RBA OFFICIAL
 
2015/06/17(水) 00:00

積和・下谷 一条・大嶋 ゲリラ豪雨ついて満塁弾のパフォーマンス

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グラウンドに叩きつけられるゲリラ豪雨の雨滴

 「大変です。神宮外苑ヒマラヤ球場から中継中です。いま午前11時前です。突如、ものすごい大雨が降ってきました。気象庁ではそんな言葉はありませんが、いわゆるこれがゲリラ豪雨でしょうか。バケツどころか棺桶をひっくり返したような、大粒のひょっとしたらピンポン玉くらいの雨がスタンドの屋根を叩いています。今にも屋根を突き破りそうです。

 隣の人の悲鳴がかき消され、ほとんど聞こえません。昼近くのはずなのに、天と地が一緒になったように灰色から黒に染められていきます。気温もどんどん下がっています。隣の若い女性のつるつるだったはずの肌は泡立ち、毛をむしり取られたニワトリのような鳥肌が立っています。

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積和の女性応援団(この後、悪夢が待っていようとは夢にも思わなかったはず)

 大変です。息が出来なくなったのか地下からモグラが這い出してきました。ミミズもアリもモグラもその他あまたのゴミ、不倫の罪、根拠のない噂、シミ、ソバカス、烏の足跡、タバコの吸殻にいたるまでこの世の一切合切がごっちゃになって濁流に飲み込まれています。その数は数万、数十万に達するかもしれません。阿鼻叫喚の世界です。

 大変です。余りにものすごさに動転したのか、チベットから飛来したカラスがヒマラヤスギのねぐらから「トッキョン、トッキョン」(「鳥の仏教」から)と、訳の分からない鳴き声をあげています。

 携帯をスタッフのいるところに置いてきたので、果たしてここ神宮外苑だけなのか、それとも都内全域のゲリラ豪雨かまったく判断できません。遠くでパトカーのけたたましい音が聞こえてきました。利根川は大丈夫か。江東区は大丈夫でしょうか。我が家は大丈夫か。

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積和 下谷

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〝死のダイブ〟も絶対こんなに美しくない

 大変です。なにを血迷ったのか、台東区ではない、積和の下谷がバッターボックスに立ちました。すでに上から下までずぶぬれです。バットは持っていません。気が狂ったのでしょうか。双方のベンチの野次も声援も罵声も豪雨にかき消されています。雨中に亡霊のように下谷が立ちました。

 あっ、打ちました。本人は打ったつもりでしょうか。これは、大きい、大きい、センターバック、バック、あっ、入った、入った。入った。満塁ホームランです。一条の大嶋投手はマウンドでがっくりとへたり込みました。あっ、大変です。下谷がホームベースに頭から突入しました。スタンドインが見えなかったのでしょうか。どこに飛んだのか記者も確認できません。

 あっ、大変です。ベンチに戻った下谷が下はそのまま、上のTシャツを脱ぎました。破れかぶれの雑巾のように絞っています。泥水がたるんだ腹からへその中に侵入しようとしています。出臍でないことをしっかり確認しました。しかし、メタボは深刻です。修復不可能と思われます。Tシャツからしたたり落ちた汗と涙と垢にまみれた汚水が濁流に飲み込まれていきます。

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 あっ、大変です。向こうの一条ベンチから、誰もけしかけないのに、打たれたのが悔しいのか一条の大嶋が打席に入りました。ウェットスーツでしょうか、この日のために用意周到、準備したのか真っ黒です。それともアンダーシャツは黒いものなのか、記者はわかりません。

 あっ、大嶋が打ちました。当たった、これは大きい。大きい。ライナーで左中間を深々と破ったようです。大嶋は足首どころかふくらはぎあたりまで増水したグラウンドの中を全速で駆けています。1塁ベースも2塁ベースもモグラと一緒に流されたのか、見当たりません。そこにあったと思われるベース付近を大嶋は全力で駆けています。積和ベンチも一条ベンチもやんやの喝さいを送っています。美しい。実に美しい。敵も味方もない、渾然一体、雌雄同体のこれがRBA野球でしょうか。野球は永遠の人類普遍の価値です。選手はその苦言、おっといけない具現者です。

 あっ、球が返ってきたのでしょうか。大嶋が速いか返球が先か。セーフ、セーフです。同点の満塁ランニングホームランです。それぞれのチームが同じイニングに満塁ホームランなんて、RBAの大会記録です。大記録です。RBAの関係者の記憶に永遠に残るのは間違いありません。

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一条 大嶋

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 あっ、大変です。審判がいません。あっ、いました、いました。一条のベンチにいました。審判も豪雨に恐れをなしたようです。選手と一緒にベンチの隅に縮こまっています。これは任務放棄ではないでしょうか。こんなことがあっていいのでしょうか。

 あっ、大変です。RBAのグラウンド責任者、小西が膝まで濁流につかりながら、よたよたと駆けてきました。傘もささずに、あっても用は足さないでしょうが、何やら一条ベンチにつぶやいています。三躓九叩頭でもするかのように頭を何度も下げています。

 あっ、そして記者が雨宿りしているここ積和ベンチに向かってきました。あっ、大変です。ノーゲームです。小西が宣言しました。

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各チームにノーゲームを伝える小西さん

 ノーゲーム? ではいったいあの下谷と大嶋のホームランはどうなるのでしようか。夢か現か虚か実か。「無情の雨」とはよく言うが、負けずに済んだチームは天恵の雨ではないか。小西は伝道師ではないのか。これは何だ。

 それにしても美しい。下谷も大嶋も小西も無視されようが罵られようが無私の心を貫いた。こんなに人を感動させるシーンを記者は60余年も生きてきて観たことがありません。なんて心根の優しい、崇高な哲学をもっている人たちでしょう。どこかで聞いたような気がしますが、RBAは永久に不滅です。長島さんは今日の天気のように永久にノー天気です。

 あっ、大変です。ここまで一気にしゃべったら空はすっかり明るくなっています。あの喧騒はウソのようです。約一時間。記者が神宮から実況しました。さようなら」

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帰路につく選手・応援団(女性は裸足)

◇       ◆     ◇

 気象庁の発表によれば、東京地方に1時間の最大雨量35ミリの大雨、雷、洪水注意報が発令されたのは12時42分。神宮外苑を豪雨が襲ったのは11時前。小降りになったのは12時過ぎ。どうしてこんなにタイムラグがあるのか。気象庁の「降水ナウキャスト」によると11:20ころの新宿区あたりは50~80ミリの雨量が降ったと思われる。

 これほどの集中豪雨は記者もほとんど経験がない。気温も20度以下に下がっていたはずで、雨に濡れた下谷、大嶋は大丈夫か。パフォーマンスをけしかけたのは実は記者だった。下谷さん、大嶋さん、ごめんなさい。迷惑をかけた分、架空記事も力を込めました。

 

 

 

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