計、施工は戸田建設・五洋建設。

 現地は、昭和60年代の前半に激しい地上げが行なわれたエリアの一角で、1990年に地元住民らが「まちづくり研究会」を立ち上げ、早大の支援などを受けながら計画を進めてきた。2008年に野村不動産を中心に4社が参加組合員として事業に参画した。「産・官・学・民」が街づくりを配信するプロジェクトでもある。

 商品企画に当たっては、〝世界一のイゴコチ〟を目指し、2013年から「Tokyoイゴコチ論争」を開始し、WEBやアンケート、座談会を通じ約10万件もの声を集め、その寄せられたアイデアを1000個の「イゴゴチ」にまとめて公表している。

 建物は地震の揺れを低減させる制震柱と、強風による揺れを軽減する粘性ダンパー・プレースを組み合わせた「デュアル制震構造」となっている。

 住戸プランは22階以上が無償のプランセレクトと有償のオーダーチョイスを、27階以上は間取りの一部を自由に変更できる有償のゾーンオーダーを、43階以上は水回り以外の部分の位置が変更できるオーダーメイドが、46階以上は隣接する2つの住戸を一つに合わせられる2戸連結が、49階以上は水回りを含めた部分を含めたプレミアムオーダーメイドが受けられるのが特徴。

 春から物件告知を開始し、これまで問い合わせは1万件を突破し、来場者は約3,500件に達している。第1期分譲は9月中旬で、500戸近い戸数を供給するという。オーダーメイドの要望は約150件あり、今後も増加するようだ。億ションは23戸だが、一挙に販売する模様だ。2戸連結についても20件ぐらい検討している人がいるという。地権者のほとんどは65歳以上のようだが、数は未公表だった。

 

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      ◆      ◇

 記者にとっても感慨深いマンションだ。記者はバブル発生前から10年間ぐらい新宿御苑で勤務しており、周辺の飲み屋はほとんど網羅した。現地のある靖国通りの北側のほうは道も狭く、雑多な街だったのでほとんど行かなかったが、それでも地上げ(地上げの関係者は、その土地の権利を引き剥がすという意味で『地揚げ』という言葉を使っていた)については富久町から新宿ゴールデン街、西新宿を取材して歩いた。

 地揚げ前は坪200万円もしなかった土地がバブルの絶頂期には坪2,000万円に暴騰し、道路付けに必要な要の土地は坪1億円で売買されていた。国土法の規制区域や監視区域制度を守る地揚げ屋などほとんどいなかった。無法地帯と言ってもよかった(最上恒産が告発されたのはずっと先だ)。

 そんな虫食いとなった土地が30年経過して立派なマンションになる。隣接地では10年ぐらい前、同じ再開発マンションを近鉄不動産が分譲したが坪単価は260万円ぐらいだったはずだ。

 なぜこれほどまで再開発に時間がかかったのか。関係者が地権者の数を公表しなかったことに、欲と傷の深さが凝縮されているように思った。余談だが、藤圭子さんが地揚げの舞台となったマンションで自殺されたが、記者は地揚げに翻弄された新宿の飲み屋を歌った曲が一番好きだった。

      ◆      ◇

 驚いたことがある。シアターで「第九」の第4楽章がBGMとして流れたのだ。長い記者生活の中で「威風堂々」は何回か経験したことがあるが、第九が流れたシアターなど寡聞にして記憶がない。 

 幸運にして、この第九を採用することを提案したスタッフの一人、野村不動産住宅事業本部営業企画部営業企画課の佐々木まどかさん(さん付けがぴったりの若い方)に話を聞くことができた。佐々木さんは「私はここで生まれて育ちました。日本一のイゴコチのいいマンションにふさわしい、自信が持てるマンションにぴったりだと思って第九を選びました」と話した。

 この言葉に同社のすごさを感じた。あの雑多な街をよくぞ「日本一イゴコチのいい街」としてアピールし、第九をイメージ戦略として採用したものだ。一挙に500戸近くを供給することなど信じられない。「1000のイゴコチ」を詳細に紹介したリーフレットは新聞紙の大きさで全8ページ、コート紙が使用されているので重さは138グラムあった。同社の「桜上水」もこれまた坪330万円ぐらいになるのではないか。

◇      ◆      ◇

 比較にはならないが、見学会の帰り、御苑の駅前で一建設の「プレシス新宿御苑」(32戸)のモデルルームも見学した。新宿駅から徒歩4分、または新宿三丁目駅から徒歩2分で、坪単価は350万円。4月末から分譲開始されており、残りは1戸。購入者は単身者やDINKSだそうだ。

 

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モデルルーム

 

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