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2013/10/23(水) 13:59

「リニア、圏央道は広域連携を進める絶好の機会」明星大・西浦教授

投稿者:  牧田司

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西浦教授

「何もしなければ座して死を待つばかり」と警告

 明星大学教授で多摩ニュータウン学会の筆頭理事、多摩市の多摩ニュータウン再生検討会議の委員などを務める西浦定継氏が10月20日、調布市などが後援する「東京都多摩地区生涯学習インストラクターの会」で「広域で人口減少に対応する方策は? 多摩地域の広域計画を考える」と題する講演を行った。西浦教授は「広域連携」を以前から主張されており、リニアが橋本に停まることの決定をみてどのような発言をされるか興味があったので受講した。

 稲城、多摩、町田、八王子、相模原の各市の多摩圏域の現在の人口は約181万人で、2050年には148万人に、2070年には111万人へ減少すると予想されている。西浦教授は「何もしなければ人口は坂道をすべり落ちるように減る。言葉は悪いが、座して死を待つしかない」としながらも、「多摩圏域のポテンシャルは極めて高い。努力すればオセロゲームのように一挙に黒から白に好転する可能性も秘めている」と、各市が行政の枠を超えて連携する必要性を訴えた。

 具体的には将来にわたりリスクを軽減する都市の構築へ向けての戦略が必要とし、公共施設をシェアすべきという。空き家・空き地対策も重要で、限界集落などは移住を促す方策もやむを得ないとした。

 その一方で、リニアの橋本停車、圏央道の開通は大きな可能性を秘めると強調。「リニアが開業すれば品川から橋本まで10分。橋本は名古屋、関西方面への玄関口となる。企業や研究所の誘致も可能になる。圏央道の開業によって中央道ともつながることになり、さらに多摩モノレールの八王子や町田への延伸、横田基地の利用なども考えると、地域ブランドを確立する絶好の機会」と語った。

 西浦教授はまた、米国のデトロイト、クリーブランド、ピッツバーグなどのかつての工業都市が衰退する一方で、成長し続けているポートランドとその周辺都市の大都市圏について紹介。

ポートランドの大都市圏には3つの郡と25の都市があり、人口は約130万人。各郡や各都市にそれぞれ首長はいるが、それとは別に直接民主制で選ばれる地域政府の存在が大きく、クラスター状のコンパクトシティが形成されているという。自転車専用レーンを設けた公共交通システム、森林保全などでも成果を上げていると、西浦教授は話した。

◇      ◆     ◇

 わが国でも住民投票で自治体の首長や議員を罷免できる制度がある。また、原発施設、ごみ処理場などの嫌悪施設の建設是非を問う住民投票が行なわれるが、これらは首長や議会に対して圧力をかけることは出来ても法的決定権を持っていいないのが現状ではないか。

 ポートランドのように住民投票によって大都市圏の憲法とも言うべき「住民憲章」が設けられているのは驚きだ。

 わが国ではあり得ない制度だろうが、土地所有者の声が街づくりに反映できるようにしたり、投票権者に在勤者や外国人居住者にも門戸を広げ、さらに20歳以上という年齢制限も引き下げたりして、住民の声が行政に届くようにすべきだと思う。議員にしたくない候補者に対しては「拒否」権投票が出来るようにすれば、選挙の投票率は高まるはずだ。

◇        ◆   ◇

 東京-名古屋間を40分で結ぶリニアの開業予定は2027年だから随分遠い将来のことだが、停車駅となる橋本を中心に多摩エリアの住宅開発などがどうなるか予測してみた。

 橋本は、JR橋本駅すぐの相原高校に駅舎ができる。近接するイオンの商業施設はドル箱になるはずだ。マンションの単価は現在、駅近で180万円ぐらいだが、調布と同じぐらいの300万円くらいになるかもしれない。周辺エリアの地価が高騰するのは間違いない。京王や小田急が津久井方面への延伸を打ち出すかもしれない。相模線や八高線の輸送力増強も図られるはずだ。町田、相模大野などの小田急線沿線の住宅需要も高まるはずだ。問題は、橋本にはホテル機能がないことだ。イベントなどは品川などの都心に奪われそうだ。

 八王子市もリニアや圏央道の開業によって大きな恩恵を受ける。石森孝志市長は市のホームページで「本市は経済、文化などあらゆる面において”多摩のナンバーワン”であり、多摩地域の牽引役として相応しい真の多摩のリーディングシティを目指している」「私の大きな目標の一つに『中核市への移行』があります。実現すれば東京都初となり、子育て、高齢者、環境、都市計画、景観行政など様々な分野で独自の取組みが可能となる」と、都市間競争に打ち勝つ意欲を見せている。

 わが街、多摩市はどうか。どうも相模原市や八王子市の攻勢にたじたじの観がしないではない。デパートもホテルもコンサートホールもあり、丸善もブックオフもある。大学もある。絶滅危惧種の野草も咲く。ポテンシャルはどこにも負けないと思うが、マンションの分譲単価は200万円が大きな壁になっている。

 立川、町田、調布、府中などに多摩市は全然勝てない。日野市も豊田駅前で再開発が行なわれている。都市間競争に敗れる前に各市に連携を働きかけ、キャスティングボードを握って欲しいと思う。「多摩ニュータウン学会」も装いを新たにし、「多摩メガロポリス推進協議会」とでもしたらどうだろう。

 

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