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2013/10/08(火) 15:39

「木づかい」を国民運動にするシンポジウム

投稿者:  牧田司

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「森とつながる都市での木づかいシンポジウム~新たなCSR・事業開発の可能性~」

「既成の商流」を変えよう Soup Stock Tokyo 平井氏 

 業種を超えた幅広い企業が森と木を活かした新しいビジネスの創造の可能性やライフスタイルのあり方について考える「森とつながる都市での木づかいシンポジウム~新たなCSR・事業開発の可能性~」が先日行われた。

 林野庁長官・沼田正俊氏が木質バイオマス、耐火建築物、CLT(直交集成板)の開発などについて報告したほか、日本プロジェクト産業協議会専務理事・高藪裕三氏が「林業復活・森林再生を推進する国民会議」の発起人に700名を超える賛同者が集まったことを話した。

 また、住友林業 木化営業部・杉本貴一氏が同社の木化事業について報告。木などの自然材料が鉄やコンクリート、化学製品などによって覆われどんどん本物から遠ざかっていく仕組み、木のメリットよりデメリットのほうが強調される現状、本物と見分けがつかない〝似せ物〟の開発が進んでいることなどについて話し、このような仕組み、不等式などを逆転していく具体的な取り組みを紹介した。

 パネルディスカッションでコーディネーターを務めた宮林茂幸氏(美しい森林づくり全国推進会議事務局長、東京農大教授)は冒頭、「木づかいで連携することが美しい森につながる。今日は国民運動論につながるようなシンポジウムにしたい」と語り、パネリストの各氏がそれぞれの立場から課題、方向性を語りあった。

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左から平井氏、杉本氏、宮林氏

◇        ◆      ◇

 今回のシンポが教えたのは、われわれは「べき論」で森林・林業を語りすぎてはいないかということだった。〝森林・林業が危機的な状況にある〟〝だから再生が必要〟と「べき論」を念仏のように百万遍唱えても問題の解決にたどりつけないのではないかと思った。

 「べき論」つまり「既成の商流」からの脱却を示唆したのは、スマイルズクリエイティブ室ディレクター・平井俊旭氏の「木づかいの最前線」の事例報告だった。平井氏は、「Soup Stock Tokyoの国産材を使った店づくり」について次のように話した。

 「2010年から国産材を使用するプロジェクトを始めて、これまでに本当に沢山の暖かい志をもっている方々との出会いがありました。国産材をいかに使っていくのか、あるいは森林をどのように維持するかという問題は日本の大きな課題の一つであります。…この問題は業界の限られた人だけの問題ではなく、本当は生活者一人ひとりの問題であり、そのためには、それを自分の事として感じてもらうためのストーリーが必要なのではないかと思っています。そのストーリー作りのヒントは、これまでの林業を川上とした既成の商流の範囲を越えた人と人との繋がりの中にあるのではないかと感じるようになりました。…個人が本当に心をこめて自分の役割を果たしてゆけば、その思いは熱となって人に伝わり、その繋がりはいつか大きな流れになると信じています」と語った。

 同社が国産材を採用するきっかけとなったのは、2008年の「事故米」事件だった。以来、同社は産地が特定できない食材を使わないようにし、その一環として国産材を採用した店舗づくりを始めたのだそうだ。

 平井氏の「心、思いが熱となり大きな流れになる」という言葉は説得力がある。〝木がいいのは分かるが、コストが掛かる〟-このようなコスト論争に巻き込まれたら木の復権などありえないのではないか。

 

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