抽選会で野村不動産ソリューションズ大竹口マネージャーが「野球は甲子園か草野球。信じられない珍プレーが飛び出すのが面白い。プロ野球? 興味ありません」と名言を吐いたが、この日はエイブル-東急リバブル戦で、前代未聞の1試合で3つの守備妨害が飛び出した。
1回目はエイブルの初回無死1塁の攻撃場面で起きた。先頭打者の森永が敵失で出塁すると、すかさず盗塁を試み、2番打者志田は投球を空振りした。奥富捕手の送球はワンバウンドとなり、野手が捕球できずセーフかと思われたが、主審は2番志田のスイングは守備妨害に当たるとしてアウトを宣告、森永は1塁に戻された。
2度目はまたエイブルの2回の攻撃の場面。無死から6番井上は敵失で出塁、続く飯塚は四球の好機に、8番鈴木のゴロを中村3塁手は1塁へ悪送球し、満塁と思われたが、2塁走者の井上は守備妨害として線審がコールしてアウトとなった。
3度目は東急リバブルの4回の攻撃の場面。1死1塁から、5番高岡は三振し、1塁走者奥富が盗塁成功と思われたが、高岡のスイングは守備妨害と判定され、奥富は1塁に戻された。
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記者は30年以上この大会を取材しているが、守備妨害の試合は数えるほどしかない。1試合に3つというのは間違いなく大会新記録だ。(打撃妨害、走塁妨害もしかり)
3度の守備妨害の場面を振り返ってみる。最初の場面で、バックネット裏からスマホで試合を記録していた三井不動産リアルティ安西監督は「捕手はさすが」とつぶやき苦笑を漏らした。記者はよく見ていなかったのだが、安西監督は主審に奥富が守備妨害であることをアピールしたと受け止めたのではないか。主審が走塁妨害と判定したのは、1塁走者が2塁に進んだ後だった。
そこで、記者はイニング終了後に1塁線審に尋ねた。「あれは守備妨害か」と。1塁主審は「1塁走者が走ったので、捕手の送球は見ていない」と話した。志田は「故意ではない。バッターボックスは外したかもしれない」と、奥富は「投げられなかった」とそれぞれ語った。
2度目は、走者と中松3塁手は交錯したが、接触はなかったはずだ。井上は憮然としていた。3度目もどうして守備妨害となったのかは全く分からない。
そこで、更に考えた。守備妨害も打撃妨害も申告プレーではないし、故意・過失も関係ない。〝神〟である審判に与えられた権限だ。
記者はその判断に異議を唱えるわけではないが、先の1塁線審の声が気にかかる。投手の投球、捕手の送球を見ないで走者のみに注意を集中することが信じられない。投球、送球を見ないということは、打球も見ないことにならないか。打球を見なかったら自分に打球が当たるかもしれないので、そんなことはありえないはずだ。主審からハーフスイングの判定を求められることもあるから、しっかり投球、打球、送球は見ているのではないか。
もう一つ。1回目の主審の判定は1塁走者が2塁に到達した後だった。つまり数秒間の〝空白〟がある。本来は奥富捕手が送球した時点で、その旨のジェスチャーを示し、タイムを掛けるべきではなかったのか(あるいはそうしたのかもしれない)。
選手の皆さん、空振りと走塁には要注意。全て守備が優先される。