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2013/09/14(土) 17:11

〝宮脇檀さんにまた会えた〟 積水ハウス「コモアしおつ」

投稿者:  牧田司


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「コモアしおつ」 「トリコパルク」街区

平均70~80坪の広さと植栽計画が特徴

  「四方津」を「しおつ」と読める人はそれほどいないはずだが、記者はパブロフの犬のように「しおつ」に条件反射して積水ハウス「コモアしおつ」を見学した。十数年ぶり、造成中を含めると5度目の見学だったが、別荘風の「トリコパルク」を含め約80haの団地を電動アシスト付き自転車で隈なく回った。

 物件は、八王子駅から約30分、JR四方津駅を降りて、全長約209メートル、比高差約89メートルを上り下りする斜行エレベータに乗って約5分の山梨県上野原市コモアしおつに位置する開発面積約80ha、予定区画数1,413区画。平成3年から建売住宅や停止条件付き宅地分譲が行なわれている。これまでに1,347区画が分譲済み。

 故・宮脇檀氏が基本設計を担当した団地として知られており、ループ状の道路、ボンエルフなど人に優しい街づくり、1区画平均70~80坪のゆったりした区画割が特徴の団地だ。管理組合を設け、共用施設の維持・管理を行なうのも戸建て団地としては先進的な取り組みだった。

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「時計のこうえん}(左)と街並み

◇     ◆   ◇

 団地見学会はプレハブ建築協会が9月13日に実施したものだ。記者は忙しくて参加申し込みしなかった。ところが、前日、積水ハウス「グランドメゾン狛江」を取材したとき、同社の広報担当者から「しおつ」の名が出たとき、条件反射を起こした。過去4度も取材しているように「しおつ」が好きなのだ。それでも1度は断ったのだが、当日に飛び入り参加することを決めた。バス乗り場の新宿西口に着いたのは出発予定の20分前だったが、乗り場が分からず、結局電車で向かった。

 現地に着いた11時ころにはすでに見学会は終了していた。ここで、同社から思いがけないプレゼントがあった。電動アシスト付き自転車を貸してくれたのだ。自転車などもう10年近く乗っていない。こぐのが大変だからだ。恐る恐る乗ってみたら、これが速い。団地内の公道は制限速度30キロの表示があったが、車でも追い越せると思った。

 この電動アシスト付き自転車のお陰で、徒歩なら数時間かかるはずの取材を1時間30分ぐらいで済ますことが出来た。1丁目から4丁目まで隈なく回った。その成果が写真だ。取材目的の一つだった「宮脇さんに会う」こともできた。つたない記事より写真のほうがよく分かっていただけると思う。

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外周道路と街並み

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 街路計画では、外周約2.5キロの道路はループ状にし、舗道にはボンエルフ、ハンプ、ピンコロ、インターロッキングを多用。路地空間も設置し、角住戸のコーナーにはカエデなどの色彩鮮やかな草木を配するなどデザインにも工夫を凝らしている。

街路樹・公園樹にはカエデ、ユリノキ、アメリカフウ、マロニエ、モミジ、カツラ、メタセコイア、コブシなどの中高木が植わっている。

 車の運転手には注意を促し、歩行者には絵画的な手法で魅せる、宮脇氏の遊び心を見るような団地だ。宮脇氏が手がけた代表的な団地としては東急不動産の〝アイビーとレンガ〟の「柏ビレジ」があるが、「コモアしおつ」こそ宮脇氏の集大成の団地だ。このほか、宮脇氏が手がけた出色の団地としては「ホーメストタウン八王子」「季美の森」「高幡鹿島台」「緑園都市」などがある。

 「トリコパルク」は仏語の「トリコット(編み物)」と「パルク(公園)」をあわせた造語だ。完全なオープン外構で、開放的な街並みを実現しているのが特徴。同じコンセプトの街並みは同社の他の団地でもいくつか見学している。

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「トリコパルク」の街並み

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 平成3年の分譲開始からずっと担当している同社東京分譲事業部しおつプロジェクト課長・岡本正生氏に話を聞いた。

 岡本氏は都心の青山に住んでいる。わざわざ1時間半以上もかけて四方津まで通っている。「自分で担当を志願した」。その理由を「1区画80坪という圧倒的な広さと環境に惚れ込みました。他では味わえない楽しさがあった」と岡本氏は話した。

不動産のプロの岡本氏を心酔させるしおつの魅力は記者も理解できる。1区画80坪の団地は地方には沢山あるだろうが、首都圏では昭和50~60年代にはほとんど姿を消した。平成の時代には都市型戸建てが主流になったからせいぜい30~40坪だ。

 立地を考えれば、販売スピードは驚異的ですらある。冒頭に書いたように、現在までに1,347区画成約済みだ。年間に換算すると約60戸を成約している計算になる。バブル崩壊後の首都圏の郊外団地では年間20~30戸を販売するのがやっとだったことからも、この団地の健闘がうかがえる。

 なぜ売れるのか。時代の変化に対応し、取得しやすい価格帯になってきたのが最大の理由だろう。分譲当初は確か5,000~7,000万円台だったはずだ。それが最近では3,000万円でも取得できる住戸があるという。「ここ数年は20歳代、30歳代の若い世代の購入が増えているのが特徴。大月や上野原に住む親世帯が『資金援助するからしおつに住め』と勧めるケースが多い。団地内で親子が近居するケースもある」と岡本氏は話す。

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岡本氏

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  4年前に府中から移り住んだ元システムエンジニアの65歳の居住者が、街の魅力を代弁した。

 「60年間、府中に住んでいたが、たまたまネットでみここの中古情報をみて現地見学したら、積水ハウスの営業マンに『土地も新築もある』といわれ、土地を購入しようと考えたが、面倒になり建売住宅を買った。値段も4,000万円を切っていた。府中の家もまあ広かったが、夏の西日で室内は50度になった。ここは西側に山があるので西日も入らない。快適だよ。ここは塀がないのもいい。不便? 新宿まで70分、住めばどういうことはない」と。

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 今後、この街がどうなるのかも大きな関心事だ。街づくりは最終段階に入った。街の管理は積水ハウスが支援し、管理組合や自治会が中心になって進めていくのだろうが、果たして持続可能な街として機能するかどうか。

 岡本氏や住民、市役所などに聞くと、この街は人口も増加しており、隣の大月市民にも人気だという。しかし、高尾あたりの昭和の時代に建設された大規模団地は居住者の高齢化が進み、空き家の発生やコミュニティの崩壊も懸念されている。「しおつ」も成り行きに任せれば、この問題に突き当たるのは必至だ。

 積水ハウスは「まちづくり基本方針」として「環境マネジメント」「経済マネジメント」「生活マネジメント」「タウンマネジメント」の4つを掲げる。「経年美化」の看板が評価されるのはこれからだ。

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「斜行エレベータ」(同社ホームページから)

 

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